公告方法

1人で会社を設立する場合、株式会社にするか合同会社にするか迷うところです。
会社法が改正され有限会社を設立することはできなくなり、それに替わる形態として合同会社が新たな規定されました。

今では資本金1円でも株式会社を設立できるので、株式会社設立のハードルも高くないのですが、まず、1人で会社をスタートとして今後大きくしていきたいと考えている方は、合同会社での設立をおススメします。

ここでは、合同会社の特徴、1人合同会社の定款を作成する上での注意すべき4っのポイントを司法書士が解説します。

合同会社とは

合同会社の説明は、株式会社と比較しながらすると分かり易いので、以下、株式会社との違いという観点から説明します。

株式会社との相違点

合同会社の説明は、株式会社と比較しながらすると分かり易いので、以下、株式会社との違いという観点から説明します。

初期費用

株式会社を設立するには、登録免許税として資本金の1000分の7(最低15万円)、定款認証費用(3~5万円、紙認証の場合は追加で4万円)必要になります。

合同会社は、登録免許税として資本金の1000分の7(最低6万円)のみで、定款認証手続きは不要です。

株主と社員

株式会社は、出資者(発起人と言い、設立後は株主となる)が金銭等を出して、それを資本金として設立されます。
合同会社は、出資者(設立後は社員となる)が金銭等を出して、それを資本金として設立されます。
株式会社は株主、合同会社は社員となるのですが、ここで言う社員は会社に雇用される社員ではなく、合同会社の場合は「有限責任社員」を意味します。

「有限責任社員」とは、会社に対して出資した分だけの責任を負う、責任範囲が有限である社員のことです。
この点は、株主と同様です。

例えば、会社が借金を抱えて倒産した場合、有限責任社員又は株主は出資した額の責任を負いますが(出資した金銭等を失う)、会社の負債に対して責任を負うことはありません。

会社の経営形態

株式会社の経営は、役員(取締役、監査役等)によって行われますが、合同会社には取締役という役職はなく社員になります。

合同会社の社員には、社員、業務執行社員、代表社員があります。
基本的に社員は全員業務執行社員になります。

経営者として実際に業務を行う社員を業務執行社員と言います。
しかし、中には出資するので社員にはなるが、経営は他の社員に任せたいと思われる方もいます。

この場合、特定の社員を業務執行社員とすることも可能です。

同じように、業務執行社員は全員代表社員となりますが、特定の業務執行社員を代表社員とすることもできます。

会社法上の規定

株式会社であれ合同会社であれ、運営方法は会社法で規定されていますが違いがあります。

①役員の任期:
株式会社の役員には任期期間が規定されています(取締役は最長10年)が、合同会社には任期に制限はありません。

株式会社では、最長でも10年で役員の変更手続きが必要になります(総会での選任決議、登記)。
同じ人が引き続き就任しても、手続きは必要です。

対して、合同会社は、同じ人であれば何十年でも、その職に就いている間は変更手続きは不要です。

②決算公告:
株式会社は、決算のための株主総会終了後、決算内容を公告(官報公告等)しなければいけません。
赤字でも会社の財務内容を世間に公表することになりますし、公告にも費用が発生します。

対して、合同会社は決算公告をする必要はありません。

1人合同会社の定款作成4っのポイント

定款とは、会社を運営する上での規則になります。
「会社の憲法」と呼ばれ、非常に重要なものです。

合同会社の定款は社員全員の同意で変更することになりますが、1人合同会社なので、いつでも自分1人で自由に変更することができます。

複数人で立ち上げる場合は、互いの権利関係を踏まえて慎重に定款を作成していくことが必要ですが、1人合同会社はシンプルな内容の定款で問題ありませんが(※1)、押さえておきたいポイントはあります。

※1.他者が社員として加入する場合、事前に全面的な複数人社員型定款に変更しておくことが必要です。

ポイント1.利益相反取引

「社員は、会社法第595条第1項に定める利益相反取引にかかる制限を受けないものとする。」

1人合同会社は完全オーナー会社なので、オーナー所有の不動産を会社が購入したり、その逆だったりと、会社とオーナーである社員間で取引を行うケースが予想されます。

会社法595条1項には、「業務を執行する社員が自己又は第三者のために会社と取引をしようとするときは、当該取引について当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。」と規定されています。

1人合同会社には当該社員以外の社員はいないので、実質的には承認を受ける必要はないのですが、不動産取引で名義を変更する際の手続で1人社員であることや承認手続きが排除されている定款の提出を求められることもあるので、このような取引が予想される場合は定款に定めておいた方が良いでしょう。

ポイント2.退社事由

会社法607条に合同会社(持分会社)の社員の法定退社事由として8項目あげられています。
この中に「後見開始の審判を受けたこと」があります。

この事由があると、1人合同社員が後見開始の審判を受けると、当該社員は退社し1人も社員がいなくなるので解散することになります。

そこで、「後見開始の審判を受けても退社しない。」とすることができます。

1人社員に後見が開始されると成年後見人が選任されます。
この成年後見人が法定代理人として、親族等と協議してその者を新たな社員として加入させて事業を継続するか解散するか等の選択が可能になります。

ポイント3.相続

「社員が死亡した場合は、〇条〇項〇号の定めにかかわらず、当該社員の相続人は、その持分を承継して、当会社の社員となることができる。」

〇条〇項〇号は、定款に退社事由として挙げている「死亡」の号が該当します。
もしもの時、相続人には後を引き継ぐ意思があるかもしれません。
その時のために、持分を相続できる条項をあげておきます。

例えば、社員はAさん1人だが、従業員としてAさんの子供Bが働いているような場合、この条項があるとお子さんはAさんの持分を相続して会社を引き継ぐことができます。
最後の文言を「できる」として、相続人の意思を尊重しておくのも大切でしょう。

ただし、相続人が複数人いる場合、相続人間でもめることのないようにどのように持分を相続するかを記載した遺言書を残しておくことも重要です(※2)。

※2:「当該社員の相続人は」の部分を、「Bは」と特定の相続人名を記載することもできます。ただし、持分は相続財産になるので、遺言書でも相続させる旨を記載し、また、他の相続人の遺留分を侵害しないよう考慮する必要もあります。

ポイント4.清算人

「当会社の清算人は、Aとする。」
「前項の定めにかかわらず、Aが死亡したこと、または後見開始の審判を受けたこと等のやむを得ない事由により、清算人に就任することができないときは、Bが清算人となる。」

会社の清算手続きは、清算人が行います。
通常、代表社員が清算人となって会社の後始末として清算業務を行いますので、上記のAは代表社員の名前を記載します(もちろん、以外の者を清算人として指定することは可能です)。

しかし、1人合同会社の場合、1人社員が亡くなってしまうと清算人がいなくなってしまいます。

そこで、このような事態が生じた場合に備えて、死亡した場合に清算人になる者を指定しておきます。

指定される者としては、相続人であったり、会社に精通している従業員だったり、自由に指定することができます。
親族も含めてですが、特に、身内以外の者を指定する場合、清算後の残余財産から優先的に一定の報酬を支払う旨の規定も設けておけば、清算人も安心して清算手続きに時間をかけることができるでしょう。

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