不動産を所有している方が亡くなると、通常、相続人が新たな所有者となり、その方の名前を名義人として相続登記を行います。
Aさんが亡くなり、その相続人Bさんが不動産を相続したら、名義はAさんからBさんへ「相続」を原因として所有権移転登記をして、当該不動産の名義Bさんにします。
しかし、相続に「数次相続」や「代襲相続」が絡むと、少しややこしくなります。
中間省略登記
Aさんが亡くなってBさんが相続人となったが、Aさんの相続登記をしないままBさんが亡くなり、Cさんが相続人になった、というように、第1の相続登記未了のまま第2の相続が発生した場合のことを「数次相続」と言います。
本来であれば、Aさん所有の不動産は相続人にであるBさん名義に相続登記され、その後、Bさんの相続人にであるCさんに相登記されることになります。
このように、名義はA⇒B、ついてB⇒Cと移転することになりますが、登記手続きではA⇒CへとBさんへの名義変更を省略することが認められています。
これを「中間省略登記」と言います。
これにより、登記手続きも1回で済みますことができます。
ただし、どんな場合でもこの中間省略登記が認められるのではなく、中間の相続が「単独相続」である場合に限られます。
例えば、Aが亡くなり相続人がB、Cで、B、C双方が亡くなり、Bの子DとCの子EがそれぞれB、Cの持分を相続する場合、中間にあたる相続がB、Cと単独ではないのでA⇒D、Eへと直接移転登記はできず、一旦、B、Cへと相続登記することが必要になります。
但し、亡くなっているB、Cへの相続登記の登録免許税は免税されます(令和7年3月31日まで)。
単独でなくても可能なケース
中間相続が当初単独でなくても、結果的に単独になれば中間省略登記が認められます。
故人Aの相続人がB、C、その後、Cが亡くなりその子Dが相続人の場合、Aの相続はBとDになります。
この場合、Bが相続放棄や、相続欠格、廃除で相続人でなくなれば、結果的に中間相続人はCのみとなるので、A⇒Dへの相続登記が可能になります。
また、相続人であるBとDが遺産分割協議をしてDが相続するとした場合も、中間省略登記が認められます。
※遺産分割協議でBとDの共有とした場合、AからBC名義に移転した後、C名義をD名義に移転しなければならず、A⇒B、Dといきなり相続登記することはできません。
登記申請の表記
中間省略をする場合、中間相続人を登記申請書に記載しなければいけません。
A⇒B⇒Cという相続で、A⇒Cへと移転登記を申請する場合、申請書に登記の原因、日付は、年月日B相続 年月日相続と記載します。
最初の日付はAがなく亡くなった日、次の日付はBが亡くなった日になります。
数次・代襲が絡んだ相続
「代襲相続」とは、被相続人により相続人が先に亡くなっていて、その相続人が亡くなった相続人に代わって被相続人の遺産を相続することを言います。
Aさん、その子供Bさん、Bさんの子供Cさん、代はA⇒B⇒Cですが、子Bさんが親Aさんより先に亡くなっている場合、Aさんが亡くなった時の相続人はBさんに代わってCさんになります。
この場合、Cさんを代襲相続人と呼びます。
Cさんは何ら問題なく相続人となりますが、代襲相続と先に説明した数次相続が重なった場合、遺産分割協議書の作成や相続手続きにおいて注意が必要になります。
事例
下図のよう相続人構成で、亡くなったAさん名義の不動産の相続手続きについて検討します。
番号は亡くなった順で、Bさんが亡くなり、次いでAさん、Cさんが亡くなっており、相続人であるDさんは代襲相続、Eさんは数次相続が生じていることになります。
遺言書があれば、その内容通りに相続手続きを行いますが、無ければ相続人であるDさんとEさんとで遺産分割協議をして処理します。
Aさん名義の不動産の取得方法としては、D、Eさんの共有、Dさん、又はEさんが単独で取得する3つケースが考えられます。
共有で相続
D、Eが共同でAさん名義の不動産を相続する場合、登記手続きは2回になります。
1回目はA⇒C、D名義に、次いで、C⇒E名義に変更します。
中間相続人が単独ではないので、A⇒Eへと直接変更することはできません。
D(又はE)が単独で相続
D又はEが単独で相続する場合、A⇒D(又はE)へと1回の登記申請で変更できます。
但し、代襲相続や数次相続が絡む場合、遺産分割協議書を作成する際、その書き方に注意が必要です。
「代襲相続」
代襲相続人Dが単独で相続する場合、DとEが遺産分割協議をしてDが不動産を取得する内容の協議書を作成します。
Aが亡くなった時点ですに亡くなっているBはAの相続人とはならずCが相続人(代襲相続人)なので、A⇒Cへと相続登記をします。
Cは通常の相続人と何ら変わらないので、遺産分割協議書を作成する際も「相続人」として表記しまう。
「数次相続」
Eが単独で相続する場合も、中間省略登記によりA⇒Eへと直接相続登記をします。
但し、この場合、不動産は実質的にはA⇒C⇒Eへと移転していることを示すために、遺産分割協議書にCの存在を表記しなければいけません。
遺産分割協議書には、「被相続人 A」「生年月日」「死亡年月日」「本籍」「最後の住所」を記載し、加えてCについても同様の記載をしますが、CはAの相続人でありEについては被相続人になるので、「相続人兼被相続人 C」と表記します。
また、協議者としてD、Eを遺産分割協議書に表記する際、Dは「相続人 D」、Eは「相続人兼Cの相続人 E」と記載することになります。