サブリース

一般個人の方がマンション・アパートを建て、建築会社や不動産管理会社が賃料を保証して一括管理運営するサブリース契約(賃料保証契約)という方式があります。

金融機関からの借入で賃貸マンション・アパートのオーナーとなった場合、家賃収入から返済をすることになるので、空室による収入減を心配せずに安定的に家賃収入を得ることができる家賃保証のあるサブリース契約を管理会社と結ばれる方も多いです。

安定収入という点ではメリットがありますが、近年、サブリースに関してトラブルが多くなっているのも事実です。

サブリース契約

サブリース契約とは、不動産管理会社がオーナーからマンション・アパートを一括で借上げし、入居者を募集して管理運営する形態です。

不動産会社は、オーナーとの間で設定した賃料と入居者との間で設定した賃料の差額や管理費用で利益を上げていきます。

通常、空室保証や滞納保証があるので、オーナーとしては賃料収入が多少低くなっても安定的に賃料を得られるので、借入に対する返済計画も立てやすくなるというメリットあります。

このように、オーナーにとって便利な契約形態ではありますが、近年サブリースをめぐってトラブルも発生しており、契約を途中解除、契約更新拒否を検討されるオーナーもおられます。

サブリース関連トラブル

サブリースをめぐるトラブルは、以下のように内容はさまざまです。

契約の際、当初の設定賃料に基づいた運用計画表を提示され、返済も大丈夫と思って借り入れたが、5年後に大幅に賃料減額を提示され、賃料収入だけでは足りずに手出ししなければいけなくなった。

管理費用を払ってるのに適切に管理されていない、請求される修理費用が相場よりかなり高額、免責期間(入居者が退去した場合の賃料免責期間)がかなり長く納得できない等々。

上記の中でも一番多いのは、賃料の減額でしょう。

設定された賃料で借入の返済計画をたてているので、減額率によってはオーナーにとって死活問題になります。※1

少しでもロスを小さくするためにサブリース契約を解約、更新拒否して、自分で管理することで管理費用を削減しようと考えるオーナーもいらっしゃいます。

この場合に問題になるのが、途中解約、更新を拒否することができるか、になります。

※1.近隣の実勢賃料よりかなり高く賃料を設定し、家賃保証があるので余裕で借入返済できるとアピールする会社があります。しかし、建設費用を大幅に上乗せした上に費用を切り詰め、そこで大きく差額を確保して一部を家賃保証分に充当し、契約更新時に一気に賃料を減額する、という手法をとったりする会社もあります。
サブリース会社が提示している賃料が実勢賃料を反映しているか、見た目をよくするために高く設定されていないか、自身でもしっかり調査することが重要です。

サブリースの解約・更新拒否の可否

サブリース会社による一括借上げは、オーナーとサブリース会社との賃貸借契約になります。※2

サブリース会社は、オーナーから借り上げた部屋を入居者に貸す、いわゆる転貸しすることになります。

オーナーとサブリース会社との関係は賃貸借関係になるので、当該契約には借地借家法が適用されることになります。

多く方がご存知のよに、借地借家法により借主は保護されており、貸主は簡単に借主を退去させる、つまり、賃貸借契約を中途解約したり、更新を拒否することができません。

解約・更新拒否をするには、「正当な理由」が必要になります。

※2.サブリースに関する裁判において「サブリース契約は賃貸借契約」と判断されるケースが多いですが、契約内容(空室保証がない等)によっては「建物管理及び賃料収受の委託を内容とする委任契約」と判断されたケースもあります。委任契約となれば、解除のハードルも下がります。

中途解約

現在契約中のサブリース契約を貸主側から解約することは非常に難しい、と言えます。

契約当初、貸主としては長期間一括借上げしてもらい安定的に賃料収入を得られるように、借主が簡単にサブリース契約を解約できないような解約条項を求めがちになります。

同じく、借主側もサブリースによって得る利益は主要な収入源なので、貸主が簡単に解約できないような契約条項を求めるでしょう。

例えば、サーブリース期間を長期間に設定し、その期間は中途解約できない、契約後20年間は中途解約できない、解約する場合は解約金として〇〇万円(高額)を支払う等々の、解約するのにハードルの高い条件を設定したりします。

このような状況で解約が認められる可能性がある場合として、相手側に契約を続行し得ない重大な背信行為等(正当な事由)があるようなケースです。

分かりやすところでは、支払うべき賃料を長期間滞納している、実際に行っていない架空の修理費用を請求され続けていた、契約内容に対して重大の違反行為や不正行為があった等々になります。

よって、サブリース会社から賃料の大幅が減額請求を受け、サブリース費用削減のため自分で管理したいことを理由に契約を中途解約することは、サブリース会社が解約を拒否し裁判で争いになった場合、認められることは難しいと言えます。

サブリース会社が中途解約に応じる場合でも、高額な違約金を請求されることになったりします。

最初の段階である客(建築主、貸主)としてサブリース会社と優位な立場で交渉できる時に、さまざまな事を想定して契約(解約条項・解約権留保特約)することが重要になります。

更新の拒否

中途解約に比べて更新の拒否は、契約が一旦終了して契約を更新するかどうかなので、中途解約よりはハードルが低いのでは、と思われるオーナーおられます。

しかし、借地借家法が適用されるので、更新も中途解約と同様に更新を拒否するには「正当な事由」が必要になります。

まとめ

サブリース契約を解除、更新拒否するには、「正当な事由」が必要になります。

正当な事由の内容としては、対象物件をオーナー自身が自宅として使わざるを得ない状況になった、家計や返済状況から売却せざるを得ない状況になった、倒壊のおそれがあり解体せざるを得ない状況になった等々で、それが正当な事由と認められればサブリース契約を解除、更新拒否することができます。

サブリース契約は、通常の賃貸借契約と異なり、サブリース会社自体が入居者になるわけではなく、転貸しを目的としています。

通常の賃貸借契約においてオーナー側からの解除や更新拒否は、入居者にとっては生活の基盤である住居を失うことになるので借地借家法で手厚く保護されていますが、相手がサブリース会社の場合、サブリース会社の目的は転貸しによる利益なので、その違いが「正当な事由」の判断に影響する場合があります。

オーナーがサブリース会社の利益を補填することで、解除が認められやすくなります。

売却するためにサブリース契約を解除しようとしたオーナーに関する裁判で、サブリース会社が得る利益が大きくなく解除しても経営に多大に影響するものではないとして、50万円の立退料で解除を認めた判例があります。

このように、サブリース会社にとっては「居住」が目的ではないので、立退料としてサブリースで得られる利益を提示することで解除や更新拒否が認められ可能性があります。

立退料をいくらにするかの明確な基準はありません。

上記の裁判では、サブリース会社が得る利益の約15か月分が立退料とされました。

契約内容によっては、立退料に加えて違約金が必要になるかもしれません。

サブリース契約の解除、更新拒否に関しては、得られる将来の利益と立退料として支払う額とを比較検討した上で決めていくことが大切です。