相続における遺産分割は、基本的に遺言書、遺言書がない場合は遺産分割協議に従って決めていきます。

このように決まってはいますが、「争族」という言葉もあるように決めていく過程で相続人間で争いになってしまうことも少なくありません。

日ごろ仲の良い家族であっても、相続が元で疎遠、絶縁になってしまうこともあります。

自分達家族は大丈夫、、、と思っていても、各自の環境は時間の経過と共に変化し、特に経済的環境の変化が大きく影響します。
経済的に余裕があれば気にしないことでも、余裕がなければちょっとの違いにもカリカリと意見を主張し、互いにギスギスした関係になってしまうかもしれません。

では、何が原因で争いなってしまうか。
その原因についてご説明します。

争いの原因

相続が争族になってしまう原因として、「複雑な家族関係」「特別受益」「寄与分」「遺留分」の4つ観点で考えていきます。

複雑な家族関係

元々から親子関係、兄弟姉妹関係が良くない場合、当事者が遺産分割協議をすればもめてしまうおそれが高くなります。

故人が再婚で、前妻との間に子供がいる場合も、遺産分割協議は当事者にとってかなり負担になります(連れ子婚の相続についての詳細はこちら)。

ましてや、亡くなって戸籍を調査したら婚外子(認知した子)の存在が判明した、というような場合は、相続手続きは大変になるでしょう(婚外子がいる場合の相続についての詳細はこちら)。

また、最近、婚姻届けを提出せず「事実婚(内縁関係)」として生活を共にするご夫婦もおられますが、相続に関しては特に注意が必要です(事実婚夫婦の相続についての詳細はこちら)。

このような複雑な家族関係にある人が何も対策をせずに亡くなられてしまうと、残された家族(法定相続人)は大きな負担を強いられることになりかねません。

複雑な関係にある者同士が遺産分割について協議しなくて済むように、適切な遺言書を残しておくことが大切です。

特別受益

特別受益とは、故人が特定の相続人に生前中に贈与又は遺贈したことで、特定の相続人が受けた特別な利益のことです。
そして、この特別受益が争族の原因となることが多いです。

各相続人の相続割合は民法で規定されています。

相続人が子2人の場合、相続割合は同じで基本的に1/2の割合で各相続人は遺産を相続することになります。
遺産を分ける瞬間だけを見れば平等ですが、過去にさかのぼるとそうも言えない状況が出てきます。

故人(母)、相続人が息子AとBの2人のケース

特別受益問題1

特別受益問題2
兄Aは、結婚して家を購入するときに母から500万円を援助してもらっていました。
一方、弟Bは未婚でずっと賃貸住宅に住んでおり、母からは何の援助もしてもらっていません。

特別受益問題3
母が亡くなり兄弟で遺産分割の話し合いをしたとき、兄は法定相続割合に従って均等に各2分の1で相続しようと主張しました。

これで兄弟間の話し合いがまとまれば何の問題もありません。
各2分の1で遺産分割すれば済みます。

しかし、上記のような場合、弟Bとしては母から500万円貰っている兄と何ももらっていない自分とが同じ割合であることに不公平を感じることもあるでしょう。
この不公平感が争族の原因となります。

そこで、民法は特定の相続人が故人から受けた生前贈与、遺贈を相続財産に組み入れて遺産分割することを認めています。

民法903条には
「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」とあります。

条文に照らすと、
特別受益問題4
母の遺産に兄Aに生前贈与された500万円を加えた額を法定相続割合に従ってAB各2分の1分割します。

特別受益問題5
そして、兄Aの2分の1から生前贈与された500万円を控除(差し引く)します。
控除された額が兄Aの相続分、控除されない額が弟Bの相続分となり、Bが兄より500万円多く相続することで実質的にABの相続が公平になります。

例えば、母の遺産が2,000万円であった場合、まず、2,000万円にAに贈与した500万円を加算して2,500万円とします。

 

これを法定相続割合で分割するとAB各1,250万円となります。
遺産の2,000万円からAは750万円(1,250万円ー500万円)を、Bは1,250万円を相続することになります。

寄与分

寄与分とは、特定の相続人が故人の財産維持又は増加に寄与した部分のことを言います。
そして、この寄与分をめぐって争族になることがあります。

故人(母)、相続人が息子AとBの2人のケース

特別受益問題1

寄与分3
母は家が古く雨漏り等あちこちに不具合が出ているのでリフォームをしたいと言い、いくらか出してくれないかと子供たちに頼みました。
兄Aは子供の教育費が大変で出せないと言い、独身の弟Bが預金から300万円を母に渡しました。

特別受益問題3
母が亡くなり兄弟で遺産分割協議をした際、兄は法定相続割合に従って均等に各2分の1で相続しようと主張しました。
しかし、弟Bとしては母のために300万円を出したことで母の預金は300万円減ることはなかったのに、何も出していない兄と均等に分割することは不公平に感じるでしょう。

