抵当権と相続
抵当権抹消申請時の抵当権者や所有者がお金を借りた当時の人であれば問題ありませんが、亡くなっていたり、
借りている期間が長い場合、その間に借りた方が亡くなる場合があります。
所有者に相続が生じた場合、抹消手続きが通常と少し異なるので注意が必要です。
所有者(抵当権設定者)が亡くなっている
抵当権を抹消する際、設定した時の不動産所有者が亡くなっている場合の申請はどうなるか。
抵当権が抹消した時(借入額を完済した時)と所有者が亡くなった時との関係で手続きの方法が異なります。
亡くなる前に完済していた
故人の生前中に完済しており抵当権は抹消できる状態にあったが、何らかの理由で抹消手続きをしないまま亡くなられてるようなケースがあります。
抵当権抹消事由が発生した後に相続が発生しているので、時系列的には抵当権の抹消をして、その後の相続登記をすることになりますが、相続登記をした後に抵当権を抹消することも可能です(実務的にはこちらのパターンが多い)。
抵当権を先に抹消する場合、抹消申請は抵当権者と相続人(複数人にいる場合は内1人でも可)と共同ですることになります。
申請書には「権利者」として担保不動産の所有者の名前を記載します。
相続登記はまだしていないので所有者は故人になりますが、故人が申請することはできないので故人に替わって相続人が申請することになり、
権利者欄には、以下のように記載します。
亡〇〇
上記相続人〇〇
遺言書で不動産の相続人が指定されている場合や遺産分割協議で当該不動産を相続する者が決まっている場合は、相続登記を先にして名義変更を行い、相続人が所有者として抵当権者と抵当権抹消申請するのが一般的です。
相続登記と抵当権抹消申請は連件(同時に)申請するので、1回の申請手続きで済みます。
亡くなった後に完済した
所有者が亡くなり相続人が担保不動産を相続すると同時に抵当権の債権も引き継ぎ、その後、相続人が完済した場合、相続人と抵当権者とで抹消申請を行います。
その前提として、担保不動産は相続人を名義人とする相続登記がされていることが必要です。
本来であれば、当該債権の債務者も相続人になっているので、登記上の債務者を故人から相続人に変更登記をすることが必要ですが、抹消する場合は、前提として債務者の変更登記を省略することが認められていますので、抹消の手続きのみで済みます。
必要書類
抵当権を抹消するのは、申請書と各種書類が必要になります。
申請権利者側である所有者は特に必要な書類はありません、ただし、相続人によって申請する場合は相続人であることを証する戸籍謄本が必要になります。
申請に重要な書類は抵当権者側が準備することになります。
また、抵当権抹消事由が生じた日と抵当権者が亡くなった日や合併した日の前後で手続きや必要書類が異なるので、詳細は抵当権抹消と抵当権者の相続で説明します。