令和6年4月1日から相続登記が義務化されました。
そして「正当な理由なく申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。」という罰則規定も設けられました。
10万円も!と驚かれる方も多い方思います。
実は、登記にこのような罰則規定が設けられているのは珍しくありません。
例えば、会社登記においては、「登記をすることを怠ったときは、百万円以下の過料に処する。」という高額な過料が設定されています。
会社の登記においては、登記すべきことが生じて2週間以内に登記しなければいけないとされていますが、以前は数か月、1年位の経過でも過料に処せられないこともあったのですが、近時は厳しくなってきています。
では、今回の相続登記に対する10万円の過料はどうか。
相続登記しなかったら即10万円の過料のなるのか?
新制度は始まったばかりなので明確のことはいえませんが、現状分かっていることをご説明します。
相続登記での過料
正当な理由なく相続登記をしなかったら、怠ったらすぐに過料の対象になるわけではありません。
相続(遺言を含む。)により不動産の所有権を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられています。
このように「3年」の猶予期間があります。
過料される場合
新制度での過料に関しては、令和 5 年 9 月12日付け法務省民事局長通達で「登記官は、相続登記の申請をすべき義務に違反して過料に処せられるべき者があることを職務上知ったときは、その者に対し相当の期間を定めてその申請をすべき旨を催告し、それにもかかわらず、その期間内にその申請がされないときに限り、遅滞なく、管轄地方裁判所にその事件を過料通知しなければならない。」と示されています。
つまり、登記官が義務違反の事実を職務上で知ってもすぐに過料に処すのではなく、まず相当の期間内に相続登記するように催告し、それでもしない場合に過料に処すとしています。
正当な理由があれば
過料の対象は、「正当な理由」なく相続登記をしていない場合なので、正当な理由があれば3年を経過していても過料の対象にはならないことになります。
以下のケースが「正当な理由」とされています。
- 相続人が極めて多く、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合。
- 遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われて相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合。
- 申請義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合。
- 申請義務を負う者が配偶者からの暴力等で、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合。
- 申請義務を負う者が経済的に困窮して、申請費用を負担する能力がない場合。
上記のような事情があり説明すれば、過料されることはありません。
相続人の申告登記
正当な理由ない場合でも、相続人の申告登記をすれば相続登記をしなくても過料がかせられることはありません。
相続人申告登記は相続登記の義務化に伴って新たに創設された制度で、所有権の登記名義人について相続が開始したこと、自分相続人である旨ことを期間内に登記します。
いろいろな事情で登記ができなくても、相続人申告登記をすれば過料の対象にはなりません。
相続が発生して何らかの理由で簡単には手続きが終わりそうにないなあ、と思われたら、この相続人の申告登記をしておけば、その後手続きに3年以上かかったとしても過料されることがないので安心です。