遺言書に記載されてる内容には法的効果が生じ、その内容に従って相続手続きが行われることになります。
ただし、遺言書に書かれていること全てに法的効果生じる、というわけではありません。
法的効果が生じるのは、「遺贈」「遺産分割方法の指定」「相続分の指定」「認知」「祭祀承継者」等の遺言事項になります。
多くの方の遺言書を書く目的は、「遺産分割方法の指定」や「相続分の指定」を内容として、法的効果(拘束力)を持たせ、その内容通りにすることで相続人間の遺産争いを防ぐことにあります。
その分割方法が特定の相続人の遺留分を侵害していたとしても、遺留分を請求するかどうかは侵害されている相続人の意思によるので、基本的に遺言書に記載されているとおりに分割されることになります。
これに対して、遺言書に記載はされているが、法的拘束力はないものとして「付言事項」というものがあります。
ここでは、この付言事項について解説します。
付言事項
遺贈や遺産分割方法の指定等、遺言書に書かれたことには法的効果があるので、相続手続きはそれに従って行われますが、相続人間に不均衡が生じる内容だと、結果、相続人間の関係にひびが入るかもしれません。
最悪のケースとしては、遺言書は偽造である、法的に無効であると争いになってしまうこともあります。
そこで、遺言者が遺贈や遺産分割方法の指定等をする場合、それをした事情、背景や心境、想いを「付言事項」として書いておきます。
付帯事項に法定効果はないので、相続人がその内容に従う必要はありませんが、故人の心情を知ることで不満のある相続人も争うことなく遺言書の内容を受け入れることが期待できます。
付言をする上での注意点
遺言書に付言する場合、多くは最後に「付言事項」として書きます。
何を書いても自由なのですが、付言することでかえって混乱や相続人間の不信を増長させることにならないようにしなければいけません。
特定の相続人に多く相続させる内容の遺言をする場合、何故そうするのかの経緯や心情を付言事項として書くとき、特定の相続人をほめたたえ、他の相続人を非難するようなことを書いてしまうと、非難された相続人として素直に受け入れることができなくなってしまいます。
また、先に書いた遺言事項の内容に抵触するようなことを書いたり、付言の中に遺言事項と解釈されうるような内容が書かれていたりすると、相続人間で解釈をめぐって混乱が生じます。
遺産を渡すことで何かをして欲しい、というような場合は、その旨を付言事項として書くのではなく、遺言事項として明確にその負担に法的効果を持たせるように書く方が良いでしょう。
付言事項の事例
簡潔なものの代表例としては、「相続手続きはこの遺言書の内容のとおりにして、家族が仲良く協力し合って幸せに暮らしていくことを願っています。」というようなものがあります。
特定の相続人に遺産を渡し、他の相続人に遺留分の請求を自重して欲しい場合は、特定の相続人に多く遺産を渡す理由を述べた上で、「私の心情を理解して、○○は遺留分の請求をすることなくこの遺言書のとおりに円満に相続するようにして欲しい。」というような内容の付言しておきます。
また、葬儀等について自身に何か希望があれば、それを付言しておくのも良いでしょう。
葬儀のやり方(葬儀はしないも含めて)や納骨、お墓の関して、自分の希望を書いておきます。
まとめ
先に述べたように、付言事項の内容に何ら法的効果、拘束力はありません。
遺言書が相続人の目に触れるときは、遺言者は亡くなっており、自ら何かを語ことはできません。
また、生きているときに相続人に相続に関して心情を話すのも簡単ではないでしょう。
付言事項は、相続争いを抑えるのに有効です。
また、付言事項で純粋に感謝の気持やお礼の言葉を述べ、生前言えなかった、言い足りなかった自分の気持ちを残された者に伝えることもできます。
付言事項は遺言者の最後の言葉になります。
相続人にとっても付言事項を受け入れやすくなるように、否定的な表現は避けて感謝の気持ちを表すようにしましょう。