民法904条で、「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。」と規定されています。

条文に照らすと、
寄与分
母の遺産から弟Bが渡した300万円を控除(差し引く)した額を法定相続割合に従って各2分の1に分割します。

寄与分2
そして、兄Aはそのまま2分の1を相続、弟Bは2分の1に最初に控除した300万円を加算した分を相続します。
これにより、BはAより300万円多く遺産から相続することになり実質的な均等になります。

例えば、母の遺産が2,000万円であった場合、まず、2,000万円にBが出した300万円を控除して1,700万円とします。

これを法定相続割合で分割するとAB各850万円となります。
遺産の2,000万円からAは850万円を、Bは1,150万円(850万円+300万円)を相続することになります。

問題点

上記に示した特別受益や寄与分は、金額もはっきりしているいわば典型的な事例です。

しかし、現実はなかなかこうはいきません。

相続トラブル

特別受益に関しては、あれをもらった、これをしてもらってと当事者間で何年も何十年も前のことを言い争うことになります。
記憶もあいまいでしょうし、金額も明確ではないでしょうからまとめるのは容易ではありません。

また、故人が特定の子に渡した金銭が全て特別受益に該当するわけではありません。
親による扶養の範囲内と判断されるようなものであれば、特別受益にはなりません。

上記の寄与分の事例は分かりやすく財産上の給付(金額の提供)にしましたが、寄与分でよく問題になるのが療養看護です。

例えば、相続人が姉妹の2人。

姉は母の家の近くに住んでいて認知症の母を毎日介護・看護していた。
妹は県外の遠い所に嫁いでいて年に1,2回程度様子を見に来る程度だった。

この状況で、母が亡くなって法定相続割合通りの2分の1の相続とした場合、自分の時間を使って母を看護した姉としては何もしていない妹と同じ相続額であることに不公平感を感じるかもしれません。

看護した部分を相続に反映して欲しいと望むケースもあり、反映させるか、反映させるとすればいくらか、でもめることになります。

※何らかの療養・看護をした場合、それが全て寄与分に該当する、というわけではありません。看護の内容が子であれば当然にする行為の範囲内であれば寄与分に該当しません。

遺留分

遺留分とは、民法で規定されている相続人として最低限の相続分です。

遺言書がなければ各相続人は法定相続割合をベースに全員で遺産の分割方法を決めていくことになります。

遺言書がある場合は遺言の内容に従って遺産分割が行われますが、遺言書の内容によっては特定の相続人の相続分が著しく少なかったり、一切相続させないと書かれている場合もあります。

これでは、同じ相続人という立場であるにも係わらず他の相続人と比べて大きな損失を被るので、民法では相続人に対して相続できる(請求できる)一定率の相続割合を規定しています。

この一定率の相続割合が「遺留分」です。
遺留分は「法定相続割合の半分」とお考え下さい(親のみが相続人である場合は3分の1)

例えば、相続人がABCの3人で遺言書に「財産は全部Aに相続させる」、「財産は全部W(相続人以外の者)に遺贈する」と書かれていても、相続人は自己の遺留分相当額を請求することができます。

配偶者のみ1/2

各相続人の遺留分割合
相続人構成 遺留分割合
配偶者+子 配偶者1/4、子1/4
配偶者+親 配偶者2/6、親1/6
子のみ 1/2
親のみ 1/3

※兄弟姉妹に遺留分は認められません。

遺産分割調停・審判

遺産分割で相続人間でもめるような状況になった場合、当事者で話し合ってまとめることが理想です。
互いの主張を貫き通していたら、まとまることはないでしょう。

互いに譲歩できるところは譲歩して合意することが大切です。

しかし、延々と互いに言い争いを続けてしまうと、憎しみあい、絶縁という最悪な状態になってしまうかもしれません。
そうなる前に、当事者間での話し合いでまとめるのが無理と思えば、すぐに次のステージに移るべきです。

考えられる手段としては、

  1. 話し合いを弁護士に任せる。
  2. 家庭裁判所に遺産分割調停を申立てる。

弁護士は任せれば、代理人として相手との交渉、交渉決裂で遺産分割調停・審判まで全てやってくれます。

費用を抑えたいのであれば、ご自身で家庭裁判所に遺産分割調停の申立てを行うこともできます。
調停では、対面で相手と協議するのではなく、調停委員と協議することになります。

調停委員に自分の主張を伝え、調停委員から相手の主張を聞くことになります。
調停委員は双方の主張を聞いた上で、互いに合意できるように調整してくれます。

合意できれば調停成立となりますが、合意できなければ自動的に審判に移行することになります。

審判は裁判官によって行われ、最終的に分割方法を裁判官が決定します(判決と同様)。
不服があれば、上級の高等裁判所で争うことになります。

司法書士は家庭裁判所案件での代理権はないので、依頼人の代理人として相手と交渉したり、家庭裁判所で調停委員と協議したりすることはできません。

ただし、裁判所提出書類の作成権限はあるので、ご自身で調停の申立をする場合、申立書や調停や審判で提出する「主張書面」や「上申書」の作成を司法書士に依頼することができます。

 

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