実印

会社の役員が変更すると、登記申請が必要になります。

変更の効力が生じた時から2週間以内に登記することが法律で規定されていますので、例えば、1人の取締役が辞任して新たな取締役が就任した場合、それぞれ辞任した時から、新たな取締役を選任した時から2週間以内に登記申請が必要になります。

役員登記と実印

役員の変更の申請をする場合、ケースによっては提出書類への実印による押印及び印鑑証明書(作成から期間期限はありません)が必要になります。

取締役と代表取締役とで、必要な場合も異なりややこしい面があります。

また、取締役会を置いている会社と置いてない会社でも異なってきます。

取締役会を置いてない会社

中小零細の多くは、取締役会を置いておらず、取締役会非設置会社です。

取締役会が無い会社は、基本的に取締役=代表取締役になります。

ただし、敢て特定の取締役だけを代表取締役とすることもできます。

取締役に関する登記と実印

取締役に関する登記でも、新しく取締役に就任する場合と、同じ人が任期満了で退任すると同時に再選されて再度取締役に就任(再任)する場合とで異なります。

取締役会非設置会社で新たに取締役が選任され就任の登記する場合、就任承諾書に実印を押印し印鑑証明書が必要になります。

取締役兼代表取締役に就任する場合だけでなく、既に特定の代表取締役がいて取締役のみに就任する場合も必要です。

対して、任期満了による退任と同時に再選された取締役に再任する場合、登記的には任期満了による退任の登記はせずに「重任」登記をし、実印も印鑑証明書も不要になります。

任期満了や辞任による退任と取締役の再選が同時(同日)でなければ、「重任」ではなく「退任(辞任)」と「就任」の登記をすることになります。

しかし、この場合でも退任(辞任)と就任の登記を一つの申請でする場合は、実印及び印鑑証明書は不要になります。

代表締役に関する登記と実印

取締役会非設置会社は、取締役全員が代表取締役になりますが、特定の取締役だけを代表取締役とすることができます。

取締役全員が代表取締役になる場合は、取締役の就任の際に実印のある就任承諾書と印鑑証明書を提出するので、あらためて代表取締役の就任に実印及び印鑑証明書は必要ありません

取締役になると同時に当然に代表取締役になるので、代表取締役としての就任承諾書も不要です。

既存の取締役の中から特定の取締役を代表取締役に選定する場合、選定方法としては定款で代表取締役を規定する(定款を変更する)、株主総会で決議して選定する、取締役の互選で選定する(定款に互選による選定方法が規定されている場合に限る)方法があります。

株主総会で選定された場合、選定を証する書面として当該総会議事録を法務局に提出しますが、議事録に出席役員(取締役及び監査役)の実印及び印鑑証明書が必要になります。(※1)

取締役の互選により選定された場合は、互選した取締役の実印(互選書に実印を押印)及び印鑑証明書、また代表取締役の就任承諾書が必要(他の選定方法では不要)で、その承諾書に実印及び印鑑証明書が必要になります。(※1)

※1.総会議事録、取締役の互選書に変更前の代表取締役が届出印を押印している場合は、他の取締役の実印、印鑑証明書は不要になります。

取締役会を置いている会社

取締役会設置会社は、取締役を最低3人置かなければいけません。

そして、取締役会で代表取締役を選定します。

取締役に関する登記と実印

取締役会を置いている会社(取締役会設置会社)では、新たに取締役に就任する場合でも実印及び印鑑証明書は必要ありません

就任承諾書は必要ですが、承諾書には実印での押印は不要です(認印で可)。

当然に、再任する取締役も不要です。

新たに取締役に就任する場合、本人確認証明として住民票(又は運転免許証、マイナンバーカード等)の写しが必要になりますが、当該取締役が同時に代表取締役になる場合は印鑑証明書を提出することになるので、それを本人確認証明書として兼用することができます。

再任の場合は、本人確認証明書は不要です。

代表取締役に関する登記と実印

取締役会で選定された者を代表取締役として就任登記する場合、代表取締役の就任承諾書が必要で、承諾書には実印での押印及び印鑑証明書が必要になります。

※再選の場合は実印、印鑑証明書は不要です。

また、代表取締役は非常に重要な立場なので、取締役会決議をした取締役の実印(取締役瑕疵議事録に押印)及び印鑑証明書も必要になります。(※2)

よって、取締役のみに選任された方は、通常、実印も印鑑証明書も必要ありませんが、選任後に代表取締役を取締役会で選定した場合、取締役議事録への実印での押印及び印鑑証明書が必要になります。(※2)

※2.取締役会議事録に変更前の代表取締役が届出印を押印している場合は、他の取締役の実印、印鑑証明書は不要になります。

代表取締役の辞任登記と実印

取締役会の有無にかかわらず、代表取締役が辞任により退任の登記をする場合、辞任を証する書面を法務局に提出します。

この書面には、次のうちどちらかの印鑑が必要です。

  • 辞任する方が届出している会社の実印
  • 辞任する方の個人の実印(印鑑証明書も要)

ただし、印が必要なのは会社印の届出をしている代表取締役の辞任であり、届出をしていない代表取締役は適用外になります。

会社印を届出している外国人の代表取締役が辞任する場合も、会社印か個人の実印(印鑑証明書)になりますが、個人の実印の替わりにサインをする場合は、署名証明書が必要になります。