株主

株主の権利

株主の重要な権利として、株主総会での議決権があります。

株主総会は会社の最高意思決定機関であり、経営者(役員)は株主総会で選任決議されないと就任することができません。

重要な役員選任決議は普通決議であり、基本的に出席株主の議決権の過半数で可決されることになり、経営者側が議決権のある発行株式の過半数を保有していれば、安定的に経営者の意思に基づく役員選任ができます。

更に発行株式の3分の2以上を保有していれば、会社の定款も自由に変更できます。

では、オーナーや創業家等の経営陣が3分の2以上の株式を保有していれば、他の株主ことは一切考慮する必要はないかというと、そうでもありません。

会社法によって、少数株主であっても一定の権利を与えられていますので、この権利行使について注意する必要があります。

少数株主

何も問題ない状態であれば、少数株主が自らの権利を行使することはあまりありません。

株主総会は普通決議(過半数)、特別決議(3分の2以上)で決議され、安定的多数を保有している経営側の希望通りに議案が可決されます。

しかし、会社法は少数であっても株主であれば会社に対して行使できる権利を規定しています。

少数株主としては、行使できる権利の内容をしっかり把握しておくことが大切です。

少数株主の権利

少数株主といっても、1株保有の株主から10%以上の株主が含まれており、当然ながら保有株式率が増えれば行使できる権利も増えます。

単独株主権

1株以上の株式を保有する株主が行使できる権利です。

多くの権利がありますが、ここでは株主や会社に影響が大きいであろう主な権利をあげています。

権利 行使内容
株式買取請求権 会社法で規定されているいろいろな場面で、会社に保有している株式の買取を請求できます。
募集株式の割当を受ける権利 会社が募集株式を発行する際、保有株に比例して割当を受ける権利があります。
議案提案権 株主総会の目的である事項につき議案を提出することができます。
株主総会議事録の閲覧等請求権 株主総会議事録の閲覧または謄写が請求できます。
取締役会議事録の閲覧等請求権 取締役会議事録の閲覧または謄写が請求できます。
計算書類等の閲覧等請求権 計算書類等の閲覧、謄本の交付を請求できます。
募集株式発行、新株予約権発行の差止請求権 法令・定款違反等で株主が不利益を受けるおそれがあるときは、やめるよう請求できます。
自己株式の処分の差止請求権 法令・定款違反等で株主が不利益を受けるおそれがあるときは、やめるよう請求できます。
株式併合の差止請求権 法令・定款違反等で株主が不利益を受けるおそれがあるときは、やめるよう請求できます。
取締役等の責任追及の訴え 会社に対し、役員等の責任を追及する訴えの提起を請求できます。
株主総会決議取消の訴え 決議内容が法令、定款違反等一定の要件のもと、決議から3ヶ月以内に決議の取消し訴えを提起できます。
会社の組織に関する行為の無効の訴え 設立、募集株式、減資、組織再編などの会社の行為の無効を、訴えをもって主張できます。

※取締役会設置会社や公開会社においては、6ヶ月以上株式を保有していることが要件となったり、1株ではなく一定の比率の株式保有が要件となったりしますのでご注意ください。

議決権の1%以上保有株主権(行使前6ヶ月保有要)
  • 株主総会検査役選任請求権
  • 取締役会設置会社でに株主による議題提案権、議案の要領記載請求権
    1%以上、または300個の議決権保有で行使可。
総株主の議決権の3%以上保有株主権
  • 役員等の責任免除に対する異議権
  • 株主総会招集権(行使前6ヶ月保有要)
  • 会計帳簿閲覧請求権
    発行済株式の3%以上でも可。
  • 役員解任の訴え提起権(行使前6ヶ月の保有要)
    発行済株式の3%以上でも可。
総株主の議決権の10%以上(又は発行済株式の10%以上)

会社の解散請求権

少数株主の権利行使

少数株主は株主総会決議に影響を及ぼすほどの議決権を持っていないので、経営権を巡って取締役の選任や解任決議の応酬をするというようなことはできません。

また、株主総会決議に影響を及ぼすことができないので、開催や決議等の過程で手続上の法令違反等を理由にして決議そのものを無効とする訴えを起こしたり、役員の責任を追及すことができます。

会社側の対策

少数株主との関係が良ければ、権利行使もされずに問題もないでしょうが、一旦、軋轢が生じると経営陣の不正や手続上における法令・定款違反等を追及するために少数株主に認められている権利がフルに行使され、プレッシャーをかけられることになります。

会社としては、少数株主につけいれられないように法令、定款規定に基づいて適切にいろいろな手続きを進めていくことが重要になります。

オーナー企業だと実際には株主総会を開催していないことも多いでが、100%保有のオーナー会社は別として、そうでなければのちのちその点をつかれる可能性があるので注意が必要です。

少数株主権行使を背景に高額での株式の買取を要求されることもあるので、日頃から法令、定款遵守の経営をすることが大切です。