相続放棄

未成年者も当然に相続人になるので、相続放棄をするのであれば家庭裁判所での手続きが必要になります。

以前は20歳が成年年齢でしたが、民法が改正され現在は18歳が成年年齢になっているので、18歳未満であれば未成年者になります。

未成年者の相続放棄

相続放棄は法律行為になるので、未成年者が相続放棄をするときは未成年者自身ではなく親権者(法定代理人)が手続きを行うことになります。

ただし、例えば、父が亡くなり子が相続人である場合、親権者である母も相続人になるので子の親権者として相続放棄をすることはできません。

これは、母も子も同じ相続人であり、子が相続放棄すればその分母の相続分が増えるという関係(利益相反関係)になるので、この場合は家庭裁判所に子のために特別代理人を選任してもらうことになります。

子が複数人いる場合も同様で、それぞれに特別代理人を就ける必要があります。

特別代理人の要否は外形的に決められるので、父親の借金を全部母親が引き受け子供たちには借金を背負わせないために相続放棄させる、といったように子供たちには一見不利益がないようなケースでも特別代理人が必要です。

しかし、利益相反関係にならなければ問題ないので、母が先に(又は子と同時に)相続放棄をすれば、子の親権者として相続放棄をすることができます。

相続放棄の期間

相続放棄の手続き期間には制限があり、自分に相続があったことを知ってから3か月以内(熟慮期間)に家庭裁判所に手続きを行う必要があります。

この期間を経過してしまうと、基本的に相続放棄はできません。

未成年の場合は、本人に手続き能力がないので、代わりにする親権者(法定代理人)が本人に相続があったことを知ってから3か月となります。

離婚との関係

父母が婚姻状態にある場合、父の死亡により母は、自身や未成年者である子の相続放棄についてすぐに検討できるでしょうが、離婚している場合はそうもいきません。

母自身は離婚により元夫の相続人ではなくなり、子供だけが相続人になります。

離婚により元夫、その家族とは疎遠になっていることも多く、かなり時間が経って元夫が亡くなった事実を知ることになるかもしれません。

また、知ったとしても、元夫がどうのような経済状態にあったのか把握していないでしょうから、子供のためと思って元夫の遺産を相続させることを安易に決めてしまうと大きなトラブルに陥るおそれがあります。

相続後に元夫に大きな借金があることが分かると、子供に大きな負担を背負わせる最悪に結果になります。

長期に渡って子供を連れて別居しているような場合も元夫の経済状態を知らないでしょうから同様です。

自身や子供のためにも、慎重な判断が必要になります。

未成年の子の手続き期間制限

過去において、未成年の子の相続放棄が争われた事例があります。

3ヶ月の期間が争われる場合、その起算点、いつから3ヶ月がカウントされるのかが争点になります。

妻(B)が子供(未成年含む3人)を連れて実家に帰りそのまま別居状態が続き、約13年後に夫が亡くなったケースでの相続放棄です。

このケースは、夫(A)は借主ではなく連帯保証人(他にXも連帯保証人)でした。

Xは夫が亡くなったときに、その妻に夫が連帯保証人になっていることを通知していました。

その3年後、Xが連帯保証人として弁済することになり、Xが夫の相続人である妻と子供たちを相手に負担分を支払うよう訴訟を起こしました。

訴えられたことで、妻たちはすぐに相続放棄の手続きを行い家庭裁判所では認めてもらっていました。

Xとの裁判では、相続放棄期間の起算点が夫が死亡したときにXが妻に保証債務の存在を伝えた日か、Xの訴えで保証債務を知ったときかが争点になりました。

また、妻は、夫とは事実上離婚しており保証債務が子供たちに責任を及ぶとは全く思わなかったとも主張しました。

地裁では、未成年の子供に関しては、妻がXから夫の保証債務について連絡を受けた際、保証債務が子供に相続されれるとの説明もなく妻自身もそのように認識がなかったとして、夫が亡くなったときにXが妻に通知したことは熟慮期間の起算点にはならない、進行はしていないと判断して相続放棄を認めました。

しかし、高裁では、夫が死亡しすると妻と子が相続人になることが一般法常識であるので、未成年の子が相続放棄をする場合、親権者である妻が保証債務の存在を知ったときが熟慮期間の起算点であり、既に3年が経過しているので相続放棄はできないとしました。

また、直接Xから通知を受けていない他の成人の子に関しても、生前父とのかかわり方から見て何らかのプラスやマイナスの遺産があると考えてもおかしくなく、母から保証債務の存在を知り得たので、彼らに対しても起算点は母が通知を受けた日で既に熟慮期間が経過しているとして相続放棄を認めませんでした。