相続放棄Q&A<

相続放棄をするには何をすればよいのか?
相続放棄は、必ず家庭裁判所で手続きをしなければいけません。相続人間で話し合って「私は何もいりません。相続を放棄します」というような文書(遺産分割協議書)を作成しても故人の借金から逃れることはできません。家庭裁判所に相続放棄申述書を提出して受理してもらうことで相続放棄が成立します。
相続放棄はいつでもできるの?
相続放棄ができる期間が規定されています。自分に相続があったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きするよう規定されています。これは、3ヶ月が経過してしまうと法律上相続したものとみなされるからです。
ただし、故人に相続すべき財産がないと思い、そう思ったことに相当の理由が認められるような場合、財産(負の財産含む)があることを知った時から3ヶ月以内であれば認めてもらうことができます。例えば、亡父には相続すべき財産はないと思い相続に関して何もしないでいたところ、亡くなって6ヶ月後に父の債権者から相続人であることを理由に返済請求されて初めて亡父に借金があることを知った場合、この時から3ヶ月以内であれば家庭裁判所に相続放棄を認めてもらうことができます。自分に相続があったことを知った日をいつとするかで、3ヶ月の起算日が大きく変わってきます。
亡くなったことを知った日と自分に相続があっことを知った日は同じようで異なります。亡くなって3ヶ月以上の結構な月日の経過後に相続放棄の申立をする場合、裁判所に事情を説明するための上申書を提出して認めてもらわなければいけません。当事務所では、20年前に亡くなられた父親の相続放棄を認めていただいたこともあります。3ヶ月経過していても諦めることなくご相談下さい。
※家庭裁判所は明白に相続放棄の要件を欠いている以外は、相続放棄を受理する方向にあります。家庭裁判所で相続放棄却下が確定してしまうと、他に申立人に対する救済策はなく負担が大きくなってしまうからです。そこで、裁判所はできるだけ相続放棄を認め、異議ある債権者は別途、相続放棄無効の裁判で争うことになります。
相続放棄の申立にはどんな書類が必要ですか?
家庭裁判所所定の相続放棄申述申立書と故人と申立人の除籍・戸籍謄本が必要です。
故人が亡くなって3ヶ月を経過している場合、経過後に申立をした理由を説明するための上申書が必要になります。
親が亡くなったので不動産や預貯金をどう分ける話し合って問題ないですか?
話し合う前に、まず、故人の遺産内容を確認しましょう。重要なのは借金や保証人等の有無です。遺産をどう分けるかの話し合いを遺産分割協議と言います。自身が相続人であることを前提として故人の遺産をどう分けるかの話し合いなので、遺産分割協議をすること自体が相続人としての行為(相続財産の処分行為)となり、以後、相続放棄ができなくなるおそれが大きいです。また、詳しい調査をせずに遺産分割協議をして、その後、債権者からの請求で故人の借金が判明した場合、相続放棄の申立期間制限(3ヶ月)が問題になります。借金の存在を知らなくても遺産分割協議の時から期間はスタートするとする判例があり、協議から3ヶ月経過していれば相続放棄が却下されるおそれがあります。
協議をする前に、しっかり故人の遺産の内容を調査、確認することが重要です。
相続放棄を検討しているが注意する点は?
少しでも相続放棄することを考えているのであれば、故人の遺産には一切手を付けないことです。現金、預金はもちろん、車や他の動産(品物)を使ったり、持ち帰ったりしないよう注意しましょう。手を付けてしまうと、法律上相続したものとみなされてしまい相続放棄ができなくなったり、相続放棄が認められても債権者から相続放棄無効の訴えを起こされてしまうおそれがあります。
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相続放棄の費用はどのくらいかかる?
必ずかかる費用として、
裁判所に支払う相続放棄申立費用、戸籍・除籍謄本の取得費用があります。
申立費用は800円(収入印紙)です。
戸籍謄本は450円/通、除籍謄本は750円/通です。
申立を司法書士にご依頼された場合、上記に司法書士報酬が加わります。
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故人に借金についてどうやって調べたらよいのか?
銀行等の金融機関、消費者金融、クレジット会社であれば、各会社が加盟している信用情報機関に照会すれば借入の有無が分かります。
各機関:全国銀行個人信用情報センター(銀行・銀行系クレジット会社)、株式会社日本信用情報機構( 消費者金融業者が対象)、株式会社シーアイシー (クレジットカードや信販系業者が対象)
ただし、上記機関に加盟していない会社や個人からの借入は分からないので、故人が残している書類・郵便や口座からの引き落とし等の記録から探すことになります。
相続放棄を検討する上で、故人の借金以外で気を付けることがありますか?
