未成年者への遺贈
子供ではなく孫に直接財産を渡したい、未成年の甥や姪に渡したい等々、いろいろな事情で未成年者に自身の財産を取得させたい場合があります。
誰に、何を所得させるか遺言書に書き記すことになりますが、渡す相手が未成年者(18未満)であれば注意すべき点があります。
遺言書と効果
渡す相手が未成年者であっても、遺言書に「〇〇を△△に遺贈する。」と書きます。
この点は、相手が成年の場合と変わりありません。
しかし、財産を遺贈された未成年者には財産管理権がありません。
未成年者の財産は親権者である親によって管理されることになるので、遺贈された財産も親が管理することになります。
管理する親が未成年者のためだけに遺贈された財産を支出すれば良いのですが、実質的には親が支出を決めるので未成年者のため以外にも使われるおそれがあります。
親権者に全てを任せるのであればそのままで良いですが、親権者の財産管理権を遺贈する財産に及ばせないようにするには、その旨を遺言書に記載しておく必要があります。
第三者による管理
民法830条に「無償で子に財産を与える第三者が、親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは、その財産は、父又は母の管理に属しないものとする」と規定されています。
条文の「無償で財産を与える」は、遺贈も含まれるとされています。
「第三者」とは、親以外の者になるので、祖父母が孫に、叔父叔母が甥姪に遺贈する場合も含まれます。
また、 親権者が2人いる場合で一方の親が未成年者の子に財産を取得させる際、もう一方の親でななく第三者に財産管理権を与えることもできます。
そこで、第三者に財産を管理させたい場合は、遺言書に以下のように指定します。
「遺言者は、〇〇の管理を甥Aの親権者B及びCにさせないこととし、その管理者として、次の者を指定する」とし、管理者の住所、職業、氏名、生年月日を記載します。
※民法830条には遺贈も対象となると説明しましたが、「相続させる」とする遺言も対象となるかは明確ではありません。
参考文献:遺言モデル文例と実務解説