
現在は有限会社は現行の会社法の法人の組織構成から削除され、新たに有限会社を設立することはできなくなりましたが、既存の有限会社は特例有限会社として存続が可能であり、会社法上は株式会社として存続するとされています。※1
よって、世の中にはまだ多くの有限会社が存在しています。
扱いは株式会社となりますが、株式会社に変更せずに特例有限会社のままである以上、従前とおり基本的に役員に任期期間の制限はなく、一度取締役になったら、その方が亡くなったり、辞任、解任等されない限り、取締役として在任し続け、登記も必要ありません。
※1.旧有限会社の定款、社員、持分及び出資一口は、株式会社の定款、株主、株式及び一株とみなされます。有限会社は合同会社に似ていますが、有限会社の会社の意思決定は「株主総会」であり、合同会社は「社員総会」になります。
有限会社の役員登記
有限会社の場合、登記される事項は、取締役は住所、氏名で代表取締役は氏名のみとなります。
株式会社の場合と逆です。
※有限会社の監査役も住所、氏名の登記が必要になります。
株式会社は必ず代表取締役の登記が必要ですが、有限会社は会社を代表しない取締役がいる場合のみ登記することになります。
つまり、取締役が1名のみの場合、その方は取締役として住所、氏名が登記されますが、他に代表しない取締役がいないため、実質的代表者ではありますが代表取締役としては登記されません。
また、取締役が複数名いても、全員が会社を代表する場合も代表取締役の登記はされません。
代表取締役の登記
先に述べたように、有限会社では代表しない取締役がいる場合にのみ代表取締役が登記されます。
これにより、特例有限会社特有の代表取締役に関する扱いが生じます。
- 代表しない取締役が亡くなった場合
- 代表しない取締役が代表者になった場合
代表しない取締役の死亡
代表しない取締役が亡くなり、会社に代表しない取締役がいなくなり代表取締役1名になった場合は、亡くなった取締役の登記だけでなく代表取締役に関しても登記が必要になります。
代表しない取締役が死亡によりいなくなったので、代表取締役の登記を抹消しなければいけません。
登記の事由は「取締役の変更」「代表取締役の氏名抹消」になります。
亡くなった取締役に関しては「年月日取締役〇死亡」、代表取締役に関しては「同日代表取締役〇の氏名は、取締役が1名になったため抹消」と登記します。
全員が代表取締役になった
会社を代表しない取締役が代表するようになった場合、会社を代表しない取締役がいなくなるので、代表取締役の登記を抹消することになります。
当該取締役も新代表取締役として登記する株式会社と異なります。
有限会社は基本的に取締役全員が会社の代表者なので代表取締役を登記する必要はありませんが、敢えて会社を代表しない取締役を置く場合は、それを公示するために代表取締役の登記をしなければいけない、ということになります。
そして、会社を代表しない取締役が代表するようになり、取締役全員が代表者となった場合、代表取締役の登記は不要になり、その登記を抹消することになります。
抹消事由は「代表取締役の氏名抹消」、登記すべき事項は「年月日代表取締役〇の氏名は、会社を代表しない取締役の不存在により抹消」として登記します。
まとめ
以上のように、特例有限会社は会社法上は株式会社として扱われますが、改正前の有限会社の形態を残しつつ株式会社とは異なる扱いをします。
新会社法においては有限会社の形態は存在しませんが、存続は認められています。
有限会社の記録を引き継いで株式会社に移行することも可能ですので、事業の拡大等を契機に移行することを検討するのも良いでしょう。