共有している相続財産の分割方法(民法改正10)

共有されている不動産が、いろいろな問題でその共有状態を解消しようとする場合があります。
どのような手続きで解消するかが問題になります。

今回は、共有物でも相続財産に属する共有物の分割について、民法改正を交えてご紹介します。

相続財産の共有物分割

不動産の共有状態を解消、分割する場合、「共有物分割」と「遺産分割」の2っの手続があります。

相続財産が共有状態にある場合、相続財産である以上、その分割は「遺産分割」の手続により行われるとされています。

不動産を所有する方が亡くなった場合、遺言書はなければ当該不動産は相続財産として相続人全員で法定割合に従って共有状態になります。

法定相続割合で相続登記して、そのまま共有物として維持することも可能ですが、共有を解消する場合、相続人全員で協議し、まとまらなければ「遺産分割」として家庭裁判所で調停・審判、裁判をして決めることになります。

「遺産分割」の手続によるとするのは、相続財産の共有物分割は相続の問題であり、当該共有物だけでなく遺産全部を把握し、各相続人における事情(特別受益、寄与分、遺留分)が考慮される必要があるからです。
単なる「共有物分割」手続きだと、この点が考慮されなくなるので、共同相続人の遺産分割上の権利を保護するためにこのように取り決められています。

共有物分割と遺産分割の混合

共有物分割をする際、「共有物分割」と「遺産分割」が併存する場合があります。

例として、甲土地をAとBが共有している状態で、Bが亡くなりBの持分が相続人CとDの共有となった場合です、
CD間は「遺産分割」、AとC、D間は「共有物分割」の関係になります。

従来は、遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係を「共有物分割」で解消した上で、「遺産分割」により共有関係を解消すべきとされ、2回の手続が必要でした。
※「共有物分割」は地方裁判所、「遺産分割」は家庭裁判所の管轄になります。

この点が改正され、改正民法258条の2の2項で、例外として、一定の要件のもと「共有物分割」の手続の中で遺産共有状態の解消を認めるとしました。
これにより、「共有物分割」1回の手続で共有関係が解消されるようになります。

要件

「共有物分割」として1個の手続と扱われるには、以下の要件があります。

  1. 共有物の持分が相続財産に属している。
    先の例に示してように、共有物分割と遺産分割が併存している場合で、共有物全部が相続財産であれば、「遺産分割」になります。
  2. 相続開始の時から10年経過している。
    10年の意味は、10年も経過したのだから「遺産分割」で考慮されるべき各相続人の事情も薄くなり「共有物分割」でいいだろうという事です。
  3. 共有物分割について相続人から異議の申出がない。
    この異議申出は、裁判所から分割請求があったことの通知を受けてから2ヶ月以内に当該裁判所にしなければいけません。
    この規定は上記2の要件を意識して、10年経過していても譲れない、相続人としての権利を主張したいと「遺産分割」を希望する相続人に対する配慮です。

「共有物分割」手続きにおいて各相続人は、法定相続割合又は遺言書による指定割合に基づいて分割が行われることになります。

※「共有物分割」と「遺産分割」が併存している状態でも、相続財産である共有物の持分だけを対象として分割する場合は、従来通り「遺産分割」になります。

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