
建売住宅や分譲マンションを購入すると、当該不動産の所有権の名義を買主にする登記申請を行います。
新築であれば初めての所有者として所有権保存登記を、中古のマンションであれば売主から買主への所有権移転登記をすることになります。
多くの場合、業者から提携している司法書士事務所を紹介され、そこに依頼することになります。
業者側としては、提携司法書士事務所に統一することで連絡もとりやすく仕事を進めやすいという利点があります。
※依頼された司法書士事務所から業者にキックバック(紹介料等)がなされるケースもあるようですが、紹介先へのキックバックは禁止されており、懲戒処分の対象となります。
しかし、買主の方で指定された司法書士事務所から提示された金額をそのまま支払うのではなく、他の司法書士事務所の見積額と検討したいと思われる方もおられます。
そのような場合、自身で独自に別の司法書士事務所に依頼することができるかが気になるところです。
司法書士の選択
業者から指定・紹介された司法書士に登記を依頼する買主としては、選択肢がない状態で司法書士が提示した額をそのまま受け入れることになるので、割高の費用を請求されているのではないかと心配になるかもしれません。
基本的に法外な費用を請求されることはないと思いますが、申請報酬は事務所によって異なるので他事務所に頼んだ方が安いという場合もあるでしょうから、買主側としては縛られることなく司法書士を決めたいところでしょう。
ただし、新築の住宅・分譲マンション等は、売買契約書に登記申請は指定の司法書士事務所を使うとする「司法書士指定特約」が付されていることが多いです。
この特約がある契約書で契約した場合は、契約書通りに指定された司法書士に依頼することになります。
契約する前に業者に「司法書士指定特約」を除外するようお願いしてみましょう。
※「司法書士指定特約」条項を除外してもらうのは簡単ではなく、断られることが多いです。
「司法書士指定特約」がなければ、業者が指定する司法書士に依頼するように言っても従う必要はありません。
登記申請は買主と司法書士間の登記申請契約なので、当事者でない業者が強制することはできません。
他の司法書士に依頼
「司法書士指定特約」がなければ、業者の紹介する司法書士に依頼する義務はありません。
司法書士はこちら側で決める旨を伝えれば良いでしょう。
別々の司法書士に依頼
住宅を購入する場合、現金一括で購入される方もおられるでしょうが、多くは金融機関から借入て購入されます。
この場合、登記も所有権保存・所有権移転登記に合わせて抵当権設定登記をすることになります。
通常は、これらの登記は同じ司法書士が同時に申請(これを連件申請と言います)しますが、別々の司法書士で申請することもできます。
「司法書士指定特約」がある場合でも、当該指定は所有権の名義申請に関する指定の場合が多いので、その場合は抵当権については買主側で決めることができます。
所有権名義の登記と抵当権登記が別々の司法書士になった場合、申請は少し特殊な形になります。
抵当権設定の登記申請をする場合、所有者が所持している登記識別情報を法務局に提出しなければいけません。
しかし、登記識別情報は所有権の名義登記が「完了」したときに新所有者に交付されるので、所有権の名義の申請と同時にする抵当権の登記申請に登記識別情報を提出することはできません。
よって、便宜的に所有権の名義申請と同時に申請(連件申請)される抵当権の申請には、登記識別情報が提出されたものとみなされることになっています。
1人の司法書士が申請する場合は、オンラインで連件で申請するので何の問題もないのですが、別々の司法書士が申請する場合は、それぞれの申請が連件である旨を注記して申請することになります。
特殊ではありますが、このような申請は普通に頻繁に行われているので問題はありません。