日本人が亡くなったら、日本の民法に従って遺産相続が行われます。
昨今、アメリカやオーストラリア、東南アジア等の海外に別荘や投資目的で不動産を持たれている方も多いですが、その方が亡くなった場合、海外にある不動産はどのように相続されるかが問題になります。
日本の民法に従って処理して良いのか?
それとも現地の法律が影響するのか?
ここでは、不動産に限定して解説していきます。
海外不動産の相続
被相続人が海外に不動産を所有している場合、所有者が日本人だからといって一律的に日本の民法(相続法)が適用されるわけではありません。
どの国の法律を適用するかは、不動産が所在する国がどのような制度であるかによります。
制度としては、「相続統一主義」と「相続分割主義」があります。
相続統一主義
相続統一主義を採用する国では、動産、不動産問わず、相続はすべて被相続人の属人法によるとされます。
相続統一主義を採用している国に不動産があれば、被相続人である所有者は日本人なので日本の民法が適用されることになります。
基準
相続統一主義は「属人法」なので当人基準で決まるのですが、「本国法適用」と「住所地法適用」の2っの基準があります。
「本国法適用」であれば、所有者が日本人である以上、日本の民法が適用されることになります。
対して「住所地法適用」の場合、日本人である所有者が日本に居住していたら日本の法律が適用されますが、海外に居住していたら居住地の法律が適用されることになり、居住地の相続法を調査して手続が進めることになります。
相続統一主義で本国法を適用している国は、ドイツ、オーストリア、イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、トルコ、韓国、日本、フィリピン、台湾等になります。
相続統一主義採用で住所地法を適用している国は、スイス、アルゼンチン、ブラジル、ペルー、デンマーク、フィンランド等になります。
相続分割主義
相続分割主義は、動産と不動産を区別し、動産相続は被相続人の死亡当時の住所地法に、不動産相続は不動産所在地法によります。
不動産の所在地が海外で、その国が相続分割主義を採用している場合、所在地の法律を適用して相続手続することになります。
相続分割主義を採用している国は、イギリス、アメリカ、カナダ、フランス、ベルギー、中国、ロシア、ベトナム等になります。
管理清算主義
日本以外の国の相続法を適用することになった場合、その国が「管理清算主義」を採用している場合、手続は複雑になってしまいます。
管理清算主義では、相続財産は直ちに被相続人に承継されず、いったん死者の人格代表者に帰属・管理させ、人格代表者が債権者等の利害関係人と清算し、残余ある場合に相続人に移転することになります。
日本における限定承認に似た制度です。
ただし、一定の財産額以下は清算せずにそのまま相続人が相続する例外規定もあります。
管理清算主義を採用している国は、アメリカ、イギリス、シンガポール等になります。
例えば、ハワイに不動産を持たれている方が亡くなった場合、当該不動産の相続手続はアメリカの法律(ハワイ州の法律)にしたがって行われることになります。
管理清算主義を採用しているので、まず、ハワイの裁判所にプロベイト(清算手続)の申立てを行う必要があるかどかを確認することになります。
財産価値等によって清算手続きを省略できる場合があるので、適用の可否について調査します。
まとめ
相続財産である不動産が海外にある場合、その不動産に適用する相続法はどの国のものを適用するかが重要になります。
日本の法律が適用されることになれば良いですが、所在国の法律が適用されることになると、簡単には手続ができなくなります。
国によっては、その国の法律が適用されることになっても、相続人間で不動産を特定の相続人が相続する遺産分割協議が成立している場合、それに従って相続が認められることもあります。
海外に資産がある場合、非常に特殊な相続手続になるので、専門家にご相談することをおススメします。