遠く離れた実家に親が1人で暮らしていたが、その親が亡くなり実家を相続することに。

仕事もあり、家族で暮らしている家もあるので、この先実家を活用することもなくどう処分するか、で悩まれている方も多いです。

市場価値はある家であれば、売ることで処分できますが、過疎地であったり、場所が良くなかったりして買い手がいないような場合は、空き家として放置状態になる可能性が高くなってしまいます。

テレビでも多く報道されていますが、現在、日本には多くの空家が存在しており社会問題となっています。

そこで国も空家対策として新たな法律を制定しています。

ここでは、国の空き家対策について法律の面から見ていきます。

空家等対策の推進に関する特別措置法

長年放置されボロボロになって今にも倒壊しそうな空家の存在は、隣地者はもちろん周辺地域の住民にとって大きな悩みになっています。

台風等で瓦や部材が周辺に飛び散ったり、失火の心配、倒壊すれば周辺に大きな被害をもたらすでしょう。

そこで、国はこのような空家に関する対策として「空家等対策の推進に関する特別措置法」を制定しました。

この法律は簡単に言うと、空き家の所有者に空き家を適切に管理させるための法律になります。

市町村長が所有者の確認、空き家調査(立ち入り調査も含む)を行い、「特定空家」とされた場合は、除却、修繕、立木竹の伐採等の措置の助言又は指導、勧告、命令が可能となります。

所有者がこれらの指導等に従わない場合は、行政代執行による強制執行も可能となります。

空き家とは

特別措置法では空家については、「空家等とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。」と定義されています。

特定空家とは

特別措置法では、「特定空家等とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。」と規定されています。

実家を相続した当初は直近まで親が住んでいたのでそこまでひどい状態ではないでしょうから「空家等」に分類されるでしょうが、そのまま放置していると経年劣化により特定空家等に認定されるおそれが高くなります。

特定空家と認定されるとどうなる

自分が所有している家が市町村から特定空家と認定されたら、以下のように指導から命令、代執行までの流れになります。

  1. 市町村長は特定空家等の所有者等に対し、除却、修繕、立木竹の伐採等の必要な措置をとるよう助言又は指導をする。
  2. 助言又は指導をしても状態が改善されないと認めるときは、相当の猶予期限を付けて、除却、修繕、立木竹の伐採等の必要な措置をとることを勧告する。
  3. 勧告を受けた者が正当な理由がなくて措置をとらなかったら、特に必要があると認めるときは、その者に相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずる
    この命令に違反した者は、50万円以下の過料に処せられるおそれがあります。
  4. 命ぜられた者が措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法の定めにより自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。

このように、最初は助言という優しい言葉ではありますが、従わなければ最終的に行政代執行(行政が本人に代わって措置を取る)までいくことになります。

※条文上は、助言、指導、勧告、命令、行政執行について「できる」としているので、特定空家になったからといって必ず上記のような流れになるわけではありません。

固定資産税

市町村長が特定空家等の所有者等に対して必要な措置をとることを勧告した場合は、当該特定空家等に係る敷地について固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外されることになります。

人の居住用家屋の敷地に関しては、特例として通常の課税標準の額の1/3に、200㎡以下の小規模住宅用地は1/6となっています。

しかし、特定空家に認定され、「勧告」されると、この特例が解除され、通常の税額が課せられることになります。

優遇措置

以上のように、新しい特別措置法は、所有者に空家の維持管理の責任を負わせる厳しい法律になっていますが、その一方で優遇措置も設けています。

譲渡所得の特別控除

国は空き家を売りやすく、流通を活発にするために、相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人が居住していた家屋(※1)を相続人が、当該家屋(耐震性のない場合は耐震リフォームをしたものに限り、その敷地を含む。)又は取壊し後の土地を譲渡した場合には、当該家屋又は土地の譲渡所得から3,000万円が特別控除されます。

※1.昭和56年5月31日以前に建築された家屋に限る。