あってはならない事ですが、交通事故等で親子が亡くなるという痛ましい事故をニュース等で目にすることがあります。
人が亡くなれば「相続」という問題が生じます。
被相続人と相続人が同時に亡くなった(又はどちらが先に亡くなったか分からない)場合の相続がどうなるかが問題になります。
同時死亡の相続
同時に死亡した場合の相続については、以下の民法条文が関係します。
民法32条の2では、「数人の者が死亡した場合において、そのうちの1人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。」と規定されています。
例えば、交通事故で事故車に同乗していた2人が病院に運ばれる前に亡くなりどちらが先に亡くなった分からない場合は、この2人は同時に死亡したのもと推定されます。
※「推定」となっているので、後で死亡の先後が分かれば是正することができます。
次に民法882条で「相続は、死亡によって開始する。」とされています。
当たり前と言えばそうなんですが、この規定に民法896条の「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」を組み合わせると、相続人は被相続人が亡くなり相続が発生した時に、生存していなければいけないことになります。
これを、同時生存の原則と言います。
これにより、被相続人と相続人が同時に死亡した場合、相続開始時に相続人は生存していないので、同時に亡くなった被相続人と相続人間で相続は開始しないことになります。
父A、子Bの関係で、AとBが同時に亡くなった場合、AB間に相続は生じない、BはAの相続人にはならない、ということになります。
Aが先に亡くなったのであれば、BはAの相続人として遺産を相続することになるので、Bに妻Cがいれば、間接的ではありますがBが承継したAの遺産を(家計として)取得することができます。
しかし、AとBが同時に死亡した場合、BはAの相続人にならないので、Bの妻CはAの遺産を取得することはありません。
同時死亡と代襲相続
上記の事例で、BとCとの間に子Dがいる場合はどうなるか?
BはAの相続人にならないからBの子DもAの相続人にならない?
では、ありません。
DはAの孫であり、本来であればAからB、BからDへと遺産は承継されます。
AとBが同時に亡くなったためにDがAの遺産を相続できないとするのは問題があります。
そこで、この場合は「代襲相続」によりDはAの遺産を相続できるようになります。
代襲相続
民法887条に「被相続人の子は、相続人となる。被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又はの規定に該当し、若しくはによって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。」と規定されています。
「被相続人の子が相続の開始”以前”に死亡したとき」とありますので、同時に死亡したときも含まれることになります。
よって、Dは祖父Aと父Bが同時に死亡した場合は、Bに代襲してAの相続人となります。