相続人を欠いた遺産分割協議は無効
遺産分割協議は相続人全員が参加して決めることことが必要です。
一部の相続人を欠いた遺産分割協議は無効(※1)となり、改めて全員参加で協議をやり直すことになります。
無効とは、なかったことを意味し、遺産を取得した者がいればそれを返還しなければいけません(相続財産に戻す)。
存在を知りつつ故意に協議することを言わずに他の相続人と協議したよう場合が該当します。
では、その存在を知らずに遺産分割協議を行った、協議を行った後に存在を知った、協議後に相続人として法的に認められたような場合はどうなるでしょうか。
一律に既に行った協議は無効となるか、についてご説明します。
※1.無効になる前に、故人の戸籍から遺産分割協議に参加して相続人が全員でないことが分かるので、不動産や銀行口座の相続手続きをしても法務局や銀行から手続きを拒否されます。
協議前に存在を知っていた
遺産分割協議前にその存在を知っていたにも関わず、その者を欠いて行った遺産分割協議は無効になります。
故人の相続手続きをするのは現在の故人の家族(妻や子)になることが多いですが、故人に婚外子(認知した子)や前婚との間に子がいる場合、その子たちと現在の家族とは疎遠であることが多いです。
また、故人がその事実を黙っていて、手続きのため故人も戸籍を取得したら発覚した、というようなこともあります。
このような状況で、婚外子や前婚の子を無視して今の家族だけで遺産分割協議をしたら無効になります。
行方が分からない
絶縁状態で何年、年十年も連絡をとっていない、どこにいるのか、生きているのかさえ分からない、というような状況の家族がいても、その方を無視して遺産分割協議をしても無効になります。
戸籍等を追っても居場所が分からない場合、家庭裁判所に不在者財産管理人(行方不明者に代わっての財産(相続財産を含む)を管理する人)を選任してもらって、その管理人が協議に参加して決めることになります。
また、7年以上行方が分からないような場合は、失踪宣告をして法的に亡くなった扱いにすることもできます。
ただし、亡くなった扱いになるので、その方に相続人がいれば、その相続人が行方不明者に替わって相続人となって遺産分割協議に参加することなります。
協議後に存在を知った
基本的に遺産分割協議を行った後に、他に相続人がいたことを知った場合でも、協議は無効となります。
家族で遺産分割協議をして相続登記を司法書士に依頼、司法書士が故人の戸籍を調査したところ認知した子、いわゆる隠し子がいた、ということもあります。
また、元妻から夫の死亡後に離婚無効の訴えを提起され無効とする判決が確定したことによって元妻が相続人になったということもあり得ます(滅多にあることではありませんが)。
遺産分割協議は相続人全員出席している認識のもとで遺産分割協議が行われていますが、のちに離婚や離縁が無効となった場合、やはり、相続人を欠いているとして協議は無効となり、欠いた相続人も含めて改めて遺産分割協議をすることになります。
認知された子
相続開始後に認知の訴えが提起され、訴えが認められた場合は扱いが異なります。
民法910条に「相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。」と規定されています。
つまり、既に行った遺産分割協議は無効にせずにそのままとし、各相続人は総財産を取得した割合に従って認知子に金銭でその相続分を支払うことになります。