黄金株

事業をしていると順調にいくこともあれば、苦境に立つこともあります。
苦境を乗り越えられれば良いのですが、大きな失敗をしたり倒産することもあります。

個人事業主だと取引や借入等が全て個人で行ってるので、責任は全て経営者である個人にかかってきます。
自身の個人財産から返済しなければいけません。

では、法人である会社の場合、取締役の責任はどうなるか?
取引や借入は会社名で行っており個人とは切り離されているので、会社に万台が生じたり倒産しても取締役個人とは原則別に扱われますが、個人の責任が問われる場合もあります。
今回は会社での取締役の責任について解説します。

取締役の責任

会社の取締役は会社に対して責任と義務を負っており、そのことが民法や会社法で規定されています。
民法644条に「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。」と規定されています。
会社(委任者)と取締役(受任者)は委任契約関係にあり、民法644条の義務を負っています。

この義務を「善管注意義務」と言います。
644条で言われている「善良な管理者の注意」は抽象的であり”これをすればアウト”というような明確な基準はなく、事業内容等でいろいろ変わってきますが、通常やるべきことをやってなければ善管注意義務違反を問われるおそれがあります。

会社法355条では「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない」と、取締役には会社に対して忠実義務があることを規定しています。
また、会社法423条には「取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」とされています。

会社が何か不正や大きな損失を出した場合、役員が任務を怠り(任務懈怠)善管注意義務や忠実義務に違反したとして、役員個人にも責任(損害賠償責任)が問われることがあります。
※何もしなっくても良いので、報酬は支払うので名前だけ取締役になって下さい、、、と言われてなった取締役で一切会社の活動にタッチしていなくても、取締役である以上、他の取締役と同様の責任を負います。

登記と責任

取締役に就任すると、2週間以内に登記するよう法律で規定されています。
登記により対外的に取締役であることを公示し、取締役としての責任を負います。

では、取締役を辞任したのに辞任の登記をせずに、登記簿上は取締役のままとなっている場合の責任はどうなるか?
会社法908条で「故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。」と規定されています。
辞任したのに取締役として登記されたままになっている状態は不実の登記と言えます。

この不実の登記を故意又は過失で残存したままにしておいた場合、辞任していても責任を問われることになります。
過去の判例を見ると、辞任した後も取締役のように活動したり、不実の登記の状態を承諾していたようなケースで責任を問われています。

辞任した場合は、その事実を2週間以内に登記して公示し、会社が登記してくれない場合は訴訟を含めてしっかり要求することが重要です。

倒産と役員

会社が倒産した場合、責任が生じる相手として債権者があります。
※株主や従業員に対しても責任が生じますが、ここでは債権者について言及します。

個人が自己破産すると債権の返済責任は免責されます。
借金はいわゆるチャラになります。
会社が倒産した場合も同様です。
会社に対する債権は会社の残存資産を持って返済され、足りない部分はチャラになり、取締役は個人的に責任を負わないのが原則です。
※持分会社の無限責任社員は個人資産での返済義務があります。
また、役員が会社の借入に対して連帯保証人になっている場合も個人資産からの返済義務があります。

しかし、場合によっては取締役個人が責任を問われることがあります。

債権者への責任

前述の会社法423条は取締役の任務懈怠による会社に対する責任の規定でしたが、会社法429条で債権者のような第三者に対する責任について規定されています。
「役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、その役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。」

ここでいう第三者に生じた損害に、倒産により回収できなくなった債権者の債権も含まれます。
経営者である取締役の悪意や重過失が原因で会社が倒産した場合、破産管財人は会社の清算過程で取締役個人に対して責任を問う(取締役の個人資産を差押える等)ことができることになります。
※「悪意」とは、違法・不正等であること知っててやったことを言います。会社のお金を個人的に流用した、手形を乱発した、粉飾決算した等々があげられます。

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