有限会社を株式会社へ

2006年に会社法が改正され、改正法施行に伴って有限会社制度は廃止されました。
改正後は有限会社を設立することができなくなりましたが、既存の有限会社に対しては経過措置として「特例有限会社」として存続することが認められました。
よって、現在も特例有限会社(以下、有限会社と言う)は存在しています。

有限会社には株式会社にはないメリットがあるので有限会社のまま継続されていることも多いです(※1)。
しかし、「有限会社」は現在の会社法では通常の会社形態とはされていないので、販路拡大等の対外的営業が必要な会社は相手に旧式の会社との印象を持たれてしまうおそれもあります。

会社が成長し更なる成長を目指すためや、現在の会社法に則した会社組織にするため等の目的で有限会社から社会的に認知度が高い株式会社に組織変更することがあります。

手続としては、既存の有限会社を解散して新たな株式会社を設立することになりますが、別々に手続きをするのではなく一緒に行います。
有限会社の財産はもとより登記記録も株式会社に引き継がれます。

※1:有限会社を名乗る会社は、会社法改正前に設立された会社で少なくとも16年以上の営業実績がある会社として認知されると捉えることもできるので、敢て、有限会社のまま存続し続けるのも一つの戦略と言えます。また、役員に任期期間の制限がなく同じ方が役員でいる間は何十年経過しても再任決議や登記の必要がありません。

変更手続き

有限会社は、定款を変更してその商号中に株式会社という文字を用いる商号の変更を行い、登記をすることによってその効力を生ずる(株式会社としての効力が生じる)と会社法に規定されています。

定款の変更をする株主総会の決議をしたときは、2週間以内に本店の所在地において有限会社については解散登記を、商号の変更後の株式会社については設立の登記をしなければならないとされています。

このように、有限会社から株式会社に移行するときは、「有限会社の商号を変更して株式会社に移行(設立)する」「有限会社を解散する」という2つの手続をします。

有限会社の商号を変更して株式会社に移行

有限会社を株式会社に移行するには、株主総会(以下、変更総会と呼ぶ)を開催して定款を変更する等の決議をします。

有限会社の定款の変更は、株主総会特別決議によります。
有限会社の特別決議は株式会社とは異なり、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合はその割合以上)であって、当該株主の議決権の4分の3以上の賛成が必要です(株式会社は3分の2以上)。

定款の変更ではありますが、変更される定款は株式会社としての定款になります(※2)(株式会社設立時の定款作成についてはこちらを参照下さい。)。

※2:株式会社としての定款は、株式会社が成立したときから有効となります。公証人による認証は必要ありません。

役員の任期について

有限会社に役員の任期期間に制限はありませんが、株式会社には会社法上期間制限があります。
対して株式会社の役員には任期期間の制限があります。

取締役に関しては、公開会社であれば選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結時まで、非公開会社は2年が10年に伸長されます。

株式会社に移行すれば、役員に任期期間が設定されます。
定款に任期期間を規定しなければ、取締役の任期期間は2年になります。

有限会社が株式会社に移行する場合、取締役もそのまま株式会社の取締役として就任することが多いです(新たな人を変更総会で取締役に予選することも可)。
就任した取締役には任期期間の制限がかかりますが、任期期間は有限会社からの任期を引き継いで計算されることになります(有限会社の時に就任した日を起算点とする)。

有限会社の取締役には15年、20年と長期間在任している方も多く、その方たちは株式会社に移行した時点で株式会社における任期期間(最長10年)を超えているので任期満了により退任することになります。

取締役全員が任期満了になると移行後の株式会社に取締役がいなくなるので、変更総会で移行後の会社の取締役を選任(予選)(※3)することになります。

※3:選任しなかった場合、従前の有限会社時の取締役が株式会社の「権利義務取締役」となります(権利義務取締役についての詳細はこちら)。

代表取締役の選定

新たに移行・設立する株式会社は取締役会を置く会社か置かない会社のどちらかになります。

取締役会を置く会社とする場合、代表取締役は取締役会決議で選定されますが、変更総会開催時点で新会社は存在していなく、当然に取締役会も存在しないので取締役会決議で代表取締役を選定することはできません。

そこで、新会社の代表取締役は、新会社の定款の附則に代表取締役の氏名を直接記載するか、変更総会で定款に代表取締役を株主総会で選定する旨を設けた上、代表取締役を選定(予選)します。

取締役会を置かない会社が特定の者を代表取締役とする場合(※4)、定款の附則に代表取締役の氏名を記載するか、代表取締役を取締役の互選で決定する旨の定款規定がある有限会社であれば、現取締役の互選で代表取締役を選定(予選)することができます。
ただし、予選できるのは、互選した有限会社の取締役と成立後の株式会社の取締役が全く同じメンバーであることが必要です。

※4:特定しない場合、取締役全員が代表取締役になります。

登記申請

株式会社への移行の登記は、株式会社の設立登記とほぼ同じです(「登記の事由」や「登記記録に関する事項」欄等、記載方法が異なる部分はあります。)。

「登記すべき事項」欄には、商号、本店、公告をする方法、会社成立の年月日(有限会社の設立年月日)、目的等々を記載していきます。

登記の事由は「〇年〇月〇日商号変更による設立」となります。
〇年〇月〇日は、変更した株主総会決議の日になります。

申請書と同時に、添付書類として株主総会議事録、株主リスト、定款やケースによっては、(代表)取締役の就任承諾書、代表取締役を予選した取締役の互選書、互選の定めのある定款等々を提出します。

登録免許税は資本金額の1.5/1000(直前の資本金を超える部分は7/1000)、最低3万円です。

有限会社の解散

通常、会社が解散する場合、債権者関連の手続等が必要になりますが、このケースでは全て株式会社に引き継がれますので、解散のための特別な手続きはありません。

「商号変更による解散」を登記事由とする解散申請書を商号変更による設立の登記申請と一緒に法務局に提出します。
添付書類は必要ありません。
登録免許税は3万円になります。

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