信託財産

自分の財産をどのように管理・処分していくか?
亡くなった後の処分であれば遺言書を、
認知症等になった場合の管理・処分は後見制度を利用することができます。

しかし、
遺言書では、亡くなった後に自分の財産をどう分けるかの指定ができますが、どのように使ってもらうか、次の世代(孫世代)に引き継がせるような指定はできません
後見制度では、自身に財産管理能力が無くなれば後見人が替わって管理してくれますが、管理方法、財産の使い方は後見人の判断に委ねることになります。
後見制度は被後見人のためだけの管理制度なので、夫が被後見人になった場合、後見人は夫のために財産を管理・処分することになり、妻や子のために財産を使うことが難しくなります。

家族信託は、上記の様な遺言書や後見制度ではできなかった事を可能する制度です。

自分の財産をどう使うか、家族の協力もあって築き上げた財産を最適な形で自分や家族のために使いたい方のために、司法書士が家族信託について分かりやすく解説します。

家族信託とは

家族信託には、以下の4つの要素が必要です。

1.信託財産
2.委託者
3.受託者
4.受益者

  1. 信託財産は、管理・運用・処分の対象となる財産です。現金、預貯金、不動産等が対象になります。
  2. 委託者は、信託財産の所有者です。
  3. 受託者は、信託財産を預かり、管理・運用・処分する人です。
  4. 受益者は、信託財産を管理・運用・処分したことにより利益を受ける人です。

加えて、
受託者がしっかり信託財産を管理しているかチェックする人として信託監督人を、受益者が未成年者だったり認知症等で判断能力に問題があるときは受益者代理人を置くこともできます。

家族信託する上での心得

家族信託の成否は、信託運用計画をしっかり練った信託契約書の作成につきます。
家族信託は、名前の通り関係者は家族であることが大半です。
親子だから、兄弟姉妹だから、親族だからと、なれあいをベースに運用計画を作成し信託契約書を作成すると、あとあと、失敗、大きなもめ事になるおそれが高くなります。

お金がからむ事ですので、家族、親族と言えどもしっかりとした信託契約書を公正証書で作成することが重要です。

家族信託で出来ること

・病気、認知症等で財産を管理できなくなった、
・老齢等で財産管理を任せたくなった、
・死亡した後に○○のために財産管理を任せたい、
場合に家族信託を利用します。

最大の特徴は、財産の管理・運用・処分方法を自分で自由に設計することができることです。
例えば、

  1. 夫婦2人暮らし、妻は病気がちでこの先心配:
    夫が亡くなったら息子を受託者、妻を受益者にして、信託財産を家の管理、妻の生活費用等の支払いに充てる設計をすることで、相続による財産散逸を防ぎ残った妻の生活費を確保できます。
    ※受益者を障害のある子や再婚相手にすることで同じように生活費を残すことができます。
  2. 結婚しているが子供がいない場合の夫の代々の土地の行方が心配:
    子供がいなければ大半は妻が相続します。妻が亡くなれば、その財産は妻の血縁者が相続することになります。
    土地を信託財産として妻の生存中は妻のために管理、亡くなった後は夫の血縁者が受け継ぐとすることができます。
    ※再婚問題解決にも有効です。先妻との間に子がいる場合、相続問題により子に再婚を反対されることがあります。家を相続財産にして、再婚相手が生前中は受益者として家に住む、亡くなった後は子が取得するとする家族信託ができます。
  3. 子供が相続財産として多額のお金を得ると散財しそうで心配:
    財を信託財産として信頼できる兄弟姉妹や親族に託し、定期的に子供へ渡すようにすることができます。
    ※お子さんが年少の場合も同じ様に家族信託を活用できます。期間も長くなるので受託者の信託行為を確認する信託監督人を置けば不正も置きにくいでしょう。
  4. 商売を息子に任せたいが、好き勝手にやられて口出しできなくなるのが心配:
    事業、商売に関する財産(株式等も含む)を信託財産にして、受託者を息子にして商売を任せる、受益者を自分にして暫くの間、息子の経営方法を極めることができます。

まとめ

家族信託は、明確の信託目的、それを達成する綿密な信託計画が必要です。
手続きには登記が必要なので司法書士が関与することが多いですが、注意すべきは税金面です。
計画の仕方によっては高額な贈与税が課せられてしまうことがあります。

当初より贈与税として処理する方法で計画されていれば問題ありませんが、相続税を想定していたの高率な贈与税が課せられしまうと大きな出費になってしまいます。
計画が税金についての配慮も重要になります。

家族信託は時間をかけて弁護士や司法書士等の専門家としっかり相談しながら行って下さい。