遺産

被相続人が亡くなり、相続手続をしようと故人の財産を整理している中で、故人の通帳から多額の預金が引き出されていた、というような事があります。

もちろん、本人が引き出して使っていれば何も問題ありませんが、引き出された時期や金額等から本人による引き出しではない、と推察される場合もあります。

昔と違って、今は銀行も通帳からの引き出しには本人確認をしますし、本人以外の家族による引き出しは、印を持っていても応じないようになっています。

しかし、キャッシュカードであれば、暗唱番号さえ知って知れば本人以外でも引き出せます。

1日50万円までであれば、ATMから引き出せますので、何日かに分けて引き出せばかなりの大金を本人以外の者が引き出すことも可能になります。

そして、いざ、相続が発生して故人の遺産を整理している段階で、誰かに故人の口座から多額の預金が引き出されていることが分かった場合どう対処したら良いか?

遺産の使い込み

同居の親族や、生前に世話をしていた親族が、いろいろな理由で故人の口座から預金を引き出しているケースは少なくありません。

故人の生前中にいろいろな世話をするにもお金が必要でしょうから、引き出されたお金が故人のために使われていたのなら、故人が自分で使ったのと同じであり、当然、「遺産の使い込み」には当たりません。

故人の為に使ったときの領収書等があれば、それと引き出し金額を照合して他の相続人も納得しやすいでしょうが、そうでない場合も多く、結局、何に使われたか分からずもめてしまうことも多いです。

協議

故人と同居していたり、故人の世話をしている相続人による預金の引き出しに関しては、納得できないほどの多額の引き出し額でなければ、引き出しを問題にすることには慎重になりましょう。

相続人自身の時間を割いて故人のお世話をしていれば、それなりの費用もかかります。

その点を考慮して、ある程度は許容することも重要かと思います。

ただし、それを考慮しても数百万、数千万円と高額な預金が引き出されていて、その用途が分からない場合は、協議によりその用途を説明してもら必要がでてきます。

そして、故人の為に使われたものではなく、引き出した相続人が個人的に使っていた場合は、相続財産に返還するように求めることになります。

※相続人が勝手に故人の預金を自己のために引き出していた場合、「故人の預金を盗んだ、横領した」と見ることもできますが、「親族相盗例」と言って親族間の一部の犯罪については罰しないとされ、罰則が免除されます。

遺産分割調停

協議してもダメな場合、その後の対応をご自身でされる場合は、遺産分割調停がよいでしょう。

調停委員が間に入っていろいろ調整してくれます。

全員が同意し調停が整えば、使い込まれた故人の預金を遺産として存在するものとして、遺産分割を行うことも可能です。

もめた場合は簡単ではない

協議にも、調停にも応じない等の場合、返還を求めて訴訟を起こすことになります。

「不当利得返還請求」や「不法行為による損害賠償請求」になります。

弁護士に依頼し交渉、訴訟をすることなりますが、訴訟になった場合、訴えた方が使い込みの事実を証明しなければいけません。

この段階までに及ぶと、相手は簡単には認めないでしょうから、証拠を集めるのも大変になります。

現実的には、裁判までいかずに弁護士に交渉によりまとめてもらうか、裁判の過程で和解等も視野に入れて、弁護士の先生と相談しながら進めていくことになるでしょう。