会社設立

会社設立を計画されている方からの相談で、「株式会社」「合同会社」のどちらが良いでしょうか?
というご相談を受けます。
どちらも長所、短所があり、こちらが良い!といきれません。

事業の内容や規模、今後の計画、既に個人事業主としてお仕事をされているか等々をお聴きして、ご相談に対応させていただいていますが、全く新らしくご自身お1人で新会社をスタートされるような場合、合同会社での設立をおススメしています。
今回は株式会社と比較しつつ、合同会社について司法書士が解説します。

合同会社とは

合同会社は会社法上、持分会社に分類されます。
持分会社には、他に合名会社、合資会社がありますが、「有限責任」という会社に対しては出資した額だけの責任を負うという点で、合同会社が株式会社に一番近いと言えます。
※合名・合資会社には「無限責任社員」という、会社の損失等に対して無限に責任を負う人が必要になります。

株式会社と大きく異なるのは、合同会社は「株式」ではなく「持分」が基本になります。
例えば、設立で100万円を出資すると、株式会社では1株を〇円と取り決めて、それに応じて株数を割り当てます。
1株を1万円と設定したら、100株を取得することになります。

対して合同会社は「持分」が基本なので、出資をして会社の持分を取得することになります。
この持分を取得することで、(持分)社員となります。
ここで言う社員は、一般的に使われる従業員としての社員ではありません。
紛らわしいですが、合同会社の場合、社員とは株主と同じ出資者とお考え下さい。
出資することで、合同会社の社員になることになります。

社員総会の決議

株式会社の最高意思決定機関である株主総会に相当するものが社員総会です。
会社の重要な事項を社員総会で決定することになりますが、決定方法は株式会社と大きく異なります。

株式会社では株式数で決します。基本的に1株1議決権が原則なので、多く出資して株式数を多く持っていれば有利になります。
対して、合同会社は1社員1議決権が基本になります。

3人で創業、Aさん200万円、B、Cさん各50万円出資のケースで社員総会した場合、BCさんが結託すれば常に過半数を制することができます。

ただし、定款で別の設定をすることは可能なので、Aさんの議決権を4議決権とする(BCさんの4倍の出資額だから)等とすることで出資に見合った議決権を設定することもできます。

経営者は社員

株式会社の経営陣は取締役になりますが、合同会社では業務執行社員になります。
株式会社では株主でなくても取締役になれますが、合同会社では業務執行「社員」、つまり出資者でなければ業務執行社員になれません。経営と出資が一体となっています。

定款に規定することで業務執行社員の中から代表社員(株式会社の代表取締役に相当)を置くこともできます。

スタートは合同会社が良いわけ

設立時、設立後の運用面や経費に関して、合同会社は株式会社よりもメリットが大きいです。

設立費用

株式会社設立の際、以下の費用が必要になります。

  1. 登録免許税 :資本金の7/1000(最低15万円)
  2. 定款認証費用:5万円
  3. 定款印紙代:4万円

最低24万円を法務局及び公証役場に支払わなければいけません。
※定款を電子定款にすれば、4万円の収入印紙代は不要になります。

対して、合同会社は6万円・・だけです。18万円も削減できます。
登録免許税は一律6万円、定款の認証は不要です。
創業時がは何かと物いりです。18万円を何も生む出さない費用として役所に支払うより、仕事に関連する費用に充てられるメリットは大きいです。

設立後の運用・経費メリット

株式会社には会社法で様々の規定が設けられていますが、合同会社にはそれらの規定が緩和、廃除されいることが多く、運用面でも、経費面でもメリットがあります。

  1. 決算公告が不要
    株式会社では事業年度終了して定時株主総会を行った後、遅滞なく決算(貸借対照表の要旨)を公告しなければいけないと規定されています。
    公告は定款に規定されている方法で行います。多くは官報に掲載して公告しますが費用は7~8万円かかります。⇒合同会社は決算公告する必要はありません。公告するための手続きをする必要なく、費用も要りません。
  2. 役員の任期がない
    株式会社の取締役には任期が規定されています。大企業に多い公開会社で最長2年、中小零細に多い非公開会社で最長10年です。
    任期満了すると新取締役を株主総会で選任し、登記(登録免許税1万円、資本金1億超は3万円及び司法書士に依頼すれば報酬が加算)しなければいけません。
    同じ人が再任されても同様です。⇒合同会社の業務執行社員に任期の規定はありません。同じ人が業務執行社員であり続ける間は社員総会で再任決議不要であり、登記する必要もありません。
  3. 利益の配分が自由
    株式会社では利益を株主に配分する場合、例えば1株に対して〇円というように株を単位に配分していきます。⇒合同会社では、出資額に関係なく自由に利益配分を決めることができます。

まとめ

以上のように初めての起業、1人での起業、初めての分野での起業には合同会社が向いています。
開業当初の重要な時期では、本業以外の手続き、費用を可能な限り抑えて本業に集中することが重要です。

株式会社と比べて合同会社設立での一番のデメリットは知名度です。
株式会社に対して長らく有限会社という形態が存在していましたが廃止され、現在はそれに似た形態として合同会社が新たに会社法で規定されました。

まだ、この新しい会社形態は多くの人に知られていません。
しかし、会社設計の自由度、会社法に規定されている手続きの省略、経費削減等のメリットに着目して誰もが知る大企業が、実は合同会社だったりします。

事業が順調に拡大していけば、合同会社を株式会社に組織変更し、より一層の拡大を目指すこともできます。

「合同会社」と聞きなれない形態で創業することに抵抗を感じる方もおられると思いますが、上記のなメリットを考慮し前向きのご検討下さい。

※注意!
スタートアップ企業として第三者からの資金提供をお考えの方は、株式会社での設立が必須と言えるでしょう。資金提供の対価として株式、新株予約権が必要となるので、株式会社にする必要があります。

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