
家庭裁判所で正式に相続放棄手続きをすると、故人に対しては初めから相続人ではなくなるので預貯金のようなプラスの財産だけでなく借金のようなマイナスの財産も相続することはなくなります。
相続放棄と遺族年金
国民年金や厚生年金保険に加入されている方が亡くなり一定の要件を満たしていると、その方と生計を同じくしていた配偶者や子供は遺族年金を受け取ることができます。
では、遺族年金をもらえる資格がある者が相続放棄をした場合、遺族年金も放棄することになるのかが気になるところです。
故人に多額な借金があると、相続放棄を検討せざるを得ないでしょうが、遺族年金は残された家族にとって大事な生活費になります。
相続放棄をしたら遺族年金も放棄することになれば、その後の生活に大きな影響を及ぼします。
相続放棄後の遺族年金
故人が年金をもらっている場合、生計を同じにしている妻は遺族年金をもらうことになりますが、年金も故人に支給されていたプラスの財産とみることもできなくはないので、故人に借金があって妻が相続放棄をしたら遺族年金ももらえなくなるのかが心配になります。
結論から言うと、相続放棄しても遺族年金は貰えます。
遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」がありますが、遺族として受ける要件を満たしている方は、相続放棄をして故人の借金の承継を拒否しても、これらの遺族年金を受けることができます。
相続放棄しても受け取れるその他
遺族年金の他に以下も、相続放棄をしても受け取ることができます。
- 未支給年金
- 死亡一時金
- 生命保険金(※1)
- 死亡退職金(※2)
※1.相続財産のほとんどが生命保険金である場合は、遺産分割の対象となり受取人が単独で受領できないおそれがあります。
※2.多くは死亡退職金の受取人の第一順位が配偶者(妻・夫)と規定されていて、民法の優先順位をことなっているので、相続財産とは異なるので相続放棄しても受給権は失わないとされていますが、そのような規定がない場合は、死亡退職金が相続財産とみられ受給できないおそれがあります。