遺産分割調停とは

被相続人(故人)が遺言書を残していない場合、故人の遺産は相続人全員でどのように分配するか協議して決めることになります(遺産分割協議)。

協議がまとまれば、文書(遺産分割協議書)にして全員で実印を捺印し、印鑑証明書を付けて法務局に相続登記のため提出することになります。

しかし、「争族」という言葉があるように、話し合いがまとまらず相続人間で争いになってしまうケースも少なくありません。

延々を言い争うことは当事者にとって精神的に大きな負担になります。
長引けば親族関係に回復しがたい大きな溝ができてしまいます。

そこで、まとまらないと判断したら早急に第三者による解決を図ることが重要です。
弁護士に依頼して全面的に相手と交渉してもらうことも一つの方法ですが、ご自身でできる手段として「遺産分割調停」があります。

家庭裁判所の調停委員が双方の言い分を調整して妥協点を探り、まとめようと努力してくれます。

最終的に、調停過程で相手方と合意できれば、調停成立となり合意内容に従って遺産が分割されることになります。

調停が不成立であれば(調停委員から提示された調停案に従わなければいけないということはありません)、自動的に「審判」に移行し、最終的に裁判官が決定することになります。
決定は判決と同じとお考え下さい。

遺産分割調停の申立て方法

遺産分割調停の申立は、全員でする必要はなく1人でできます(1人が他の相続人全員を相手として申立てます)。

申立先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所になります(当事者間で話し合って管轄する家庭裁判所を決めることも可)。
裁判所に支払う費用は、被相続人1人につき1,200円(収入印紙)と裁判所規定の郵便(切手)費用(福岡家庭裁判所では当事者数x820円)だけです。

申立には家庭裁判所所定の申立書に必要事項を記入し、申立書(相手方の人数分のコピーも必要)と必要書類を添付して提出します。
添付する書類は、

  1. 故人の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本・改製原戸籍
  2. 相続人全員の戸籍謄本
  3. 相続人全員の住民票又は戸籍の附表
  4. 遺産に関する書類(預金通帳、登記簿、固定資産評価表等)
  5. 遺産目録表
  6. 事情説明図
  7. 不動産の位置図
  8. 相続関係図
  9. 遺言書・遺産分割協議書(案)(ある場合は添付)

相手方の戸籍謄本や住民票を申立人が収集したり上記書類を作成するのは簡単ではありません。
弁護士に調停を依頼されるのであれば全て弁護士が行ってくれます。

ご自身で調停をするのであれば、申立書の作成、必要書類の収集・作成は司法書士にご依頼されることをおススメします。

司法書士がバックアップ

司法書士弁護士に依頼すれば全部を任せることができますが、費用が心配な方はご自身で調停手続きをすることも可能です。
通常の裁判と違って調停委員が関与するので、分からないことがあればいろいろ教えてくれます。
申立書や調停中に提出を求められることがある主張書面等で作成が難しい場合は、書面作成を司法書士に依頼することもできます。

費用

申立書作成費用:8万8,000円~
主張書面等作成費用:3万3,000円~/件
実費(収入印紙、切手代等)が別途必要になります。
※作成にあたって調査が必要な場合、寄与分や特別受益を主張する場合等、内容によって料金が変わります。

調停のすすめ方

調停は平日に家庭裁判所で基本的に月1回のペースで行われます。

家庭裁判所の調停室で調停委員に対して自分の考えを主張し、調停委員を通して相手の主張を聞くことになり、調停委員が仲介するので相手と対面して協議することはありません。

調停委員が介在していろいろな事を説明しながら話し合いを進めてくれるので、ご自身でも対応することが可能です。
分からない事があれば、調停委員に聞けば答えてくれます。

このように互いに直接ぶつかり合うよりも、調停委員という第三者を交えて話し合った方が冷静にもなり話し合いもまとまりやすくなるでしょう。

調停において、調停委員から口頭だけの主張だけでなく、言い分を書面(主張書面、陳述書等)にまとめて提出するように求められることがあります。
この場合、次回の協議までに(通常、協議の1週間程度前に)裁判所に提出することになります。
※提出書面の作成を依頼されたい場合は、司法書士にご相談下さい。

調停期間

調停期間はケースによります。
1回の協議でまとまることもあれば、1年以上かかることもあります。

裁判所発表の過去のデーターを見ると、1ヶ月で協議が終了するのは全体の僅か2%、全体の6割が終了に6ヶ月以上、1年以上要したケースは全体の3割に及びます。

このように、調停委員が仲介に入ったとしても簡単に合意にいたるわけではありません。
家庭裁判所に調停が持ち込まれる多くのケースは、長い間、当事者間で言い争われており感情的にこじれにこじれています。

家庭裁判所でも感情的になっている当事者を合意させるのは容易ではありません。
早期解決のコツは、感情的対立が深刻になる前に「第三者に解決を委ねる」と、調停の申立をすることです。

調停成立・不成立

当事者が自分たちにの主張、合意できるポイントを調停委員に提示し、それに基づいて最終的な合意案が検討されます。
調停委員が提示した内容に全員が合意できれば調停終了です。

合意できなければ自動的に調停から審判に移行します。
審判では調停委員ではなく、通常の裁判のように裁判官が全面に出てきて審理します。

裁判官から質問されたり、文書提出を求められたりすることがありますが、裁判官が調停過程で双方が主張した内容や提出書面等の書類だけで十分と判断した場合は、すぐに決定がなされることもあります。

裁判官による決定は、いわゆる判決と同じものとお考え下さい。
この決定に不服であれば、即時抗告(控訴と同じ)を行い高裁で争うことになります。

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