家賃滞納
賃貸アパート・マンションに関してさまざまなトラブルが発生します。
トラブルには貸主側のトラブル、借主側のトラブルがあり、それぞれの立場により見方、対処方法も異なってきます。
賃貸をめぐっては、長引く不況、賃金停滞、派遣切り等々の問題により「家賃滞納」が大家さんにとって大きな問題になっています。
管理会社に管理を任せている場合は、管理会社独自のノウハウもあるでしょうし、現在は家賃保証会社もあるので、賃借人が滞納したらその分を保証会社が補填してくれます。
ここでは、個人で賃貸物件を経営されておる大家さん向けとして、家賃滞納トラブルについて司法書士が解説いたします。
家賃滞納したときの対応
大家さんは、賃借人が1ヶ月でも家賃を滞納するととても不安になります。
すぐに督促するか、、、もう少し待つか、、、
大家さんと賃借人との関係性にもよるでしょう。
何十年も問題なく住んでいる賃借人であれば、待ってあげるのも良いでしょうし、声をかけるにしても、「督促」というよりは「大丈夫?」というようなニュアンスで今後の支払い予定聞くことで、引き続き良好な関係を維持できるでしょう。
翌月に2ヶ月分を支払うのが難しいのであれば、滞納した1ヶ月分を3,4回に分けて支払うようなことも検討しましょう。
入居して間もない場合は注意が必要です。
この場合、前の住居でも家賃滞納のトラブルを起こしているケースも多く、早急の対応が必要になります。
滞納慣れしている賃借人であったりすると、督促も無視して居座るだけ居座り、大家側が法的処置を開始するまで待って、突然、荷物を置いたままいなくなっている・・というようなケースもあります。
1ヶ月分を滞納したら
まず、事情をお聞きください。
滞納分の返済を含めた今後の家賃の支払い計画に納得できるのであれば、受け入れるのも良いと思います。
状況によっては、賃借人に前もって伝えた上で保証人に代納してもらえないか連絡をとることも考えられます。
※身内が保証人になっているから大丈夫・・とは限りません。
滞納した家賃を代わりに払ってくれる方もいらっしゃいますが、無視されることも少なくありません。
2ヶ月以上滞納したら
1ヶ月滞納時に示した支払約束が守られず連続して滞納した場合、状況は深刻になります。
このまま放置しておくと今後も滞納が続く可能性大です。何らかの対応が必要です。
対応として考えられるのは、
1.訪問して直接督促する。
2.督促の内容証明を送付する。
3.支払督促をする。
4.滞納家賃の請求訴訟を起こす。
1.訪問して督促
訪問して直接賃借人に督促することが苦手、負担が大きいと感じられる大家さんは、まずは、仲介した不動産会社から督促してもらえないか相談してみましょう。
2.内容証明郵便を送付
滞納分の支払を請求する旨の内容証明郵便を送付することを検討しましょう。
郵便受けに投函されるのではなく、配達員により直接手渡しされます。
専用の赤く枠取りされた内容証明書用紙を使用することで、受け取った相手は今までと違った督促方法に驚いて支払に応じる場合があります。
差出人名が弁護士や司法書士であれば効果も上がるので、専門職からの発送してもらうことも検討下さい。
※ただし、内容証明郵便自体に法的効果、効力はありません。発送後も支払いがなけれが別の方法をとらなければいけません。内容証明郵便は、いうなれば、大家さん側の本気度を相手に示すことが主体です。「支払がなければ次に法的手段をとります」という内容を記載しておくことが重要です。
3.支払督促
法的手段の第1段階です。
支払の督促を裁判所からしてもらうことを「支払督促」と言います。
簡易裁判所に申立(比較的簡単です)をすることで、裁判所が差出人として賃借人宛に滞納している家賃を支払うようにと特別送達という形で督促の書面を送ります。
裁判所からの督促状ですので、賃借人が従って支払う可能性は高まるでしょう。
4.支払請求訴訟を起こす
滞納した家賃を支払えとする訴訟を起こすことも可能です。
ただし、当所としてはあまりおススメしません。
