前回は「残業の定義」「残業代の計算」についてご説明しました。
今回は、未払い残業や未払い休日出勤手当がある場合、どのような形で使用者(雇い主)に請求するかについてご説明します。
未払い残業手当請求方法
残業代や休日出勤手当が未払いで会社側に請求する場合、まず、会社側に直接請求することが基本的です。
ご自身で請求するか、弁護士や司法書士(請求額が140万円以下の場合)に依頼し会社側と交渉することになります。
会社側との交渉がまとまらなければ、次のステップとして労働監督署への通報、労働審判の申立、訴訟が考えられます。
請求するにしても、請求額の計算の基礎となるものがなければ会社側も認めないでしょうから、日ごろから証拠なる資料を集めておくことが重要です。
証拠が重要
会社側に未払いの残業代を請求するには、請求額の計算の根拠となる証拠が必要です。
裁判になれば、立証責任(残業をしたがその分の賃金がしはわられていないことの証明責任)は請求した側にあります。
概して、残業代を未払いすような会社は、従業員の勤務時間を正確に把握していません。
新しい会社や中小零細企業だと、従業員の勤務時間管理があいまいだったりします。
また、一旦、退勤のタイムカードを押させて更に仕事をさせるような悪質な会社もあります(もちろん違法です)。
タイムカードがない会社であれば、書き間違いや集計ミス等で正確に勤務時間を把握するのは難しくなります。
残業代については前回ご説明したように、1日8時間、週40時間という法定労働時間があり、それを超えて労働した場合、超えた時間の残業代は通常賃金の25%割増、1か月の労働時間が60時間を超えていれば、超えた時間は通常賃金の50%割増で計算されます(その他深夜残業割増等もあり)。
実際に残業した時間に上記の規定に従って割増して残業代を計算します。
計算式自体は難しくないですが、問題は実際に行った残業時間の証明です。
従業員側の一方的な請求であれば会社側が認めることはないでしょうから、証拠をもとに請求する必要があります。
証拠資料
証拠としては、その時間まで会社にいたことを証するものになり、以下のようなものが考えられます。
- タイムカード
- シフト表
- 勤務時間割
- 業務日報
- タクシー等の領収書
出先からタクシーで会社に戻った、終電なく会社からタクシーで自宅に帰った等 - 会社設置のパソコンのログイン・オフ記録
- 給与明細(残業代や休日出勤手当はが記載されているもの)
- 雇用契約書、就業規則、36協定書
- 上司から残業指示メール・ライン
- 仕事のやりとりのメール
- 家族・友人とのやりとりのメール
「まだ残業」「今会社を出た」等の内容。 - 通勤記録(交通ICによる乗車・下車記録等)等々
タイムカードやシフト表、勤務時間割等の資料で勤務時間が分かるような場合は、それらの資料をもとに実際に残業代を計算します。
例えば、資料に基づいて勤務時間を計算したら法定時間外の勤務時間が月に20時間あったにもかかわらず10時間分しか残業手当が支払われていない、法定勤務時間超過分の残業代が25%割増ではなく通常の賃金と同じであった等を割り出せます。
このように、会社側が関与している資料があれば調査や交渉もやりやすいのですが、ない場合は難しくなります。
※出退勤記録等の何らかの労働時間に関する資料を会社が保有している場合、開示してもらうように請求し、応じない場合は裁判所を通して強制的に開示させることもできます。
証拠として自分で出社時間、退社時間を記録しているような場合もありますが、それ単体だけでは証拠としては弱いと言わざるを得ず会社に認めてもらうことは簡単ではありません。
会社側としては、自分で記録しているのでどうにでも書ける、というスタンスになります。
この場合、追加の証拠として通勤で使っているバスや電車のICカードの記録や上司とのメール等々いろいろなものを組み合わせて補強することになります。
まとめ
未払い残業請求は、請求する側が証拠資料に基づいて請求しなければいけません。
証拠の存在が重要になります。
未払いに気づいて十分な証拠を揃える前に会社に請求してしまうと、失敗に終わる可能性が高いです。
その後、会社も用心していろいろな対策をうたれてしまうかもしれません。
どうもおかしい、残業代がやけに少ない、休日出勤したのにその分の賃金が払われていない、と思ったら、まず、証拠集めをすることが重要です。
分からない場合は、弁護士や司法書士に相談しましょう。






