新会社を設立する場合に会社名を何にするかは大きな決め事になります。
設立後は、その会社名で名刺を作り対外的に「○○の○〇と申します」というように常に会社名で自分を紹介することになります。
会社名を見て何をやっているかすぐ分かるようにつけたり(○○運輸株式会社等)する場合もあれば、カタカナで名前を見ただけでは何をしているか分からない場合もあります。
いずれにしろ、設立する方が想いをもって商号(会社名)をつけられると思いますが、商業登記的には使えない記号や文字があるので注意が必要です。
一生懸命考えた商号が「登記できません」とならないように、商号を決める際に注意すべき点を解説します。
商号の決定
どのような商号にするかは、基本的に自由です。
同一商号、同一本店は禁止されているので、同じ本店所在地で既に登記されている会社名を商号として登記することはできません。
逆に、同じ商号であっても本店所在地が異なっていれば、登記は可能です。
この場合の「同じ本店所在地」の意味ですが、本店所在地を「福岡市中央区○○〇番〇号ABCビル」と登記している甲会社が既にある場合、ABCビルの別の階が本店所在地であっても「甲」という商号は登記できません。
しかし、甲会社の本店所在地が「****ABCビル3階」で設立する会社が別の階であれば、「甲」という商号を使うことは可能です。
※同じビルで同じ商号を使うことは、利用する側も混同しやすいのでおススメはしません。
では、本店所在地は異なるからといって、有名な大企業の名を商号にして問題ないか?
問題ないとは言えません。
同じ商号が有名な会社名であれば、その会社と混同する顧客等がいるでしょうし、有名企業の名前を不正に利用しようとしているおそれもあるので、法務局の審査(判断)が入りますので、登記できないこともあります。
また、会社法8条では「不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。」とあり、これに違反して営業上の利益を侵害された会社は、その侵害の停止又は予防を請求することができると規定されています。
また、不正競争防止法にも抵触するおそれもあります。
巨額な賠償請求をされるおそれがあるので、有名な企業名と同じ商号を使うのは避けましょう。
決まり事
商号には会社の形態を使わなければいけません。
会社の形態によって、「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」を商号に用いなければいけません。
前か後に付けるのは自由で、株式会社であれば「○○株式会社、または株式会社○○」とします。
使用文字・符号
商号として使える文字は、「漢字」「ひらがな」「カタカナ」「ローマ字(大文字、小文字可)」「アラビア数字(1,2,3・・・・)」になります。
数字も使えるので、「777株式会社」なんて会社名も可能になります。
符号は以下のものが使えます。
「&」、「’」、「,」、「‐」、「.」、「・」=「アンパサンド」、「アポストロフィー」、「コンマ」、「ハイフン」、「ピリオド」、「中点」
符号は、句を区切る場合に限り使用でき、商号の先頭や末尾に用いることはできません。
例)「AB&」「’AB」は使用不可。
ただし、ピリオドは、省略を表すものとして商号の末尾に用いることができます。
例)「株式会社A.B.」
ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合に限り、当該単語の間を区切るために空白を用いることができます。
文字単語間にスペースを入れることはできませんが、ローマ字単語間にはスペースをいれることができます。
例)「株式会社 FUKUOKA MOTOR」
※日本語の単語間にスペースをいれることはできません。
使えない言葉
ギリシャ文字等ローマ字以外の外国語は使えません。
α(アルファ)やβ(ベータ)やローマ数字(Ⅱ、Ⅲ)も使えません。
銀行、信用金庫、保険会社、信託会社等でない会社は、その商号に当該会社と誤認されるおそれのある文字を使うことはできませんので、商号に「銀行」「生命保険」「信託」等の言葉は使えません。
会社の部門を表す「支店」「事業部」「本部」「支社」「出張所」等も使用できませんが、「代理店」、「特約店」「支部」は使用できます。
株式会社の英語表記
株式会社は、英語で「K.K.」、「Company Incorporated」、「Co.,Inc.」、「Co.,Ltd.」のように表記されたりしますが、登記では「株式会社」と日本語で登記しなければならず、英語で登記することはできません。
※定款に記載する場合は、英語でも可能です。