倒産

更なる拡大を目指して新たな分野に挑戦・進出する場合、当然、失敗するリスクもあります。
大きな資金が必要で金融機関からの借入する場合、個人として連帯保証人となることが求められるので失敗して返済できなくなると最悪自己破産という可能性もあります。
そうなると自身の生活だけでなく家族の生活にも大きく影響してしまいます。

このようなケースで影響を軽減する対策として民事信託の活用が考えられます。
財産を信託することによって個人財産から切り離し、信託財産として家族に残すことができます。
これを信託における「倒産隔離機能」といいます。
今回は、信託における倒産隔離機能について解説します。

家族信託

家族信託とは、特定の財産を信託財産として信託目的のために管理、運用、処分すること言います。
自身の財産を信託財産として供出する者を「委託者」、供出された信託財産を管理、運用する者を「受託者」、管理、運用で利益を受ける者を「受益者」と言います。
委託者が受益者のために自分の財産を受託者に託します。

信託財産が不動産であれば、信託を原因として受託者名義に変更登記します。
金銭、動産であれば、信託財産として明確に区分して管理、運用することになります。
このように個人の財産から切り離して「信託財産」として管理、運用されることになります。

倒産隔離機能

個人が自己破産した場合、自己の財産は債権者への返済に充てられます。
個人名義の不動産があれば競売にかけられ換金されて返済に回されます。
自己破産では最低限の財産(最大99万円)は保持できますが、以外の財産は全て返済に充てられることになります。

事業者がリスクを負って(多額の借入をして)新たな事業を始めようとするとき、万が一失敗して大きな借金を抱えたり自己破産するようなことになり、家族の生活や将来が心配で躊躇してしまうこともあります。
このようなときにリスク軽減として家族信託を活用することができます。

信託法23条に「信託財産責任負担債務に係る債権に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売又は国税滞納処分をすることができない。」と、信託財産が個人の債務についての差押え等の対象にならないと規定されています。

自身の財産を信託財産とすることで、個人の財産から切り離されるので、仮に自身が自己破産したとしても信託財産は換金処分の対象になりません。
これを信託における「倒産隔離機能」と言います。

信託当事者と倒産隔離機能の関係

信託には「委託者」「受託者」「受益者」の3者が当事者になります。
信託財産は元々は委託者の個人財産から分離されたものなので、「委託者」が自己破産した場合、信託財産は何ら影響を受けません(債権回収の対象にならない)。
また、受託者も信託財産を預かって管理運用しているだけなので、「受託者」が自己破産する場合も信託財産は影響を受けません。
※受託者が信託財産を管理運用する上で負った債務は、信託財産が回収の対象となります。

対して受益者は異なります。
受益者は信託財産から利益を受けている立場ですので、受益者が自己破産した場合は信託財産も債権回収の対象になります。
債権者には債権を放棄させたのに受益者は信託財産から利益を受け続けるのは不公平となるので、受益者が自己破産した場合は信託財産も差押え・換金の対象となります。

以上のように信託における倒産回避機能は「委託者」と「受託者」に作用し、「受益者」には作用しません。

注意ポイント

リスク回避には信託の倒産隔離機能は有効ですが、注意点があります。
状況によっては倒産隔離機能が認められないこともあり得ます。

自己破産することが予想できる状況で、個人財産を差押えられないように倒産隔離機能がある信託をすることは本来の目的と異なります。
債権者からの差押を逃れるために信託制度を悪用する行為であり、不当に債権者を害することになり「詐害信託」として取消しの対象となります。
このように委託者が債権者を害することを知りながら自己の財産を信託財産とした場合には、債権者は信託の取消しを裁判所に求めることができます。

民法における詐害行為取消権と同じように債権者を保護するための法律ですが、信託の方が詐害者にとって厳しい内容になっています。
民法の詐害行為取消しは、取引行為をした両者が債権者を害することを知っていることが要件となっていますが、詐害信託はこの要件は委託者のみで判断されます。
信託の場合、委託者が受託者に財産を信託しますが、受託者は債権者を害する行為であることを知っている必要はありません。
既に信託により受益者が利益を受領している場合は、受益者が信託により債権者を害することを知っていたときに限り取消しの効果は受領された利益にも及び債権者に返還されることになります。

既に多額の債権を持つ債権者がいる状態で自己の財産を新信託財産とするような行為は、差押えに備えての財産移転、財産隠しとして詐害信託を疑われやすくなります。
疑われないように大きな借入をする前に信託を行っておく方が良いでしょう。


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