抵当権の抹消は、通常、権利者(所有者)と義務者(抵当権者)が共同で申請手続き行います。

抹消する際、申請の権利者と義務者が設定時のままであれば問題ありませんが、完済後、抵当権抹消手続きをせずに長期間放置していると、その間に抵当権者に相続や合併が生じていることがあります。

抵当権者の相続・合併と抹消

抵当権が抹消した日(完済した日等)と抵当権者に生じた事由(相続や合併)の発生日の前後で、抵当権を抹消する手続きに違いが生じます。

抵当権抹消事由が先に発生

完済して抵当権は実質的に消滅しているが、抹消手続きをしない間に抵当権者に相続や合併(合併して会社が消滅した)が生じ、設定時の抵当権者が存在しない場合があります。

抵当権自体は変更が生じる前に消滅事由が発生しているので、当該抵当権が承継した者に移転することはありません(新たな抵当権者にはならない)。

当該抵当権の抹消手続きは、不動産所有者と設定時の抵当権者を承継した者(相続人や合併存続会社)が共同で行います。

申請にあたって、承継したことを証する書面として戸籍謄本や会社の登記簿を提出することになります。

抵当権者の変更が先に発生

債権が完済される前に抵当権者が死亡、又は、合併により別会社に吸収されて消滅した等が生じ、その後に完済された場合があります。

この場合、抵当権者に変更が生じた時点で抵当権は相続人や合併で吸収した会社に移転したことになります。

つまり、当該抵当権を抹消するには、まず、抵当者の変更登記(相続登記または合併による移転登記)をして、その後に抹消登記をしなければいけません。

抵当権者が銀行等の金融機関の場合、合併等による再編が行われていることがあるので、抵当権設定時の金融機関は存在していない場合もあるので注意が必要です。

※吸収合併には、存続会社と消滅会社がありますが、移転登記が必要になるのは、抵当権者が消滅会社(会社が消滅する)になる吸収合併のケースです。

抵当権者が吸収合併相続会社だったり、商号を変更しただけの場合は変更登記は必要ありません。

例えば、設定時の抵当権者であるA銀行がB銀行を吸収合併し(B銀行が吸収合併消滅会社)、その後、行名をC銀行に変更している場合、A銀行がC銀行に商号変更しただけなので、抵当権抹消を前提とする変更登記は必要ありません(商号変更登記の省略が認められています)。