借金以外で注意すべきは保証人問題です。故人が誰かの借金の保証人になっていたら、その保証人の地位を法定相続割合で相続することになります(保証債務の相続)。故人が1000万円の保証人になっていて相続人が子供2人の場合、2人はそれぞれ500万円の保証債務を相続することになります(500万円の保証人になる)。悩ましいのは、債務者が順調に返済すれば何も責任を負うことはないということです。
例えば、故人には1000万円の預貯金があるが、3000万円の借金の保証人になっているような場合どうするか。1000万円を相続しても債務者が完済してくれれば何の問題もありませんが、滞納されると保証人として返済を請求されることになってしまいます。このような場合、債務者の返済状況(借金残高)や経済状況等を見てどうするか判断することになるでしょう。
相続放棄すると仏壇やお墓も引き継ぐことができなくなりますか?
仏壇、お墓、位牌等のいわゆる祭祀財産は、相続放棄しても受け継ぎことができます。相続放棄が否定されることはありません。
相続放棄したら生命保険金も受け取れなくなりますか?
受取人として特定の相続人や単に「相続人」と指定されていれば、相続放棄しても当該個人や相続人は保険金を受け取ることができます。受取人が「被相続人」(=故人)となっている場合は受け取ることができません。
相続放棄をして実家だけを相続することはできますか?
できません。相続放棄は故人の全ての財産の相続を放棄することなので特定のものだけを相続することはできません。ただし、全員が相続放棄して相続財産管理人が選された場合、相続財産管理人と抵当権者双方と協議により任意売却で家を買取れる可能性はあります。
また、どうしても家を保持したい場合は、相続放棄ではなく限定承認をすれば、借金を相続することなく家を買う(先買権)ことができます。
相続放棄した後に取消すことはできますか?
基本的にはできないとお考え下さい。
ただし、詐欺や強迫で放棄した場合など、特別な事情があるときは取消しが認められることがありますが、簡単ではありません。
相続放棄が成立すれば安心できますか?
家庭裁判所に受理してもらい成立すれば、基本的には大丈夫とお考え下さい。
ただし、相続放棄手続き前や成立後に遺産に対して何らかの行為(相続財産の処分行為)をしていた場合、債権者から相続放棄無効の訴えを起こされる場合があり、債権者の主張が認められてしまうと成立した相続放棄は無効となり相続人として故人の借金を背負う事になってしまいます。
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故人の入院費・医療費を請求された、支払っても相続放棄に影響しません?
入院費用、医療費は故人に対する請求なので、相続放棄をする方に支払う義務はありません。また、故人の財産から入院費用等を支払うのも控えましょう。その支払い行為が相続人としての行為(財産の処分)としてとらえられ、相続放棄ができなくなる(無効になる)おそれがあります。
ただ、お世話になった病院に対して支払いを拒否することは遺族としてしのびない気持ちも理解できます。その時は、遺産には一切手を付けずにご自身のお金で支払うようにしましょう。
相続放棄した後に注意することはありますか?
相続放棄が家庭裁判所で受理され、相続放棄申述受理通知書が送られてきたら完了です。しかし、完了したと安心してこれくらいなら大丈夫だろうと、故人の後始末的なことをやってしまうと問題になることがあります。故人の財産から貸金を回収できない債権者が相続人としての行為をしたとして相続放棄無効の訴えを起こし、相続人から貸金を回収しようとすることがあります。例えば、故人が賃貸に住んでいたので大家さんから相続人に賃貸契約解除の合意を求められたりすることがあります。合意したからといって、その行為が相続人としての行為であり相続放棄が無効になるかは微妙ですが、安全を期して、合意はせずに大家さんに一方的に解除通告をしてもらうようにお願いする、これくらいの注意が必要です。
あと、自分が相続放棄したことで別の人が相続人になるような場合、できれば、その方に相続放棄した旨を連絡しましょう。相続権は相続放棄で移転します。子供全員が相続放棄すると故人の親が相続人なります、親が死亡していれば故人の兄弟姉妹が相続人になります。借金問題で相続放棄する場合、新たに相続人となる方も相続放棄手続きが必要になるでしょうから、知らせてあげると相手も助かると思います(通知する法的義務はありません)。

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