抵当権抹消

古い抵当権の抹消

不動産の登記簿に古い抵当権が残っている場合があります。

理由としては、

  • 完済したのに抹消手続きを放置している。
  • 完済しないまま債権が放置され、抵当権もそのままになっている。
  • 土地を相続した時からついている明治や大正、昭和の時代の抵当権で、何も対処していない。

等々があげられます。

現状、何も問題なければ、すぐに何かしなければいけない、という事はありませんが、売却する場合はこの抵当権が問題になります。

通常、特別な状況でない限り、買主は抵当権等の担保権がない土地の購入を希望するので、売却するには事前に抵当権を抹消しておかなければいけません。

抵当権の抹消手続きは、基本的に抵当権者と抵当権設定者(不動産所有者)が共同して行います。
しかし、長く放置していると、抵当権者が死亡、行方不明になっていたりして、共同で抹消手続きをすることができないケースが出てきます。

このような場合、特別な手続きをして設定者が単独で手続きをすることになりますが、結構、面倒な手続きが必要です。

そこで、民法改正に伴い不動産登記法も改正され、抹消手続きが簡略化されます。
ここでは、抵当権者が会社(法人)であるが、既に解散していて会社の代表者や清算人と連絡がつかない、行方不明、亡くなっていて、共同で手続きできない場合の抹消手続きに関する改正を解説します。

解散した会社(法人)の担保権の抹消

現行法では、古い抵当権については、いわゆる休眠担保権の抹消手続きにおいて抹消することがありますが、債権額や利息の全額の供託が必要だったりして簡単ではありません。

そこで、会社(法人)としての実質がない法人を登記名義人として長期に残存している抵当権(担保権)の抹消手続を簡略化するための法律が新たに設けられます。
※対象となるものは、抵当権の他、地上権、賃借権、質権等があります。ただし、具体的な申請手続き(提出書類等)に違いがあります。

適用条件

新しい法律で、解散した法人名義の抵当権を抹消するには、以下の要件があります。

  1. 法人が解散した日から30年が経過している。
  2. 規定されている方法で調査しても清算人の所在が判明しないため、共同で抹消の手続ができない。
  3. 被担保債権の弁済期から30年が経過している。

「解散した法人」には、解散手続きを経ているものだけでなく、休眠会社または休眠法人として解散したものとみなされている、法律による廃止等に伴い解散することとされた法人も含まれます。

解散した法人は、清算手続きを行います。
清算手続きには、債権債務の清算も含まれており、抵当権の被担保債権はこの手続きにおいて処理されることになるのですが、それをせずに30年間放置していることからして、もはや担保権の行使の意思は無いと推認されます。

また、債権を行使できる時から10年(行使できることを知ってから5年)で時効により消滅すること、及び、時効の完成猶予や更新の可能性も考慮し、弁済期から30年もの期間が経過していれば、担保権が時効で消滅している可能性が極めて高く、弁済期から30年経過していることが要件とされました。

清算人の調査方法

具体的な調査方法として、商業登記簿に記載されている清算人の住所地に住民票があるかの確認、戸籍謄本、戸籍の附票による現住所・転居先の調査、判明している住所に宛てた郵便物の到達確認等を行い、それをした結果を提出(不在住証明書、不在籍証明書、不到達証明書等)します。

現地での聴き取り調査までは求められていないようです。

登記簿、閉鎖登記簿もなく存在自体を確認できない場合

このような会社は、登記簿自体がないので、解散して30年経過とする要件に合致しているか分かりません。

しかし、解散登記をして10年経過すれば登記記録を閉鎖することができ、閉鎖記録の保存期間は20年であることを考慮すると、こうのような会社は解散してから既に30年経過している可能性が高いと言えるので、このような会社が抵当権者であっても、適用できると考えられます。

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