遺言書がない場合、相続人間で遺産分割協議をして遺産の処分方法を決め、その内容を遺産分割協議書にしてそれぞれが記名(署名)押印すれば、その処分内容は法的に有効になります。
しかし、その有効性は相続人間だけのものであり、その他の人(第三者)に対して遺産分割協議の内容を主張するには登記しなければいけません。
相続登記の放置
不動産を相続により取得した場合、登記することで新たな所有者(名義人)となったことを公に示す(公示)ことになります。
そして、登記で一番重要なことは、権利の順番を確保することにあります。
登記には申請した順に番号が付き、若い番号の権利が優先されます。
Aさんが遺産分割協議である土地を取得した場合、その相続登記をする前に第三者が何らかの権利の登記をすると、その登記はAさんの相続登記より優先されます。
権利を失うことも
- 土地の所有者であるAさんが亡くなり、相続人は子Bさん、Cさんの2人。
- B、Cさんは遺産分割協議をしてBさんが土地を相続することで合意したが、Bさんはすぐに相続登記をしなかった。
- Cさんには滞納している借金があり、債権者はCさんの財産から貸金を回収しようと検討。
債権者はCさんがAさんの相続人でありAさん名義の土地がまだ相続登記されていないことに着目した。
- 債権者は当該土地を法定相続分に従ってCさんに代わってB、Cさんの持分を各1/2として相続登記をした。
※債権者は差押えを目的としてB、Cさんに黙って単独でBCさんの相続登記(代位登記)をすることができます。
- 相続登記と同時にCさんの持分1/2を差押え、その旨の登記がされた。
この場合、残念ながらBさんは「土地は全部私が相続しているので差押えを解除して下さい」とCさんの債権者に主張できません。
不動産の権利は先に「登記」をした者が勝ちます。
Bさんがすぐに相続登記をしていれば債権者は差押えすることはできませんでした。
債権者に差押えを解除してもらうにはCさんの借金の返済が必要になるでしょう。
上記のような場合、Cさんが相続放棄をしていれば、Bさんは相続登記をしていなくてもCさんの債権者に対抗することができます。
相続放棄の効果は相続開始時に遡るので、CさんはAさんの相続人でなくAさんの土地に何らの権利を有することがありません。
ただし、差押えの登記を抹消するには債権者の承諾書が必要になります。
承諾書をもらえなければ、裁判をして裁判所に抹消の許可をもらわなければいけなくなり大きな負担となってしまいます。
このことからも、「登記」は非常に重要なものとなります。