遺産分割協議とは、相続人全員で相続財産(遺産)をどのように分けるかを決める協議です。
遺産分割協議は、遺言書が無い場合に行います。
遺産分割協議とは
相続人全員が協議に参加していることが必要ですが、全員が一堂に会する必要はありません。
分けて行うこともできますし、電話やメール等でやりとりして決めることもできます。
最終的に分割方法を遺産分割協議書にまとめて、署名・押印(実印)することが求められます。
いつまでに遺産分割協議をしなければいけないという期間制限はありません。
故人が亡くなって半年、1年後にすることもありますが、多くは、49日法要を目途に相続手続きに着手されるようです。
※令和6年4月1日からは、3年以内の相続登記が法律で義務となります。
相続税が課税されることが予想される場合、亡くなってから10ヶ月以内に申告する必要があるので、それまでに協議を終わらせておく方が良いでしょう。
※協議が成立していなくても相続の申告は可能です。
この場合、各相続人は法定相続割合に従って財産を取得したものとして相続税の計算をし申告することになりますが、相続税の軽減特例が適用されなくなるので注意が必要です。
協議参加者
相続人全員で協議することが必要で1人でも欠けていると協議自体が無効になるので、遺産分割協議を行う前に相続人を確定する必要があります。
通常、相続人は配偶者や子供達のように各自知れている存在なので、相続人の方は相続人がもれることなんてないと思われます。
しかし、ごくたまに、戸籍を調べたら故人は再婚で前婚との間に子供がいた、認知した子がいた、というような家族が知らない事実が判明することがあります。
この場合、それらの子も故人の相続人なので、その子たちを無視して行った遺産分割協議は無効になります。
そこで、故人の生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍謄本を取り寄せ、記録を精査して相続人を確定する必要があります。
注意点
相続人は以下のようなケースに該当する場合は、注意が必要です。
- 未成年者
相続人が18才以下の未成年者であれば、遺産分割協議に参加できません。
代わって親権者(親)が協議に参加することになりますが、その親も相続人であれば代わることができず、家庭裁判所に特別代理人を選任してもうらうことになります。 - 認知症である
相続人が認知症の場合、判断能力の問題により協議に参加することはできません。
家庭裁判所に後見人を選任してもらい、その後見人が代わって協議に参加します。 - 相続人が亡くなっている
相続人である方が故人より先に亡くなっている場合、その相続人の相続人が故人の相続人(代襲)となります。
よって、先に亡くなっている相続人の相続関係を調査して、相続人を確定する必要があります。 - 音信不通の相続人がいる
相続人にである以上、この方を無視して遺産分割協議をすることはできません。
家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらい、その方が協議に参加します。
また、行方不明状態が7年以上続いている場合、「普通失踪」手続きをして法律上亡くなったものとして扱い、その相続人が協議に参加するやり方もあります。
故意に特定の相続人を参加させずに遺産分割協議していたら、その協議は無効になります。
では、故意なく欠いていたらどうなるか?
遺産分割協議が終わった後に、故人の離婚が無効になった、認知の訴えが認められた、このような場合、妻や認知子が新たに相続人になります。
では、既に終了している遺産分割協議はどうなるか?
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相続財産
分ける対象となる相続財産(遺産)を明確にするために故人の財産を調査します。
不動産や預貯金、有価証券(株券や国債等)、動産(自動車や宝石等)をリストアップしていきます。
また、とても重要ですが忘れがちになるのが故人の負債等のマイナスの財産です。
借金や保証債務(誰かの保証人になっている)も相続の対象となるので、その有無を調べます。
※ただし、借金や保証債務は、基本的に法定相続割合に従って各相続人が自動的に相続することになります。
相続人間で法定相続割合と異なる分け方を決めた場合、相続人間では有効ですが、債権者に対しては承諾を得る必要があります。
承諾を得られなければ、法定相続割合に従って請求されることになります。
相続財産の分け方
分け方に決まりはありませんので、全員で話し合って自由に決めることができます。
相続人が複数人いて、協議で1人の相続人が全部を相続するとしても問題ありません。
但し、原則、各相続人は自身の法定相続割合分の相続財産の取得を主張することが認められています。
この割合に従って分割して相続することもあれば、この割合をベースに特別受益や寄与分を考慮して話し合いで決めていきます。
相続人間で協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割の調停の申立てをして、第三者(調停委員)をいれてまとめていきます。
これでもまとまらない場合、最終的には審判となり、裁判官に決めてもらうことになります。
遺産分割協議書
協議がまとまったら、その内容を記載した書類を作成します。
この書類を「遺産分割協議書」と言います。
各財産を明確に表示して、誰が相続するかを明記します。
不動産の表記は、登記簿に基づいて土地であれば所在、地番、地目、地積を、家屋であれば所在、家屋番号、種類、構造、床面積をそのまま書き写します。
預貯金は、機関名、支店、口座番号を明記します。
最後に日付を記載し、参加者全員の署名、実印による押印をします。
相続登記には相続人の印鑑証明書も必要になるので準備しておきます。
遺産分割協議書は、全部の相続財産の分割方法を記載しなければいけない、というものではありません。
ピンポイントに、ある特定の財産だけを対象とした遺産分割協議書を作成することも可能です。
不動産についての分割方法が決まったので、不動産に関してのみの遺産分割協議書を作成して相続登記を行い、他の相続財産についは別途、協議をして作成することも可能です。
遺産分割協議証明書
相続人が多かったり、遠方にバラバラに住んでいて、1枚の遺産分割協議書に全員の署名、押印をしてもらうのに時間を要することが予想される場合、遺産分割協議証明書で対応することも可能です。
協議して決めた分割方法を記載した証明書を人数分を用意し、一斉に各相続人に送付し、各自に署名、押印してもらうことで、遺産分割協議書に替えて短時間で手続きをすることができます。
遺産分割協議のやり直しは可能か
相続人全員がやり直しに承諾していれば可能です。
また、相続財産に重大な事実誤認があり、誤認がなければ現状の遺産分割内容に合意しなかったと認められれば、やり直しが認められることがあります。
もちろん、詐欺、強迫により意思に反して合意している場合も同様にやり直しが認められることがあります。
但し、全員の承諾に基づくやり直し以外は、簡単に認められれるもではないので、協議は慎重に判断して行うことが重要です。
※最初の遺産分割協議後に相続財産が第三者に売買等で譲渡されていたら、基本的に当該財産をやり直し遺産分割協議で取り返すことはできません。
余分な税負担
遺産分割協議をやり直した場合、税金を余分に支払うことになるおそれがあります。
新たな遺産分割協議で相続財産は、最初の遺産分割協議で取得した相続人からやり直しの遺産分割協議で取得した相続人に渡ります。
この場合、相続自体は最初の遺産分割協議で終了し登記をしているので、最初に取得した者がやり直し協議で取得する者へ贈与してことになり、贈与税等が課せられることになります。