失踪宣告について
失踪宣告には、「普通失踪」「危難失踪」の2種類あります。
「普通失踪」は、不在者(従来の住所又は居所を去り,容易に戻る見込みのない者)の生死が7年間明らかでないときに行う失踪手続きで、「危難失踪」は、戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないときときに行う失踪手続きです。
「普通失踪」では生死が不明後7年間が満了した時に、危難失踪では、危難が去った時に死亡したものとみなされます。
不在者は失踪宣告成立により法律上死亡したものとみなす効果が生じるので、相続手続きにおいて不在者は亡くなったものとし、不在者に相続人がいればその方が代わって相続人となり手続きをすることになります。
失踪宣告手続き
失踪宣告の申立は、不在者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所に行います。
申立人は利害関係人で、不在者の配偶者、相続人にあたる者、財産管理人、受遺者など失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係を有する者とされています。
費用
申立費用は以下のとおりです。
- 収入印紙:800円分
- 連絡用の郵便切手(各種切手):計3,265円分(福岡家庭裁判所の場合)
- 官報公告料:4816円
必要書類
管轄家庭裁判所に所定の申立書に記載の上、以下の書類を添付して申立します。
- 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 不在者の戸籍附票
- 失踪を証する資料
- 申立人の利害関係を証する資料(親族関係であれば戸籍謄本(全部事項証明書))
申立書
申立書は、家庭裁判所所定の申立書類に記載します。
裁判所のHPに「失踪宣告の申立書」がPDFで掲載されていますので、ダウンロードすることができます。
記入例も掲載されているので、それを参考にできます。
申立人に関しては、住所、氏名、職業等を記載し、不在者については最後の住所地、氏名等を記載します。
また、申立の理由として、不在になった当時の状況や行方を捜したが分からなかった等を記載します。
失踪を証する資料
申立割れた不在者を死亡したものとするため、裁判所は失踪状態を確認するための資料の提出を求めます。
少し探せば居場所が分かるような状況にもかかわらず、申立人の一方的な都合で簡単に死亡したものと扱われてしまっては当人もたまったものではありません。
そこで、裁判所には以下のような資料を提出します。
- 宛所に尋ね当たらないとの理由で返戻された不在者あての手紙
- 警察署長の発行する行方不明者届受理証明書
- 職権消除された住民票(戸籍の附票)
- 危難失踪の場合は危難に遭遇したことを示す資料(新聞記事や消防による捜索報告書)等々
既に行方不明者届を警察に提出して受理されていた、住民票が市区町村長により職権削除されていたというのであれば、それに関する書類を提出すればよいですが、今から何かをして資料を作成するというのであれば、不在者宛に手紙を送って「宛先に尋ねあたりません」等と記載されて返戻された手紙を資料にする方法が一番簡単と言えるでしょう。
不在者が最後に住んでいた住所宛に手紙を送りますが、分からなければその方の戸籍の附票を取得し、そこに記載されている最後の住所地宛に送ります。
※裁判所の判断で追加の資料の提出を求められる場合があります。
手続きの流れ
申立後、手続きは以下の流れで進みます。
- 管轄家庭裁判所に申立書及び必要書類を提出。
- 審判開始。
審問や書面での照会、裁判所調査官による調査等が行われます。 - 公示催告
裁判所は、失踪者に対して一定期間内に生存していることを届出なさい等の内容の公告をします。
公告期間は3ヶ月を下らないとされており、少なくとも3ヶ月以上の期間を要します。 - 失踪宣告
裁判所は、失踪者から生存の届出がなく公告期間が満了したら失踪宣告をし、2週間内に異議がなければ失踪宣告が確定します。
確定したら、裁判所書記官は確定した旨を公告し、失踪者の本籍地の市区町村長に通知します。
申立人は、失踪宣告確定後、10日以内に市区町村に失踪届をし、失踪者の戸籍に死亡した旨が記載され、手続完了となります。
申立から手続き完了まで、およそ7~8か月程度かかるので、失踪宣告をする場合はできるだけ早く着手した方が良いでしょう。