人が亡くなると相続が発生します。
相続というと、土地や預貯金のようなプラスの財産を思い浮かべますが、借金のようなマイナスの財産も相続の対象となります。
プラスの財産だけを相続してマイナスの財産はいらない、、ができればよいのですが、それはできません。
プラスの方が多ければ相続後にプラスから借金等のマイナスを清算して残りを相続する選択もできますが、マイナスしか残らなければ相続放棄を検討することになるでしょう。
父が亡くなり父には多額の借金があったので相続放棄をした、これで安心、、と思われるかもしれませんが、実は父と祖父母の亡くなる順序によっては祖父母との相続関係が継続されることがあります。
数次相続と代襲相続
通常、祖父から父へ、父から子へと順番に相続されることになります。
この流れで、祖父が亡くなり父が相続人となったとき、父が相続手続き(祖父名義の不動産の相続登記等)をしない内に亡くなってしまったら、父の子どもが相続人にもなります。
祖父から父、そして子へと2回の相続が発生してことになりますが、この場合、祖父名義の不動産を父名義にすることなく子の名義に変更登記することができます。
これを数次相続と言います。
上記とは別に、不幸にも親より先に子が亡くなることもあります。
祖父より先に父が亡くなってしまうと、父の相続、祖父の相続はどうなるか。
父が亡くなった時点では、相続の対象は父の遺産になるので配偶者と子のように法定相続順に従って相続されることになります(遺言書がない場合)。
では、その後、祖父が亡くなったら相続はどうなるか?
被相続人(祖父)が亡くなったときに存在していない者は相続人にはなれません。
父はすでに亡くなっているので祖父の相続人にはなりません。
この場合、父の子が直系卑属として父に代わって相続人となります。
これを代襲相続と言います。
数次相続と代襲相続での相続放棄のポイント
数次相続、代襲相続が生じている相続関係で相続放棄をするとき、大きな違いがあるので注意が必要です。
数次相続での相続放棄
祖父死亡⇛父死亡⇛子相続放棄
祖父が亡くなったとき父は祖父の相続人であったので、相続登記等の手続をしていなくても父は祖父の遺産を法定相続分の割合で相続していることになります。
その後、父が亡くなったとき、子が父の相続放棄をすると、祖父の遺産も含まれた父の遺産全部の相続放棄をしたことになります。
父だけでなく、祖父にどんなマイナスの財産があったとしても相続することはありません。
代襲相続での相続放棄
父死亡⇛子相続放棄⇒祖父死亡⇛?
父が亡くなり、父には多額の借金があったので子が相続放棄した。
これで安心、もう相続の心配しなくて済む・・・と思われるかもしれませんが、自分が相続人となる相続はこれで終わりではありません。
祖父が亡くなると父は既に亡くなっており相続人にはなれないので直系卑属である父の子が父に代わって相続(代襲相続)することになります。
父に対して相続放棄をしていても変わりません。
父の遺産に対する相続放棄と祖父の遺産相続は別と考えられます。
このとき、祖父に対しても相続放棄するのであれば、父と時と同じように祖父に対して相続放棄をする必要があります。
相続放棄の注意点
上記のように、故人に負の財産があるのが分かったから相続放棄をする、ということが常にできるかというとそうではありません。
相続放棄ができるにはいくつかの要件がありますが、重要なものとして「相続人が相続財産の全部又は一部を処分していない」と「相続があったことを知ってから3ヶ月が経過していない」の2点があります。
父の相続放棄をした後に祖父が亡くなって祖父の遺産を一部代襲相続していた場合(相続財産の一部の処分に該当)や、既に3ヶ月が経過している場合は、相続放棄ができない可能性があります。
このような場合、専門家に相談されることをおススメします。
まとめ
父に対する相続放棄でも、数次相続と代襲相続では効果が異なります。
父に負の遺産があり相続放棄をしたら、数次相続では祖父が優良な財産を持っていても相続することはできません。
逆に代襲相続であれば父の相続放棄をした後でも祖父の遺産を相続することができます。
祖父に負の財産あり相続したくなければ、祖父に対しても相続放棄をすることになります。
相続放棄には期間制限があります。
故人が亡くなって自分が相続人になったことを知ってから3ヶ月以内に手続きをする必要があります。
父に対して相続放棄しているからと祖父が亡くなっても放置していて3ヶ月を経過してしまうと相続放棄が簡単ではなくなるのでご注意下さい。