取得時効

相続土地国庫帰属制度2

土地引取り制度を利用しての手続は、以下のような流れになります。

手続フロー

申請準備から申請、審査、国庫帰属までの流れ

申請準備

申請人、対象土地の適格性を確認します。
申請人適格性の判断は難しくないでしょうが、土地については慎重に判断することになります。

まず、現地を確認しましょう。
多くは、放置状態になっていると思いますので、どのようになっているか実際に見ないと準備できません。

現地を確認した後、法律で規定されている申請却下事由、不承認事由に照らし、該当の有無を判断します。
該当する事由があれば、申請前に解消しておく必要があります。

却下事由について

建物があれば解体すれば大丈夫です。

担保・使用権が設定されていれば解除・抹消するようにします。
担保権については、被相続人が完済しており担保権だけが残っている場合もあるので確認下さい。

担保権(抵当権、根抵当権等)を抹消するには、元になっている借りたお金の返済が必要になるでしょう。
しかし、共同担保(他の不動産にも同じ担保権が設定されている)の場合、かなり返済が済んでいれば、担保価値のない対象土地を担保から外してくれることがあるので、債権者と交渉しましょう。

自分名義の不動産に担保権を移しかえることで対象土地の担保権の抹消に応じてくれることもあります。

また、登記簿で担保権の設定時期を確認し、古いものであれば債権が時効により消滅している可能性もあるので、時効が完成していれば抹消することができます。

隣接地所有者と境界をめぐってトラブルになっていれば、それを解決する必要があります。
基本的に、こちら側は当該土地を国に引き取ってもらう、つまり要らない土地なので、隣地者の主張する通りの境界にして解決しても問題ないでしょう。

更に言えば、境界でもめる位ですから、当該土地を無償で贈与すると提案すれば引き取ってくれるかもしれません。
そうなると、申請する必要がなくなります。

不承認事由について

崖の基準(勾配30度以上+高さ5メートル以上)については、該当する崖がある土地であっても、通常の管理に当たり過分な費用又は労力を要しない場合は承認されることもあるようです。
この点は、何をもって過分であり労力を要しないかの基準は公表されていません。現地を調査した担当官の判断になるのか?と思われます。

動物による被害が「生ずるおそれがある」土地が不承認事由としてあげられています。
森林には大抵何らかの動物が生息していて被害が生じるおそれがあると言えそうですが、この点、法務省は「生ずるおそれ」とは、具体的な危険性があることをいい、抽象的な危険性があるにすぎないものは含まれないとしています。

そのため、動物が生息していることのみをもって、被害が「生ずるおそれ」があるとはならないようです。

承認申請書作成

承認申請書は、土地所在地を管轄する法務局(又は地方法務局)に提出します。

申請書記載内容は、条文で規定されています。
1.承認申請に係る土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所
2.承認申請者の電話番号その他の連絡先
3.手数料の額
4.承認申請の年月日
5.承認申請書を提出する管轄法務局長の表示

申請書に添付する書類は、
1.申請者の印鑑証明書
2.申請者が相続又は遺贈により取得した者であることを証する書面
3.申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面
4.申請に係る土地の形状を明らかにする写真
5.申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
6.申請に係る土地の所有権が国庫に帰属した場合には当該土地の所有権が国庫に帰属したことを原因とする国が登記権利者となる所有権の移転の登記を官庁が嘱託することを承諾したことを証する書面

具体的な申請書書式は、制度開始前に法務省のHPに掲載されるのでは、と思います。

手数料(審査手数料)として申請書に相当額の収入印紙を貼り付けて提出します。
審査手数料は現時点(令和5年2月1日)では未定のようです。

上記を見てわかるように、簡単に申請できる、というものではありません。
司法書士は相続の専門家であり申請書等の作成を代行することが認められていますので、難しいと思われた方は司法書士にご相談下さい。

制度はまだ開始されていませんが、当事務所でも対応を予定しております。

審査

申請後、法務局担当者が審査します。

まず、最初に書面審査が行われ、却下事由がないか確認され、あればこの時点で却下されます。

書面審査を通過すると、法務局担当官による実地調査が行われます。
現地を見て不承認事由に該当するかが調査されます。

法務局担当官による実地調査の際、申請者が現地確認への協力を求められる場合があるようです。
代理人での対応も可能なので、現地がお住まいから遠方の場合、代理人に対応を依頼することも可能です。

負担金

負担金は、土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めるところにより算定した額となっています。

種目は、「宅地」「 田・畑」「森林」「その他(雑種地、原野、池沼、海浜地等)」の4つに分けられます。

「宅地」は面積に関係なく20万円とされていますが、都市計画法の市街化区域又は用途地域によっては算定方法が異なり、この額より高くなるケースがあります(例、100㎡で約55万円)。

「田畑」も基本的に20万円となっていますが、一部の市街地 、農用地区域等の田、畑については面積に応じ算定され、法務省HPに掲載されている例では500㎡で約72万円となっています。

「森林」は面積に応じて(例、1,500㎡で約27万円)、「その他」は面積にかかわらず20万円となっています。

法務省HPはこちら

審査を通過し、法務大臣の承認が出た旨の通知を受領したら、30日以内に負担金を納付します。
この納付により、当該土地の所有権が国庫に帰属することになります。

まとめ

現時点ではまだスタートされていない制度なので、承認申請方法や適格・不適各の判断がどのように行われるのか分からない部分があります。

実際にスタートしていろいろな土地が審査されることで、より具体的な基準が見えてくると思われます。

審査費用については、実際に担当官が現地調査するのでどの位になるのか、今の所分かりません。
負担金は公表されているのに審査費用が未定なのは、現地調査費用をどうするかに時間がかかっている?かもしれません。

他の申請のように、申請自体は数千円程度になるのか、現地調査費用としてそれなりの費用がかかるのか、今後の法務省の発表を待つことになります。

負担金については、多くは最低でも20万円もの費用がかかります。
高額な費用と言えますので、保有したままにするか、高額な費用を払ってでも自分の代で負の遺産を処分しておくか、ご家族交えてじっくり検討した方が良いでしょう。

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