勝訴しても、賃借人が自発的に支払ってくれなければ差押えをしなければいけません。
更にお金と時間を使って賃借人の財産(通常は給料の4分の1)を差押えても、そのような関係になった賃借人に引き続き部屋を貸し続けるより、退去してもらって新たな賃借人を探した方が大家さんにとっては良いのではと思います。
最終手段の強制退去
払う気がない、払うお金がない賃借人に対しては、上記の手段をとっても効果はありません。
このような賃借人に対しては、できるだけ早く退去してもらって、新たな賃借人を探すことが大家さんにとってはベストです。
退去させるには「建物明け渡し請求訴訟」を裁判所に提訴して勝訴する必要があります。
強制退去の要件
裁判所が建物明渡請求訴訟を判断する上で要件として挙げているものが3つあります。
1.滞納の期間
2.賃借人の支払意思
3.大家と賃借人との信頼関係の破壊の有無
1.滞納している期間は少なくとも「3ヶ月」は必要とお考え下さい。
裁判所において一つの判断の目安となっているようです。もちろん3ヶ月滞納していれば必ず勝訴ということではありませんし、他の要件の内容がひどければ3ヶ月未満でも認められることがあります。
2.訴訟を提起する時点は、何度も請求しても払わず滞納してから既に3ヶ月が過ぎている段階なので支払い意思はないと判断されやすいです。
3.信頼関係の破壊という要件が、結構、重要になります。
滞納=信頼関係の破壊と、すんなり認められません。賃借人に斟酌できる事情があり滞納も一時的なもので改善できる状況にあると判断されたりすると、明渡しが棄却されたりする場合もあります。
しかし、通常の単純な家賃滞納であれば、3ヶ月以上の滞納=信頼関係の破壊と認められる傾向にあります。
強制退去手続き
退去までの流れとして
1.滞納分の支払の催告
2.期限までに支払われない場合は契約解除する旨の通知
3.賃貸借契約解除の通知及び退去要求
4.建物明渡請求訴訟の提起
5.必要と判断した場合は占有移転禁止の仮処分を訴訟に先立って行います。
6.勝訴
7.強制執行・強制退去
※常習的に滞納、退去を繰り返している賃借人は、大家さんが立ち退きの訴訟を提起し裁判所からその旨の訴状が送付された後、いつのまにか姿を消すことが多いです。
まとめ
大家さんにとっては家賃滞納は頭痛のタネです。
家賃滞納が発生すると、のどに魚の骨がひっかかったかのように、常に頭のどこかにあって悩みのタネになってしまいます。
しかし、不安定な雇用状況の中、人それぞれに事情があるので滞納、即退去と考えることがベストとは限りません。
大家さんにとっても、退去させてもすぐに新たな賃借人が見つかるとも限りません。
善良な賃借人であれば、多少の融通をきかせても良いでしょう。
私がかかわった案件で、「勤めていたお店が突然閉店になってしまい今求職中です。就職先をみつけるまで少し待って下さい」ということがありました。
今まで家賃も期日までに遅れることなくきちんと振り込まれていたので、大家さんは暫く待つことにしました。
その方はほどなく再就職先を見つけ、毎月の家賃に合わせて滞納した分を分割で上乗せして支払い、滞納分を完済しました。
どこまで待つか・・は判断が難しいところではありますが・・・・
しかし、現在問題になっているのは、
「払う気がない」
「払わずに居座れるだけ居座る」
「そもそも払えない」
このような賃借人が増加していることです。
「払えない」人にも生活がありますし、その方に退去をせまることに批判的な方もおられるかもしれませんが、これは社会全体で対処すべきことであり、大家さん1人に背負わせる問題ではありません。
これらの賃借人には、早期に退去に向けて対処することが大切です。
督促しても払う気配がないと判断されたら、早急に弁護士や司法書士にご相談されることをおススメします。
初回のご相談は無料です。
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