外国相続登記の注意点

故人所有の不動産を相続人名義に変更(相続登記)する場合、いろいろな書類を法務局に提出しなければいけません。

相続登記手続きには、故人の除籍謄本・戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、不動産を相続する方の住民票が必要です。

また、遺産分割協議書に基づき相続登記をするときは、相続人の実印と印鑑証明書が必要になります。

相続人が日本人で日本在住であれば、これらの書類は日本の役所で取得することができますが、海外に在住していたり、国際結婚等で日本国籍から離れていて取得できなければ、それに代わる書類を準備しなければいけません。

ここでは、代替としてどのような書類が必要になるかを解説します。

※日本国籍を離脱していても、日本での相続権は失いません。

登記原因証明情報として必要な書類

相続登記を申請するとき、その原因となる情報(相続があったことを証する書類)を提出することになります。

それらの情報(書類)を「登記原因証明情報」と言います。

書類は以下になります。

  • 故人の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本
  • 相続人の戸籍謄本
  • 遺産分割協議による場合は、遺産分割協議書(実印)と印鑑証明書

相続人の戸籍謄本

相続人が海外に在住していても、 日本国籍であれば戸籍は失わないので日本の役所から取得することができます。

例えば、外国の方と結婚しても日本国籍を保有したままであれば戸籍を失うことはありません。

ただし、戸籍の筆頭者でなければ今の戸籍から抜けて自身を筆頭者とする新たな戸籍が作成されることになります。

配偶者である外国人パートナーが戸籍に入るということはできませんが(日本人でないので戸籍は作成できない)、作成されませんが、婚姻した事実としてその方の氏名、生年月日、国籍が戸籍に記載されます。

相続人が外国籍

相続人が外国籍であれば(元日本人も含む)日本に戸籍はないので、それに代わる書類を準備しなければいけません。

そこで、出生証明書や婚姻証明書、死亡証明書、宣誓供述書等で相続人であることを証明することになります。

実務的にはこのような場合、宣誓供述書を代用することが多いです。

相続人の住民票に代わる書面

不動産を相続して新たな所有者となる方の住所を登記簿に記載しなければいけないので、申請手続きには住民票が必要です。

在留外国人や海外に在住している方もその住所地を登記簿に記載しなければいけないので、日本の住民票に代わる住所を証する書類を提出しなければいけません。

在留外国人でも90日を超えて日本に滞在することができる中長期在留者や特別永住者等であれば、外国人住民票が取得できます。

外国人住民票が発行できない外国人や外国法人、在外邦人に関しては、諸外国人の本国の身分証明書等で住民票として使用可能な書類 、宣誓供述書で代替することになります。

海外在住の日本人の住所証明情報

外国在住で日本国籍を保有している方であれば、在外公館で在留証明書をもらい代替することができます。

ただ、国によっては在外公館まで行くのに飛行機で行かなければいけない等、費用や時間の都合でいけないこともあります。

その場合は、その地域の公証人による宣誓供述書を作成することになります。

海外在住の外国人の住所証明情報

令和6年4月1日以降の海外在住の外国人の住所証明情報に関する規則が変更され、以下のいずれかの書類を住所証明情報として提出しなければいけません。

  1. 登記名義人となる者の本国または居住国の政府作成に係る住所を証する書面
  2. 登記名義人となる者の本国等の公証人の作成に係る住所を証明する書面で行う場合は、(パスポート)を所持しているときはパスポートの写しを、旅券を所持していない場合はその旨の上申書及び登記名義人となる者の本国等政府の作成に係る書面(政府発行の身分証明書)の写し

印鑑証明書に代わる書面

遺産分割協議に基づいて相続登記をする場合、実印のある遺産分割協議書に印鑑証明書を添付して法務局に提出することになります。

外国籍の方

日本に住民票があれば印鑑登録できるので、外国籍の方でも外国人住民票を取得できる中長期在留者であれば印鑑登録して印鑑証明書を取得できますが、住民票が取得できない方は現地の公証人によって署名証明書を作成することになります。

海外在住日本人

海外に居住している日本人は、日本に住所がないので印鑑証明書を取得することができません。

海外にある在外日本公館によっては、印鑑届出をすれば印鑑証明書の交付してくれることもあるので、居住する国の日本公館に確認します。

できない場合は、印鑑証明書に代えて署名証明書を提出することになります。

署名証明書は、公館担当者の面前で署名(遺産分割協議書に署名)および拇印を行い、本人による署名であることを証明するものになり、これを印鑑証明書に代わるものとして法務局に提出します。

公館までの移動や費用等に問題がある場合、居住地近隣の公証人等に「自己の署名に関する宣誓供述書」を認証してもらい、印鑑証明書に代えることも可能です。

また、日本に一時帰国している間に日本の公証人に署名証明書を作成してもらうこともできます。