会社を設立するとき、公告方法を決めなければいけません。
公告方法は定款に必ず記載しなければいけない事項ではありませんが、通常、設立時に決めて記載しておきます。
※定款に記載していない場合は、官報公告として登記に記録されることになります。
よって、官報以外で公告を選択する場合は、定款に記載しておくことが必要です。
では公告とは何か?
公告とは
会社法人を設立して事業活動を開始すると、会社法における法人としていろいろな規制を受けることなります。
例えば株式会社であれば、事業年度終了後に決められた期間内に決算報告書を公告しなければいけません。
この公告とは、字の通り公に告げる、世間に向かって公表することを言います。
決算報告書以外にも、合併や会社分割、資本金を減額したとき等に、会社法に従ってその内容を公告することが規定されています。
公告方法の種類
公告をする方法として以下の3つの方法があります(株式会社のケース)。
- 官報公告
- 日刊新聞紙上での公告
- 電子公告
官報公告
官報とは、政府が発行する新聞のようなものです。
法律や政令、省令等、政府人事等の情報が掲載されています。
官報にはこのような公的情報だけでなく、自己破産等の民間に関する情報も掲載されますが、その一つとして会社に関する情報も公告として掲載されます。
日刊新聞公告
日刊新聞とは、毎日配達される新聞社発行の新聞紙です。
毎年、4月、5月くらいになると主に大企業がこの手の新聞に決算報告を公告しているのを見かけます。
時事に関する日刊紙であれば地方紙でもOKですが、スポーツ新聞は認められません。
電子公告
紙媒体ではなくインターネット上で公告をする方法です。
インターネットであれば何でも良いというものではなく、あらかじめ掲載する特定のアドレスを決め、そのアドレスは登記しなければいけません。
ホームページを持っていれば、そのホームページ上で公告することができるので、公告するのに特別な費用がかけずにすることができます。
電子公告はお得か?
株式会社は毎年「決算」内容を公告しなければいけませんので、ホームページを持っている会社にとっては電子公告を採用するのが一番簡単で経費を抑えることができます。
ただし、掲示内容について他の公告方法と違いがあります。
官報公告や日刊新聞公告での決算公告では、貸借対照表の「概要」を1回掲示すればよいとされていますが、電子公告では貸借対照表の全部を5年間掲示し続けなければいけないとされています。
会社の詳しい財務内容を公表したくないという方は、電子公告は避けた方がよいでしょう。
電子公告の注意点
「決算」公告については、経費を抑えたいのであれば電子公告が最適です。
既に自社ホームページを運用している会社はもちろん、持っていない会社でも今はレンタルサーバー代もかなり安くなっているので、費用をかけずにホームページを開設することができます。
※簡単に作れるホームページ作成支援ソフトやワードプレスのひな型を使えば、それなりのページが作成できますがある程度の知識が必要でしょう。
プロに外注すると費用はピンキリになりますが、作成費用が発生します。
しかし、公告が必要なのは決算だけではありません。
合併や会社分割、資本金の減少等々、会社の経営に大きく影響するような行為をするときは公告が必要になります。
このような行為をする場合、総会決議や取締役会決議、株主や債権者への通知等々いろいろな手続きをすることが会社法で規定されており、それらの手続の中に公告も含まれています。
この場合の公告は、債権者保護手続きの過程で行います。
会社法で規定された各種手続きを適法に行うことで合併等の行為が法的に有効となり、最終的に登記をすることになります。
そして、この登記申請の際、規定通り公告したことを証する書面を法務局に提出しなければいけません。
ここで、公告の種類で違いがでます。
官報公告は、掲載した官報の原本を提出すればOKです。
日刊新聞公告も掲載した新聞紙の原本でOKです。
このように、この2つは簡単なんですが、電子公告はかなり違ってきます。
掲載しているサイトをコピーしてはできません。
電子公告の場合は、決められた期間に継続的に掲載されていたことを証明しなければいけません。
どのように証明するか?
公告を電子公告によりしようとする会社等は、いわゆる決算公告の場合を除き、公告期間中、電子公告が適法に行われたかどうかについて、法務大臣の登録を受けた電子公告調査機関の調査を受けなければならないとされています。
調査には当然、それなりの費用が発生し、調査会社にもよるでしょうが一般的には官報公告より高いようです。
公告の使い分け
費用面でみれば、決算公告は電子公告が◎、債権者保護手続き関連公告は官報公告が◎となります。
では、いいとこ取りで決算は電子公告、以外の公告は官報公告とすることができるか?
これが、できます。
この場合、基本の公告方法は官報公告になります。
会社法では官報を公告をする方法に選んだ場合、貸借対照表に関する公告方法を別に定めることができると規定されています。
この場合、決算公告をするホームページのアドレスを登記することになります。
公告方法を電子公告に変更する場合
公告方法を従来の官報公告から電子公告に変更する場合、2っの手続きが必要になります。
一つ目は、定款変更手続きです。
現定款は、「当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。」となっていますので、これを電子公告に変更しなければいけません。
定款変更は会社役員が勝手に変更することはできません。
株主総会に変更案を提示して特別決議(3分の2以上の賛成)で可決される必要があります。
次に、公告方法は登記事項なので、公告方法を官報公告から電子公告に変更する登記申請をします。
公告をする方法の欄に、
「電子公告の方法により行う。
http://www.*****」
と記録され申請をします。
また、通常、何らかのトラブルに備えて、加えて「当会社の公告は電子公告による公告をすることができない事故その他のやむを得ない事由が生じた場合には、官報に掲載してする。」
と記載しておくことも多いです。
決算だけを電子公告にする
公告を全部電子公告にした場合、何らかの公告をする際に電子公告調査機関の調査を受けなければいけない場合が生じます。
この場合、官報公告の方が簡易で費用も安かったりしますので、毎年行う決算公告は電子公告で、他の公告は官報公告で行う、というように使い分けることも可能です。
この場合、現在の「当会社の公告は官報に掲載してする。」という登記記録はそのままで、加えて「貸借対照表に係る情報の提供を受けるために必要な事項 http://www.*****」と、決算を表示するURLが記録される登記申請を行います。
まとめ
新会社立ち上げ時は、安定的な売り上げをあげるまで時間もかかるでしょうし、経費は極力抑えたいところです。
ホームページから集客を目指すのでなければ、基本的な会社情報を掲載したシンプルなホームページで十分だと思いますので、レンタルサーバー等を使ってホームページを作成し、官報公告+決算は電子公告のパターンをご検討下さい。
現在、公告方法を官報公告のみにしておられる場合でも、+電子公告のパターンに変更できますので、ご検討される場合は当事務所にご相談下さい。