不動産を何らかの事情で共同で所有(共有)することがあります。
資金の都合により共同で購入した、相続の際に兄弟姉妹の共有として相続登記した、親が共有で不動産を保有していたので相続で必然的に共有になった等々。
管理方法や処分をする際は共有者間で意見を調整しなければいけないので、意見が合わないともめることになります。
また、共有者が亡くなるとその相続人が新たな共有者となり、相続人も増えるし、益々意見調整が難しくなるので、司法書士の立場としては共有で不動産を保有することはおススメしません。
ここでは、すでに共有状態になっている場合、裁判によってその状態を解消する方法をご説明します。
裁判による共有解消
協議により共有状態を解消するのが一番です。
一番簡単なのは、売却して代金を持分に従って分ける、いわゆる「換価分割」になります。
ただし、買い手が見つからない、共有者の中に保有し続けたい人がいる、共有状態を望んでいて売却することに応じない、などいろいろな理由で分割協議ができないこともあります。
当事者間の協議で話がまとまらない場合、最終的に裁判所に決めてもらう、ということになります。
このような裁判を「共有物分割請求訴訟」といいます。
民法256,258条には、以下のように規定されています。
第256条
- 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
- 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から5年を超えることができない。
第258条
- 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
- 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
1.共有物の現物を分割する方法
2.共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法 - 前項に規定する方法により、共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させる恐れがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
- 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。
いつでも分割請求できる
民法256条にあるように、共有者はいつでも単独で他の共有者に対して共有不動産を分割するよう請求することができます。(5年間は分割しないとする契約がある場合は除く)
請求内容としては、実際に現物の分割(分筆)請求をするか、土地が狭かったり、家であれば現物を分割することはできないので、自分の持ち分を買い取って欲しい、相手の持ち分を買い取らせてほしい、売って持分相当額が欲しい、というような内容になります。
うまく話しがまとまれば良いのですが、現物を分割するにしてもどのように線を引くかで合意するには容易ではありません。
誰かが買い取るにしても、簡単には買取価格は決まらないでしょう。
このように、当事者間の協議で決めることができない場合は、最終手段として裁判所に決めてもらうことになります。
提訴
相手側と分割協議をしたがまとまらない、または協議にすら応じない、というような場合、裁判所に提訴することで解決を図ることになります。
共有者が複数人の場合、協議に応じている人、協議内容に賛成している人も含めて「全員」を相手方(被告)として提訴しなければいけません(固有必要的共同訴訟)。
裁判所は、法律で規定されているように、現物分割、価格賠償、競売分割の方法を検討することになります。
決める判断としては、過去、最高裁が以下のように示しています(要約)。
「共有物の性質及び形状や共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値等々を総合的に考慮し、特定の共有者に取得させるのが相当で、かつ、その価格が適正に評価され、共有物を取得する者に支払能力があって、他の者に持分の価格を取得させても共有者間の実質的公平を害しないときは、1人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法による分割をすることも許される」
共有物分割訴訟の場合、持分買取、持分買取らせ、いわゆる価格賠償が多いです。
判例にあるように、誰が取得するか、持分の価格はいくらにするか、等はいろいろな背景によって判断されることになります。
実質的公平を遂行できないと判断した場合は、競売によって強制的に換価処理される場合もあります。
訴えの内容
どのようのに分割するかは裁判所が決定しますが、どのように分割して欲しいかを原告として求めることになります。
希望する分割方法を「請求の趣旨」として訴状に記載します。
現物分割であれば、希望する分割方法を示して、この部分は原告、この部分は被告の所有として欲しい旨の請求をすることになります。
共有部分を全部取得して単独での所有を望むのであれば、単独で所有すること、被告に持ち分相当額として〇円を支払う旨を記載します。
判決
いろいろな形で共有物分割請求がされますが、裁判所は原告の希望する方法に沿う必要はなく、当事者の主張を踏まえて判断します。
現物分割であれば、「〇〇を原告の所有とする。〇〇を被告の所有とする」、価格賠償であれば、「〇〇が原告が所有する、原告は被告に〇円を支払え」というような判決が出されます。
判決と登記
判決が確定すれば、その内容とおりの分割になります。
例えば、共有土地を1人が単独で保有する判決が出て確定すれば、その通りの所有状態になります。
しかし、その状態が自動的に登記に反映されるわけではなく、当事者が申請して登記しなければいけません。
例えば、共有者3人の土地を3っに分筆してそれぞれが分筆された土地を単独で所有する判決が出された場合、まず、分筆が必要になります。
分筆は原則として共有者全員で申請しますが、判決があれば原告が他者を代位して1人で行うこともできます。
どのように分筆されるかというと、いきなり判決に従って分筆された土地を各自単独所有とする登記ではなく、それぞれが共有状態で分筆され、その後に単独所有となる登記がされます。
ABC共有の土地の場合、ABC共有状態で3っの土地に分筆された後、甲土地をAの単独所有にするには、甲土地のBC持分をAに移転登記することになります。
つまり、分筆登記と持分移転登記が必要になります。
説明した通り、分筆登記は単独でも行えるのですが、移転登記はそうはいきません。
先に述べた判決は、単に土地を分割してそれぞれが単独で所有することを決めているだけなので、この判決では単独で申請することはできず全員が共同で申請する必要があります。
相手が共同申請に協力してくれなければ、再度、移転登記手続きを求める訴訟を提起しなければいけなくなります。
そこで、共有物分割請求を求める際に、所有権移転登記手続きも求める請求をしておくことが重要になります。
例えば、「請求の趣旨」に登記手続き条項として「被告は、原告に対し、分割後の甲土地について共有物分割を原因とする被告持分全部移転登記手続をせよ。」と記載します。
これにより、原告は単独で被告の持ち分を自分名義に移転する登記申請ができるようになります。





