再転相続

相続放棄をする順番

相続放棄というと、Bさんが亡くなって、その相続人であるCさんがBさんの相続放棄をする、というイメージだと思いますが、Cさんが相続放棄すべき相手はBさんだけでなくAさんも、というケースがあります。

Aさんが亡くなりBさんが相続人となったが、Bさんが相続も相続放棄をしないうちに亡くなりCさんが相続人となった場合、CさんがBさんだけでなくBさんを通してAさんの相続人にもなっているので、Bさん、Aさんに対して相続するか相続放棄するかの選択しなければいけなくなります。

このような相続状態を再転相続と言います。
この場合、Aさん、Bさんに対してどちらを先に相続・相続放棄するかで、どのような結果になるかを説明します。

再転相続での相続放棄

A死亡(1次相続)⇒B死亡(2次相続)⇒C相続人の場合、A死亡でBが相続か相続放棄を行い、その後に死亡した場合、Aの相続はBさんで完結しているので、CさんはBさんの相続のみを検討すればよいことになります。

BさんがAさんの相続放棄をしていれば、BさんにとってはBさんの相続財産のみが相続の対象となり、BさんがAさんを相続していたら、Aさんの相続財産を含んだBさんの相続財産が対象になります。

では、BさんがAさんについて、相続も相続放棄もしないまま亡くなった場合、Cさんの相続はどうなるかが問題になります。

手続きとしては、Cさんが先にBの相続(又は相続放棄)した後にAの相続(又は相続放棄)をする、Aの相続(又は相続放棄)した後にBの相続(又は相続放棄)する、この2っパターンが考えられます。

これらのパターンで注意するのが相続放棄です。
相続をする場合は、期間制限はありません。相続人である以上、何年経っても相続人としての地位に変化はありません。

しかし、相続放棄には期間制限があります。
自分に相続があったことを知ってから3ヶ月以内に手続きをしないと基本的に相続放棄ができなくなります(※3ヶ月経過しても認められる場合もあります)。

A⇒B⇒Cと相続でCがAやBに対して相続放棄する場合、相続放棄の期間は個々に計算されます。
Aに関しては自分がAの相続人であることを知ってから、Bに関しては自分がBの相続人であることを知った時から、それぞれ3ヶ月以内に相続放棄をしなければいけないということになります(令和元年最高裁判例)。

AB両方相続する

特に何も注意すべき点はありません。
Aだけを先に相続しようが、Bだけを先に相続しようが変わりません。

流れとしてはAの遺産をB承継し、Aの遺産+Bの遺産をCが相続することになります。

AB両方相続放棄する

Bの相続放棄を先にすれば、Bの相続人ではなくなり、ひいてはAの相続人でもなくなるので、Aの相続放棄を更にする必要はありません(というより、Aの相続人ではなくなっているのでできません)。
Aの相続放棄を先にしていれば、その後、Bに対する相続放棄も必要になります。

Bのみ相続する

Aを相続放棄した後、Bの相続をすることは可能です。
また、先にBの相続をした後でもAの相続放棄は可能です。
ただし、Aの相続を知ったときから3ヶ月以内にしなければいけないのは変わりありません。

Aのみ相続する

このケースは少し注意が必要です。

Aのみ相続してBは相続放棄するケースですが、先にBの相続放棄をすると、Aの相続は出来なくなります。
Bを相続放棄したことでCは初めからBの相続人ではなくなるので、その後、Aの相続人であるBの相続人としてAの相続をすることはできなくなります。

では、先にAの相続承認をして、その後にBの相続放棄をするとどうなるか?
そもそも、それは有効か? という問題が生じます。

Bに大きな借金がある場合、見方によって、Aだけを相続してBは相続放棄する、そんな都合の良いことできるの?
Bの債権者は、Aの遺産は本来Bが相続すべきものであったが、相続放棄してBの負債は相続せずにAの遺産だけを相続するCに不満を抱くかもしれません。

これに関して、事例は異なりますが、Cが先にAの相続放棄をし、後にBの相続放棄をしたケースで、Bの相続放棄をしたことでCは初めからBの相続人ではなくなることから、Bの相続人としての立場で行ったAの相続放棄は無効ではないかが争われました。

これに対し最高裁は「CがBの相続につき放棄していないときは、Aの相続につき放棄することができ、かつ、Aの相続につき放棄をしても、それによってはBの相続につき承認又は放棄するのになんら障害にはならない、先に再転相続人として行ったAの相続放棄の効力が遡って無効になることはない」と判示しています。

この判決により、Aの相続放棄の後にBの相続放棄をしても、Aの相続放棄は引き続き有効となりました。
判決では、先に行われたAの「相続放棄」は無効にならないとされましたが、Aの相続放棄ではなく「相続の承認」であればどうなるかの判断はされていません。

しかし、「再転相続人として行ったAに対する相続放棄はBを相続放棄しても効力が遡って無効になることはない」としている判決の内容から照らすと、Aに対する行為が相続の承認であっても、その後、Bを相続放棄しても同様に遡って無効にはならない解することができます。

Aの相続・相続放棄とBの相続・相続放棄は、独立・固有の権利であり、別々に行使できると考えられています。

ただし、明確に判決で示されたものではありません。
Bを相続放棄したことで、Bの相続人でなくなった以上、Aに対する相続は無効となるとする見解もあることに注意が必要です。

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