供給公社

相続登記のご依頼をお受けし登記簿を確認すると「買戻特約」が登記されていることがあります。

買戻特約とは、言葉のとおり売主が不動産を買い戻すことができる特約です。

売主が買主に売買代金(別段の合意をした場合は、その合意金額)と契約費用を払えば、売買契約を解除して所有権を取り戻すことができます。

買戻特約は、売買による所有権移転登記とともに登記され、「売買代金」「契約費用」「期間(10年を超えることはできません)」が記録されます。

期間内であれば売主は登記されている売買代金と契約費用を払えば所有権を買戻すことができます。

買戻特約

売ったのに、何故わざわざ買戻すための特約をするのか?

主に「転売防止目的」と「担保目的」があります。

ここでは、相続に関連する買戻特約なので「転売防止目的」の買戻特約について説明します。

参考)
担保目的の場合、所有者が金融機関からお金を借りる場合に、金融機関との間で売買契約と買戻特約をします。

借入金として売買代金を取得し、所有権は金融機関に移転登記します。

買戻し期間内に借入金である売買代金(プラス契約費用)を金融機関に払えば(返済)、所有権を取り戻すことができます。

金融機関としては、お金を貸すのと同時に所有権を取得できるので、返済できない場合は既に所有権を取得しているので、差押え、競売の手間を省くことができます。

転売防止目的

転売防止目的での買戻特約とは、公団や住宅供給公社等により政策的に安価で分譲地や集合住宅を売却する場合、転売目的で購入する人を排除するために買戻特約を付けます。

例えば、買主が第三者に転売益を得るために高く売却しても、公団・公社等は期間内であれば第三者に対しもとの安価な売買代金で買戻すことができます。

それを承知で買戻特約登記に記載されている売買代金より高く買う第三者はいないでしょうから、結果、転売を防止することができます。

買戻特約登記

買戻特約の登記は、売買による所有権移転登記と同時にされます。

例えば、住宅供給公社から集合住宅を購入した場合、順位1番で買主を所有者とする所有権保存登記がされ、買戻特約は1番の付記1号として登記されます。

このように買戻特約は所有権保存登記と一体して登記されるので、順位2番以降に登記されたものに対して権利を主張することができます。

買戻特約登記の抹消

買戻特約登記は、設定期間が経過しても自動的に抹消されません。

抹消の申請手続きをしなければ、ずっと登記されたままです。

住んでいる分には買戻特約登記があっても問題ありませんが、売却する場合は抹消する必要があります。

基本的に抹消は共同申請で行います。

しかし、多くの方は買戻特約登記の存在を認識されてなく、期間が経過しても買戻権者から何らかの連絡が来るわけでもないので、そのまま放置されている場合がほとんどで、相続や売買するときにはじめて気付き、抹消手続きをすることになります。

所有者が単独で抹消

買戻期間に関係なく設定された日から10年を経過している場合、令和5年より所有者が単独で買戻特約登記を抹消する申請ができるようになりました。

法務省の通達により「買戻し特約がされた売買契約の日から10年を経過したときは、登記権利者(所有者)は、単独で買戻特約登記の抹消を申請することができ、その場合、登記原因の日付は不要で登記原因証明情報の提供も要しない。」とされています。

登記簿に「〇年〇月〇日売買」と記載されていますので、その日から10年を経過していれば、買戻権者に連絡することなしに所有者が単独で抹消することができます。

今すぐ売却する予定は無くても、将来いろいろな事情で売却することも考えられので、相続により名義変更登記をする際に買戻特約の登記も抹消することをおススメします。