長期間放置された相続の問題点

令和4年の現時点では、相続登記に法律上の義務はないので長期間相続登記が放置されている不動産が多々あります。

令和6年4月から相続登記は法律上の義務(違反は10万円以下の過料)となるので、放置されている祖父や曾祖父名義の土地も義務の対象となり、いずれ相続登記をしなければいけなくなります。

相続登記を放置していた期間が長ければ、相続人の中には亡くなっている方がおられ(2次相続)、その場合は更にその方の相続人の調査・確定をしなければいけなくなります。
中にはその方も亡くなっていて3次相続が発生しているというようなこともあり、相続人の範囲が拡がり調査が一層難しくなります。

このように長期間放置されている相続登記には相続人の確定問題がありますが、他に手続き上の問題もあります。

現在、民法で各相続人の相続割合が規定されています。
法定相続割合が現在の割合になったのは昭和56年からで、それ以前は割合が異なります。

もっと前に遡ると、相続人を確定する上で家督制度が影響する場合もあります。
現在、家督制度は廃止されており江戸時代や明治時代のような昔の話しと思われる方もおられますが、実は、昭和の時代(昭和22年)まで続いていた制度です。

長期間放置されている相続の面倒で複雑なところは、一律に今の制度を使って手続きをするのではなく、亡くなった当時の制度を使って手続きをしなければいけないことです。
例えば、祖父名義の土地の相続登記をする時、祖父が家督制度が適用されていた時代に亡くなっていたら、祖父の相続は当時の家督制度に従って行われることになります。

相続手続き

かなり昔に亡くなった方の名義のままになっている不動産の相続手続きは、亡くなった日に適用されている相続制度に基づいて行います。

死亡日を基準に以下のように適用されます。

  • 昭和22年5月2日以前⇒家督制度
  • 昭和22年5月3日~昭和22年12月31日⇒応急措置
  • 昭和23年1月1日~昭和55年12月31日⇒民法の相続法
  • 昭和56年1月1日~⇒改正の現行法

家督制度

故人(被相続人)の死亡年月日が昭和22年5月2日以前であれば、家督制度に従って相続手続きをしなければいけません。

家督制度とは、相続において跡取りである家長(新戸主)が財産を総どりする制度です。
昔は家族というより「家」が重視されていたので、家を維持継続するために跡取りによる総どりとしていました。

家督制度における相続(家督相続)は戸主の死亡により発生しますが、死亡だけでなく「隠居」や「戸主の婚姻・養子縁組の取消による去家※1」「女戸主の入夫婚姻※2」「入夫の離婚※3」「戸主の国籍喪失※4」によっても生じます。

この制度は、終戦で帝国憲法が廃止されるまで続いていましたが、昭和22年5月3日に新憲法が施行されるのと同時に廃止されました。

※1.結婚や養子縁組によって戸主となった者が離婚、縁組解消で家を去る
※2.戸主となっている娘が婿をとり(入夫)、婿が戸主となり家督を相続する。
※3.戸主となった婿と離婚して婿が家を去る。
※4.戸主が日本国籍を失う。

家督制度での相続手続き

家督制度に従って新たに家長になった者は、戸籍に「戸主」として記載されます。

戸籍を見て故人の次に誰が戸主になったかを調べます。
例えば、Aが亡くなり新たにBが戸主になっていたら、AにはB以外に子供がいてもA名義の不動産はBが1人で相続していることになります。
Bが健在であればB名義に相続登記し、亡くなっていれば当該不動産はAからBへ、そしてBの相続人にへと相続されていることになるので、Bの相続人全員で遺産分割協議をして処置を決めます。

ただし、例外的に以下の財産については家督制度が適用されません。

  • 戸主でない者が取得した財産
    戸主には家督相続、戸主でない者には遺産相続が適用されます。
  • 隠居者が隠居後の生活等のために保有(留保)した財産や隠居した後に取得した財産
  • 入夫婚で女戸主が留保した財産、女戸主が婿に承継した後に取得した財産

上記のケースでの相続人は以下の順(旧民法を適用)で決定され遺産相続することになります。

  1. 直系卑属
    (男女の別、長幼の別、嫡出・非嫡出の別、実子・養子の別はなく同等。相続分は各自均等、ただし、非嫡出子は嫡出の2分の1)。
  2. 配偶者
  3. 直系尊属
  4. 戸主

※兄弟姉妹に相続権なし。
家督制度と異なり、相続人全員で遺産分割協議して自由に決めること可。

昭和22年5月3日~昭和22年12月31日の相続手続き

家督制度が廃止され新たに民法で相続法が制定されましたが、適用は昭和23年からだったので、家督制度廃止され民法が適用されるまでの間は応急措置としての以下のように規定されました。

相続人となる者は、配偶者、直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹。
各相続人の相続順位(配偶者は常に相続人)及び相続割合は以下のように規定され、これに従って相続手続きをすることになります。

第1順位
直系卑属
1/3(配偶者) : 2/3
第2順位
直系尊属
1/2(配偶者) : 1/2
第3順位
兄弟姉妹
2/3(配偶者) : 1/3

昭和23年1月1日~昭和55年12月31日の相続手続き

戦後新たに規定された民法における相続法に従って手続きを行います。
内容は以下の通りです。

第1順位
直系卑属
1/3(配偶者) : 2/3
第2順位
直系尊属
1/2(配偶者) : 1/2
第3順位
兄弟姉妹
2/3(配偶者) : 1/3

内容は昭和22年12月31日までの応急処置と同じですが、兄弟姉妹の扱いが異なっています。
応急措置では、兄弟姉妹に関しては本人のみが相続人となることができ、相続時に兄弟姉妹が既に亡くなっていたら兄弟姉妹の子供は相続人になれませんでした(代襲相続が認められない)。

しかし、昭和23年より、兄弟姉妹にも直系尊属・卑属と同様に代襲相続が認められるようになりました。

昭和56年1月1日~現在

改正された相続法に従って手続きを行います。
内容は以下の通りです。

第1順位
直系卑属
1/2(配偶者) : 1/2
第2順位
直系尊属
2/3(配偶者) : 1/3
第3順位
兄弟姉妹
3/4(配偶者) : 1/4

ご覧のように各相続人の相続割合が大きく変更されました。

以前は血縁者を優遇しているような割合でしたが、昭和56年より配偶者を重視する割合に変更されています。
また、兄弟姉妹における代襲相続人に関して、代襲相続人になれるのは兄弟姉妹の子までとする制限が設けられました。

このように、かなり昔に亡くなられている方が名義人のままになっている不動産の相続登記をする場合、手続きは簡単ではありません。
戸籍を調べて故人の死亡日から家督相続の適否を判断したり、故人からつらなる相続人全員を割り出して、その全員に連絡して話しをまとめるのは並大抵のことではありません。
終えるのに数ヶ月、数年かかることも珍しくありません。

令和6年から相続登記が法律で義務化されることを考えると、今から着手しておくことが大切です。
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