両親が婚姻関係にある状態で生まれた子を「嫡出子」と言い、婚姻関係に無い状態で生まれた子を「非嫡出子」と言います(婚外子とも言います)。
日本では婚姻関係が重視されており、どんなに長く同居していても婚姻していない内縁状態の配偶者に相続権は認められていません。
同様に、嫡出子と非嫡出子に関しても嫡出子の方が多く相続できるような制度になっていました。
しかし、平成25年に最高裁は嫡出子と非嫡出子の相続割合が異なることは違憲との判断を示し、それに従って民法も改正され嫡出子と非嫡出子は相続に関して全く同等になりました。
婚姻関係にある父と母との間で生まれた子(嫡出子)と、父と妻以外の女性との間で生まれた子(非嫡出子)(※1)は、父の遺産の相続分は同等になります。
※1.父に認知されることで非嫡出子になります。
認知されていなければ、実子であっても相続権はありません。
この事は、テレビや雑誌等いろいろな媒体で扱われていますので、ご存知の方も多いと思います。
では、今後は相続手続きで嫡出子と非嫡出子がいる場合、改正民法に従い両者を同等に扱っていいかというと、そうではありません。
ずっと前に亡くなった方の相続手続きを長年放置していて今から手続きをする場合、亡くなった時期によって扱いが変わるので注意が必要です。
嫡出子と非嫡出子の相続は平等
以前の民法では、非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分の1と規定されていました。
しかし、最高裁は平成25年9月4日に非嫡出子の相続分が嫡出子の2分の1とする民法の規定は違憲であるとする決定をし、それを受けて同年12月5日に民法が改正、同年12月11日施行され、両者の相続分は同等となりました、
平成25年12月11日より改正された民法が施行され有効となるので、この日以降に生じた相続は、嫡出子と非嫡出子の相続分は同等となります。
しかし、最高裁は同年9月4日の時点で違憲と示している以上、それ以降の9月5日からの相続にも最高裁の判断が適用されるべきであり、平成25年9月5日以降に発生した相続については、嫡出子と非嫡出子の相続分は同等となります。
平成25年9月4日以前の扱い
では、平成25年9月4日以前に発生した相続は全て旧法に従って非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1になるかというとそうではありません。
最高裁が判断を示した事案が関係します。
最高裁で争われた事案は平成13年7月に亡くなった方の相続に関するものでした。
最高裁は平成25年9月4日にこの事案について決定をした際、非嫡出子が嫡出子の2分の1であることを違憲とする判断は、平成13年7月から平成25年9月4日までに生じた相続については、遺産分割の審判等による遺産分割が確定的になっているものについては影響を及ぼさないとしました。
「確定的」な場合とは、遺産分割の調停や審判、裁判だけでなく、遺産分割協議によって手続きが終了しているのもの含まれます。
既に相続手続きが終了して確定している場合は、それを数十年経った今、再度やり直すとすると遺産も多くは残ってないでしょうし、混乱も生じます。
そこで、故人は平成13年7月1日から平成25年9月4日の間に亡くなっているがずっと相続手続きを放置していて今から手続きを行う場合(確定していない)、嫡出子、非嫡出子の相続分は同等として扱うことになります。
以上のように、時期に応じて嫡出子と非嫡出子の相続分が異なって扱われる場合もありますが、この違いは法定相続割合なので、両者が協議して自由に決めることは可能です。