取締役会

大企業に多い公開会社(全種類又は一部の種類の株式に譲渡制限が付いていない会社)は、会社法上、取締役会を設置することが義務とされているので、取締役会を置かない選択はできません。

対して、中小零細企業の多くは非公開会社(全ての株式に譲渡制限が付いている)です。
非公開会社は、取締役会設置について選択することができます。

事業規模が大きくなり、取締役の員数も3人、4人と増やしていく過程で、取締役会を置いた方が良いかどうか悩まれる経営者もおられます。
今まで自由にやっていたのが取締役会を置くと、いちいち取締役会の承認を得なければいけなくなる? 等々のマイナスのイメージを持たれている方もおられます。

今回は、中小零細企業に多い非公開会社における取締役会について司法書士が解説します。

取締役会とは

非公開会社において、取締役会を設置するかどうかは自由です。
取締役会を設置するには最低3人の取締役の員数が必要ですが、4人、5人の取締役がいても取締役会を設置する必要はありません。
※非公開会社でも監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社は取締役会を置かなければいけませんが、中小零細企業でこのような形態をとる会社はあまりありません。

取締役会の権能

株式会社において、株主総会は意思決定の最高機関です。
株主総会は法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができるとされています。

しかし、取締役会を設置することにより、株主総会の権限を法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限定することができます。

規定されている株主総会決議事項としては、
定款の変更、取締役の選・解任、合併や解散等の組織上の重要事項があります。
これらの重要事項は株主総会が必要ですが、以外は取締役会で決定できるようになります。

取締役会のメリット

取締役会を置くことによるメリットとして以下のようなことが考えられます。

業務の迅速、経費削減

株主総会を開くには招集通知手続き、通知内容等が会社法でいろいろ規定されており、準備、開催に時間も費用もかかってしまいます。
取締役会を設置すれば株主総会の回数を軽減することができます。

また、取締役会を置くことで株主総会の権限を法律で規定されている最小限にとどめ、種々の決定事項を株主総会を開くことなく取締役会で決定することで迅速に業務を遂行することができます。

経営状態の共有、専横の防止

各取締役は、3箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならないと会社法で規定されています

少なくとも3ヶ月に1回は、取締役が集まり現状を報告し合うことで、現状の経営状況の確認を行うことができます。

ワンマン経営者が1人で全てを仕切っている場合、他の取締役は現状を把握することが難しくなります。
この点、取締役会を置いていれば、会社法で規定されていることを理由に取締役会を開催し、そこで現状について話し合うことで会社の状況を確認することができます。

利益相反行為の承認

中小零細企業では、経営者である取締役と会社との間で取引をすることがあります。
取締役が所有する土地を会社に売ったり、会社所有の土地を買ったり等々の取引が行われますが、このような行為を利益相反行為と言います。

当事者間が利害関係に立っています。安く(高く)売れば(買えば)、どちらかに損得が生じます。

会社が買う、売ると言っても判断するのはもう一方の当事者である取締役です。
自身に有利に、会社に損害を与える形での取引がなされるおそれがあります。

会社法はこのような利益相反取引をする場合、株主総会の承認を得なければいけないと規定していますが、取締役会を設置していれば、取締役会決議の承認で済みます。

取締役会は必要か?

先に述べた取締役会を設置した場合のメリットが、現状にさほど影響を及ぼさないと思われるときは設置する必要はないでしょう。

また、会社設立時や規模が小さな会社では、わざわざ取締役会を設置する必要性はあまりありません。
安易に取締役会を設置すると、取締役会決議が必要な事項なのに決議していないことで、あとで無効になってしまうというような状況も起こり得ます。

取締役会を置くには最低3人の取締役が必要であり、合わせて監査役(又は会計参与)も置かなければいけなくなり、人件費が大きくなってしまいます。

株主総会招集手続きについても、株主全員の同意があれば招集通知等の事前の手続きは省略できます。
株主が家族・親族・知り合い等であれば、同意も容易に得られるでしょう。

当初は取締役会を置かずに会社を経営していき、事業が大きくなり各部門での迅速な判断が必要になったときに、責任者を取締役とし取締役会で定期的に報告させる体制をとるようにすれば良いでしょう。

ただし、経営陣と立場を異にする株主がいる場合、株主総会の権限を縮小させるためにも慎重に取締役会設置の要否について検討する必要があります。

迷ったときは、弁護士や司法書士に相談しましょう。

ご相談は事前にご予約下さい。土、日、祝日や仕事終わりの夜(20時まで)のご相談も対応可能です。