血縁

相続紛争の原因となる寄与分

故人のそばにいて介護をした相続人と、遠く離れて住んでいて年に1,2回会いに来る程度であった相続人。
両者の相続分が法定相続割合に従って全く同等であれば、自分の時間を削って懸命に介護をしていた相続人は不公平の感じるでしょう。

親の生活費を全額出していた子供や、親が認知症で施設に入ることになって入所費用、月々の費用を全額出していた子供は、親が亡くなった後の親名義の不動産に対して何もしていなかった兄弟姉妹から法定相続割合通りの相続分を請求されたら複雑な気持ちなるでしょう。

この点を是正して、実質的に公平な相続を図る目的として寄与分があります。

寄与分とは

寄与分に関して民法は以下のように規定しています。

「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

上記の規定は、寄与分について3つの要件を上げています。

  1. 労務の提供、財産上の給付、療養看護等の何らかの行為を故人にしている。
  2. その行為により故人の財産が減ることなく、維持、又は増加している。
  3. その行為は特別の寄与に該当する。

要件1.寄与分としての行為

寄与に該当する行為は5つに分類されています。

  • 家事従事型
  • 療養看護型
  • 扶養型
  • 金銭等出資型
  • 財産管理型
家事従事型

家業に従事している場合です。
商店であったり、農業、漁業であったり、親がしている仕事を手伝っいるような場合に該当します。
但し、従業員として雇われ相応の給料をもらっていれば、一般従業員と同じなので寄与したことにはなりません。

療養看護型

故人の看護や介護をしている場合です。
ただし、していれば認められというものではありません。
子供が、配偶者が、親や連れ合いの看護、介護をすることは、特別なこととは言えません。
看護、介護の内容や期間がかかわってきます。

扶養型

故人の生活費を負担していた場合です。
ただし、親子、夫婦、兄弟姉妹の親族間には民法で扶養義務があると規定されています。
扶養義務範囲以上の負担をしていたことが必要になります。

金銭等出資型

故人がしていた仕事等に対して金銭等による出資をした場合です。
親が食堂を開くときに開店資金としてお金を出した、親が家を購入するときにお金を援助した等々があげられます。
故人の法人としての会社に出資している場合は、寄与分として認められにくいです。

財産管理型

故人の財産を代わりに管理していた場合です。
故人が所有している賃貸アパートや駐車場の管理をしていたような場合が該当します。
ただし、実際の管理は管理会社に任せて、管理会社と連絡だけをしていたような場合は認められにくいです。

要件2.故人財産が維持、増加している

寄与として行った行為により故人の財産が減ることなく維持、又は増加していることが必要です。

家事従事型、財産管理型であれば、
無償、又は無償に近い報酬で手伝いや財産管理をしたことにより、人を雇って賃金や管理費を払わずに済んだことで故人の財産は減らずに維持されたことになります。

療養看護型であれば、
介護をすることで、介護をしてくれる付添人等を雇う必要がなくなり、故人の財産からその分の費用の支出を抑えられたことになります。

扶養型、金銭等出資型であれば、
故人に生活費等の金銭的援助をすることで、故人の財産からの支出を抑えることができ、新たな仕事への援助で財産増加をもたらしたと言うことができます。

このように寄与した行為と故人の財産維持・増加との間に因果関係があることが必要です。

要件3.特別の寄与

民法は特別の寄与であることを求めています。

では、この「特別の寄与」とは、どのようなことを指すのかと言うと、明確な規定はありません。
規定するとすれば、一般的に子であれば親に対して、妻(夫)であれば夫(妻)に対して、兄弟姉妹であればするであろう範囲を超えた行為・・と言うことになります。

このように抽象的な規定なので、やった行為が特別の寄与に該当するかで紛争が起きることになります。

寄与分の問題的

寄与分について相続人間で話し合うときに、また、調停、審判で争われるときに問題となるのが2点。

1.その行為が寄与分に該当するか?
2.該当するとしたら金額はいくらになるか?

扶養型や金銭等出資型であれば、援助したお金の記録(振込票等)を保管しとくことで寄与分としての額が分かりますが、他のタイプにおいてはやった行為を金銭に換算しなければいけません。

療養看護型の場合、介護した日数に看護付添人を雇ったときのおおよその日給を乗じた額を寄与分の額として主張したりします。
決まった計算式はないので、寄与分を主張する側が自分のやり方で計算して主張することになります。
主張された金額でまとまれば何の問題もないのですが、争いになって審判までいった場合、裁判所は以下のように計算することが多いです。
介護報酬基準額x介護期間x裁量割合=寄与分額※介護期間中にデイケアを利用した場合は半日分とし、ショートステイした日は介護期間から差し引いて計算します。
ただし、全てのケースでこの計算方法が使われるわけではなく、介護の内容を精査して介護した日を1日8,000円と評価した例もあります。

まとめ

寄与分が問題になるのは遺産分割協議の場合です。
法定相続割合をベースにそれぞれが生前の故人に対して、あれをした、これをした、と言い合うことになりまとまりがつかなくなってしまいます。

この争いを防ぐには、「遺言書」の作成が最も効果的です。
所定の形式を備えた遺言書を残すことで、相続人はその内容に不満があっても従わざるを得ません。

そして、遺言書をめぐる争い(誰かに無理やり書かされた、認知症になっていて意思能力が無かった、改ざんされている等々)を回避するために公証人を関与させた「公正証書遺言」で作成するのが最適です。