マンションのように多くの人が同じ建物に居住している場合、建物をどのように管理運営していくかが問題になります。
老朽化したマンションも多くなり、大規模修繕や建替え等で居住間でトラブルなる事例も多くなっています。
このような状況を踏まえて、国はマンション等の集合住宅(区分建物と言います)について2025年に法改正を行い、2026年から施行される予定になっています。
ここでは、改正された主なポイントをご説明します。
区分所有法の改正
区分所有、、聞きなれない言葉ですが、1棟の建物を区分して所有すること指し、そのような建物を区分建物と言います。
1棟の建物を多数の人が所有することになるので、建物を安定的に管理・維持するためにいろいろなことが法律で規定されています。
マンションの老朽化でマイナー修繕や大規模修繕が必要になった場合、どのように進めていくか居住者間で話しがまとまらないこともあるでしょうし、ましてや建替えとなると大きな問題になってしまい、話しが進まないという状況も多くみられます。
その点を踏まえて、国は区分建物に関する法律を改正しました。
改正点は、大きく分けて以下の3点になります。
- マンション管理の円滑化
- マンションの再生の円滑化
- 地方公共団体の取り組みの充実
今回は、1のマンション管理の円滑化について説明します。
マンション管理の円滑化
多数の居住者がいる建物では、建物を管理する上で居住間の意見が異なったり、無関心な方がいたり等々で管理方法を決められなかったり、時間がかかったりと円滑に管理をすることが難しい場合があります。
そこで、今回の改正で管理を円滑にできるよう以下の3っの点が盛り込まれました。
- 適切な管理を促す仕組み
- 集会決議の円滑化
- マンション等に特化した財産管理制度
適切な管理
新築の段階で、分譲後も建物の管理が適切にしっかり行われるように分譲会社が管理計画を作成し、分譲後は管理組合に引き継がれる仕組みが導入されました。
また、建物の修理等で管理業者が管理組合の管理者を兼ねて工事の受発注者となる場合、利益相反の懸念があり居住者(所有者)に疑念を持たれないように、所有者への事前説明を義務化しました。
集会決議の円滑化
従来は、全区分所有者の多数決による普通決議(過半数)でしたが、区分所有権の処分を伴わない事項(修繕等)の決議は、集会「出席者」の多数決によると変更されました。
従来では、無関心の方や所在不明(※1)な方も含めた全区分所有者を基準にその過半数の賛成者が必要でした。
しかし、無関心の方や所在不明な方は集会に出席しないでしょうから、その方たちを除外して出席した人の過半数で決議できるようになり、可決の要件が緩和されました。
普通決議の対象となるものは、例えば、建物の維持保存の観点から定期的に実施することが予定されている外壁や屋上防水工事等のいわゆる大規模修繕工事等が想定されます。
※1.所在不明者を母数から除外するには、単に所在が分からないだけではダメで裁判所の認定が必要です。
※2.建替え決議は、所有権の処分に該当するので適用されません。
マンション等に特化した財産管理制度
集合住宅では、中には管理に無関心な方もいて所有する専有部分が著しく劣化してしまうこともあります。
ましてや所有者が所在不明で誰も住んでいない場合は、荒れ放題になってしまいます。
このような状況になると、専有部分だけでなく建物全体の価値を下げてしまうおそれがあります。
しかし、専有部分には所有者がいるので所有者以外の者が勝手に専有部分に手を出すことはできません。
そこで、管理が不適切で他人の利益や財産が侵害される(又はそのおそれがある)場合や所在を知ることができない場合は、利害関係人の請求により裁判所が管理人による管理を命じることができるようになりました。
これにより、不明者に代わって管理人が適切に管理できるようになります。
まとめ
今回は、マンションの管理について改正された部分を説明させていただきました。
所有者、居住者にとって快適な生活をするには、建物が適切に管理されていることが重要です。
管理は集合住宅なので全所有者の意思決定に基づいて管理が行われることが理想ですが、時間も手間もかかる現状を今回の改正でやりやすくなりました。






