土地を売ることになって権利書を探したが見つからない。
保管してい場所に権利書がない。
昔は、火事になったら権利書だけは持って逃げろ、と言われていました。
土地や建物の権利書は、所有者であることの証明としてとても重要な書類です。
新たに不動産の所有者になったら「登記識別情報」(昔は登記済証)が法務局から所有者に対して交付されます。
この登記識別情報(又は登記済証)が一般的に「権利書」と呼ばれるものになり、この「権利書」が真の所有者である証となります。
よって、売却等で他者に名義を変更する場合、売主が真の所有者である証明として「権利書」を法務局に提出しなければいけません。
では、「権利書」を紛失してしまったらどうなるか?
売ることができなくなるのか?
結論を先に言うと、権利書が無くても登記手続きはできます。
ただし、特別な手続き、書類が必要になるので、余計な時間、手間、費用がかかってしまいます。
権利書がない場合の手続き
売買や贈与等での不動産の所有権の名義人変更で権利書がない場合、「事前通知」又は「本人確認情報」2っの方法で対処することになります。
事前通知
「事前通知」は、申請書に「紛失」等と権利書を提出できない事由を記載して、権利書(登記識別情報、又は登記済証)を提出しないで申請する方法です。
申請を受けた法務局は権利書による所有者確認ができないので、登記簿上に記載されている所有者の住所宛に申請が本当に所有者から申請されたものか、内容に間違いないか、を確認するための書類を送付します。
書類には申請された内容が記載れており、受け取った所有者は内容に間違いなければ確認のための印(申請書、又は委任状に押印した印)を押印して、発送日から2週間以内に返送します。
返送されなければ、申請は却下されることになります。
問題点
事前通知は、余分な費用がかからないので費用の面だけを考えれば使いやすい手続きです。
事前通知の最大の問題点は、登記とお金の移動が一致しないことです。
通常は、司法書士が登記申請に必要な書類があることを確認すると同時に代金の支払いを行い、その日に名義変更の登記手続きを行います。
しかし、事前通知を利用すると、代金の支払いと同時に名義変更手続きを行っても、後日、売主が事前通知に対応しなければ申請は却下され、最悪、買主は代金を支払ったが自分名義にできなかった、という事態が起こり得ます。
逆に、売主が事前通知に対応した後に支払うとしても、名義は買主に変更されたがお金を払ってくれない、という事態が起こり得ます。
つまり、よほど当事者間で信用しあっていない限り、事前通知は売買取引には使いずらい方法になります。
本人確認情報
「本人確認情報」とは、資格者である司法書士が、権利書のない対象不動産の所有者が当人であることを確認した」とする書類を申請書に添付して行う方法です。
「本人確認情報」が「権利書」の替わりになります。
司法書士が所有者と面談し、本人の身分確認(運転免許証、マイナンバーカード等)、不動産を取得した経緯、居住の有無、不動産に関連する書類確認(固定資産税納付書等)等々を調査し、その結果を「本人確認情報」として法務局に提出します。
法務局は、この「本人確認情報」を精査し、確認内容に問題ないと判断すれば、そのまま名義変更手続きを行います。
「本人確認情報」が「権利書」の替わりになり売買代金の授受と登記手続きが同時にできるので、通常、売買取引は「本人確認情報」で行います。
問題点
「本人確認情報」を利用することで、権利書が圧場合と同様に名義変更手続きと代金の授受が同時にできますが、書類作成費用がかかってしまいます。
「本人確認情報」は権利書なしに真の所有者であるとする情報なので、作成する司法書士の責任は重大になります。
そのため、時間をかけて調査をするので、費用もそれなりにかかります。
金額は状況によって大きく変わりますが、5~10万円程度の範囲内で作成されることが多く、信用たる背景、情報がある場合は3万円程度で収まることもあります。
いずれにしても、権利書があれば必要のない費用なので、権利書は大切に保管しておきましょう。