韓国相続

日本には多くの在日韓国人の方々が居住しており、不動産等の資産を持たれています。

その方が亡くなった場合、日本にある不動産等の相続財産に関する相続手続はどうなるか?

韓国と日本には、それぞれ相続法がありどちらを適用するか等の問題が生じます。

韓国籍の方の相続

韓国籍の方が日本で亡くなった場合の相続は、日本のか国際私法である通則法36条では「相続は、被相続人の本国法による。」とされています。

また、韓国の国際私法でも「相続は、死亡当時の被相続人の本国法による。」とされており、両方において被相続人の本国法となっているので、韓国籍の方が亡くなった場合の相続手続きは、韓国の民法に従うことになります。

よって、相続人の範囲、順位、法定相続分の割合、代襲相続等は、韓国法によって決定します。

韓国の相続法

韓国において、過去、相続を規定する民法は何度か改正されています。

適用される法律は、死亡した時の民法の規定になるので、亡くなって長期間が経過している場合は注意が必要になります。

亡くなった時点での民法の規定を遡って確認しなければいけません。

ただし、韓国も「共同相続人は、いつでもその協議により、相続財産を分割することができる。」とされていますので、日本と同様に遺産分割協議が当事者間でまとまれば韓国の法定相続割合に関係なく相続手続をすることができます。

※韓国の成年年齢は19歳、日本の成年年齢は18歳です。
未成年者であれば親権者や特別代理人の問題になり、韓国か日本のどちらの民法を適応するかで適用年齢が異なります。
また、日本では未成年者に対しては、親権者(親権者も相続人であれば特別代理人)が遺産分割協議をすることになっています。
相続人が全員韓国籍であれば、韓国の民法を適用しますが、韓国法も「法定代理人である親権者とその子と間の利益相反する行為については、親権者は、法院に、その子のために特別代理人の選任を請求しなければいけない。」とされているので、日本と同様に特別代理人を選任することになります。

相続人の範囲と順位

韓国において、相続人の範囲、順位は以下のように変遷しています。

1960年1月1日~1978年12月31日 1979年1月1日~1990年12月31日 1991年1月1日~
1.被相続人の直系卑属
2.被相続人の直系尊属
3.被相続人の兄弟姉妹
4.被相続人の8親等内の
傍系血族
同左 1.被相続人の直系卑属※1
2.被相続人の直系尊属
3.被相続人の兄弟姉妹
4.被相続人の4親等内の
傍系血族
被相続人の夫は、直系卑属と同順位。
直系卑属がいなければ夫は単独相続する。
被相続人の妻は、直系卑属及び尊属と同順位。
卑属・尊属がいなければ妻は単独相続する。
同左 被相続人の配偶者は、直系卑属・尊属と同順位。※2
直系卑属・尊属がいなければ単独相続する。
被相続人の妻の相続分は、直系
卑属と共同で相続する場合、男子の相続分の2分の1とし、直系尊属共同で相続する場合、その男子の相続分と均分。
被相続人の妻の相続分は直系
尊属と共同相続する場合は、
同一家籍内の直系卑属の相続分
の5割を加算し、直系尊属の
場合は、直系尊属の相続分の5割を加算する。
被相続人の配偶者の相続分は、直系卑属と共同相続する場合、直系卑属の相続分の5割を加算し、直系尊属の場合は直系尊属の相続分の5割を加算する。
同一家籍内の女子の相続分は、男子の2分の1とする。
同一家籍内にない女子の相続分は、男子の4分の1とする。
同左 同一家籍内にある、ないにかかわらず、男女の相続分は均等。
財産相続人が同時に戸主相続をする場合、固有の相続分の5割を加算する。 同左 廃止

※1.第一順位は直系卑属となっており、卑属が複数人いる場合は被相続人に一番近い親等の卑属が先順位となります。
先順位の卑属が全員相続放棄した場合、次順位の卑属が相続人となるので、例えば、子が全員相続放棄したら孫が相続人となります。
日本は第一順位は子供なので、子供が全員相続放棄したら次順位は親になります。

※2.同順位なので、卑属、尊属の人数次第で配偶者の相続分が増減します。
日本は、配偶者の相続分は2分の1(子と共同相続)、3分の2(親と共同相続)、4分の3(兄弟姉妹と共同相続)と固定されています。

参照元:渉外相続登記の実務(民事法研究会)

まとめ

在日韓国人の方が亡くなりその相続をする場合、韓国の民法が適用されますが、4親等内傍系血族が順位4で法定相続人になっていたりと、日本と異なる部分があり相続人の確定に注意が必要です。

遺言書が無ければ、最終的には遺産分割協議で処理することになります。

遺産分割協議であれば、韓国法の相続人の法定相続分に縛られずに相続人間で自由に決めることができるので、現実的には遺産分割協議で相続手続を進めることになるでしょう。