
自分が死んだ後は家や部屋の片づけがどうなるのか?
ご家族を一緒に住まわれていたら心配ないでしょうが、1人暮らしであれば気になるところです。
離れて生活している子供や兄弟姉妹等の親族に任せると迷惑かけるなぁ、、と思われる方もいらっしゃるかと思います。
特に賃貸住宅であれば家具等をそのままにしておくことはできないので搬出、処分が必要になり、その費用は一義的には手続きをした人が払うことになります。
速やかに片付けて部屋を明渡さないと大家さんにも迷惑がかかってしまいます。
自分が亡くなったら特定の親族や第三者に部屋を片付けてもらうようにすることができます。
ここでは、そのような取決めをする上での注意点等をご説明します。
死後事務委任
死後事務委任とは、言葉通り、自分が死んだ後に行って欲しい事務手続きを予め他者と契約しておくことを言います。
対象となる事務手続きとしては、葬儀、納骨、法要、病院や施設に関する処理、公共・通信サービスに関する処理等々多岐に渡ります。
そして、部屋の片づけもこの中に含まれます。
自分の死後に特定の親族や第三者と部屋を片付けてもらうことを内容とする契約(死後事務委任契約)を結んでおくことで迅速に処理することができます。
片付けをする人との契約
片付けを依頼する人は、親族でも第三者でも構いません。
処分を引き受ける業者も存在します。
契約するにあたっては、何をどのうように処理してもらうかを具体的に決めることで大切です。
1人暮らしで相続人になる親族はいないのであれば、家財道具一式は全部廃棄処分とする内容でも良いでしょうが、相続人がいる場合は注意が必要です。
たとえ絶縁関係にあったり、一切交流はしていない、という関係であっても、法定相続人である以上相続権があるので、この方達の存在を無視して契約を結ぶと、実際に処理する段階で問題になるおそれがあります。
費用について
契約内容の実行は委任者が死亡した時になり、実行時に委任者が費用を支払うことはできません。
よって、主な支払方法は以下が考えられます。
- 契約時に受任者に預託金を納める。
- 遺産から支払うようにする遺言書を作成する。
- 保険金で支払う。等々
2、3は、遺言執行者や相続人が支払に関与することになるので、事前に知らせておく必要があります。
他者の関与なしに支払う方法としては、1の預託金納付になるでしょう。
相続人との関係
相続人には法定された相続権が認められています。
死後事務委任契約で自分の財産の処分方法を決めていても、相続人が相続権を主張して死後事務委任契約内容と相反する可能性があります。
相続権を主張され契約内容通りに実行できない場合は、死後事務委任契約が解除されることになってしまいます。
そこで、相続人に処分負担をかけないための死後事務委任なので、例えば、相続人が家財道具の取得を希望した場合は引き渡す等の内容を付けておくと混乱を避けることができます。
また、遺言書を作成する場合も注意が必要です。
遺言書に「財産は全て○○に相続させる(遺贈する)」と記載しているにも係わらず、死後事務委任で家財道具の処分を契約内容とするとトラブルの原因となります。
本人としては、価値のある財産を特定の者に相続させ、家財道具等は価値がないから死後事務委任で処理してもらおうと考えて遺言書を作成したとしても、価値のない家財道具も故人の財産なので相続(遺贈)の対象となってしまいます。
このような事にならないように、遺言書で特定の動産を相続(遺贈)させたい場合は、包括的ではなく対象を特定して死後事務委任契約の内容を被らないようにします。
賃貸住宅の注意点
賃貸住宅に住まわれている場合、自分の死後速やかに家財道具等を搬出して賃貸人に部屋を返還しなければいけません。
その場合、もう一つやるべきこととして賃貸借契約の解約があります。
賃貸契約の解約も事務事項として契約内容とすることができますが、この場合でも基本的には相続人がいれば承諾を得て解除することになります。
承諾を得られない(承諾しないというよりは、かかわりたくない、というケースが多いかと思われます)場合や連絡がとれないような場合は、死後事務委任契約に基づいて受任者の立場で賃貸人と解約手続きをすることになるので、家財道具の処分だけでなく賃貸借契約の解約も委任事項としておくことが重要になります。
また、解約時に賃貸人から原状回復費用の請求をされ交渉が予想される場合は、弁護士や司法書士を死後事務委任の受任者とすることも良いかもしれません。
相続放棄との関係
相続人が相続放棄を検討しているのであれば、家財道具等の財産の処分に関与することはリスクがあるので、受任者から処分の承諾や賃貸借契約の解約の承諾を求められても承諾しないようにするのが良いでしょう。
承諾しない、とうのは処分をさせないということではなく、承諾も拒否もしない、関与しないという意味です。
相続人が故人の財産を処分した場合、故人の財産を相続した「単純みなし行為」と捉えられ、その後に相続放棄をすることができなくなるおそれがあります。
賃貸借契約の解約さえも「単純みなし行為」を捉えられかねないので、相続放棄を考えている方は死後事務委任契約行為には関与しないように注意しましょう。
まとめ
身の回りの整理なので、本来であれば相続人や親族にお願いしておくことが一番です。
相続人や親族に処分をお願いし、かかった費用は遺産から清算するような遺言書作成しておくのも良いでしょう。
相続人以外の方であれば、処分するための実費以外に報酬としていくらかの金額を遺産から支払う旨を記載しておけば、処分する方も負担感が少なくなるでしょう。
しかし、このような方がいない、いても頼める関係ではないような場合、自分がいなくなった後に誰が家財道具等を処分するかで関係者が困惑することのないように、死後事務委任契約を検討されてはいかがでしょうか。